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消えた内容を書き直しているので更新遅くなります。よろしくお願いします。
【選抜予選会】は学院の権威を保つためにも重要なものだった。選抜となった生徒は特級並みの待遇を受ける事が出来る代わりに、学院の代表として学院対抗や国対抗の魔術大会へ参加。他にも国の要請を受けて動くなど、学生を越えた存在として扱われる。
当然、内容や結果が振るわなければ選抜からは外される事にはなるが、一度手にした栄光は外れることはない。魔術を志す学生にとって選抜の肩書は夢の世界と言えた。
毎年選ばれる数は決まっておらず、優勝者の一名以外は、各予選を評価されて選ばれる。そのため、初戦で脱落したからと言って選考外になったわけではなかった。
とは言え、基本的には予選を上がっていく生徒の方が評価材料も多く、言われているだけという認識が広がっている。
次の予選へという気持ちよりも、勝ち方や負けたかのこだわりを強く持った方がいいのは確かだった。
選抜選考をするのは現選抜の生徒と一部の教員。
それは彼らは現在一名の生徒について激論を繰り広げていた。
「誰がなんと言おうと、あのバルトという生徒は選抜入りさせる。」
「私もその意見に賛成だ。あいつの力は絶大だ。見たろ?あの魔獣を一瞬で屠る光景を。」
「召喚魔法贔屓はやめてくれ。確かにあいつの召喚獣が強かったのは認める。けれど、つい最近まで魔力欠乏の状態だったらしいじゃねぇか?」
「あんなの召喚獣って言わないわ!穢らわしい魔力に穢らわしい存在。あぁ、思い出すだけでも悍ましい!」
「当然、僕も反対かな。強さは僕も認めるけどさ、彼にあの強さの手綱を握れてるとは思わないんだ。力ってのはコントロール出来てやっと自分のものになるわけなんだよ。」
「君たちは分かってない。彼はここにいる誰より強い。私はそう判断したんだ。まぁ、いい。どうせ優勝するのはバルトだ。さっさとG級から引き上げてやればいいのに、学院は規則に縛られて優秀な生徒の本質をまるで理解していない。」
彼らの議論は終わらない。選抜生徒達はバルトの実力を疑ってはいない。しかし、明らかな特異点である彼を学院の代表にすべきか。選抜生徒とは学院の力の証明であると同時に品位や権威を示す役割を担っている。それに相応しいか、予選会が終わるまで議論は続く事になりそうだった。
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学院中が選抜会の話題で盛り上がっている裏で、教員と学院は一つの危機を迎えていた。
「ちゃんと説明したのか!?」
「審議官に持ち込まれてしまったようで、」
「これから忙しくなるというのに、あの連中は、」
「どうします?選抜予選を延期するしか、」
「そんな事あってはならない!」
「しかし、それならどうすればいいか。」
「いっそのこと、視察の名目で呼んじゃうってのはどうですかね?」
「視察?」
「どうせいつもの事でしょ?国はウチを管理下に縛り付けたくて、何か問題が起こるたびに大事にして恩を売ってくる。審議会へあげられる前に国から視察を引っ張っちゃえば、審議の結果がどうあれ問題ありませんでしたって報告できるでしょう。」
「言うのは簡単だけど、誰が来るかで、」
「今ちょうど第二王女が帰ってきてるみたいですよ?嘆願書をあの馬鹿達じゃなくて王様に届ければ問題ないはず。」
「なるほど!その手があったか!」
副学長のケイビスはモヤが晴れたような表情で手を打った。
学院と国の関係はなかなか難しい問題が多かった。魔術師の教育、研究機関はその性質上自由を求める。新たな魔術、新たな技術、進歩を図る彼らにとって国からの縛りは邪魔でしかなかった。
けれど、国を蔑ろにするわけにもいかない。国有機関でもある魔法学院は、その資金の八割を国が負担している。金になる研究はごく一部で、研究費以外も優秀な生徒への囲い込みのために多くの支出をしている。
国と学院はお互いにいい距離感を求めている。今回の件に関しては国から責められる口実をなるべく減らそうと、本来ならば審議会後に行われる視察を事前にやってしまおうと言う作戦だった。
第二王女は魔術師の才能があり、成人まで帝国の魔術学校に留学してという。それだけでなく、彼女はねちっこくて狡い審議会の連中とは違って、公平に現場を見てくれる。彼女以上の適任はいなかった。
「それじゃあ、その内容で。私と学長は陛下に文をしたためるとして、選抜予選会の方はこれまで通り進めてくれ。これ以上問題が起きないように頼むな。」
副学長は指示を出すと、慌てた様子で部屋を出ていった。学院で上と下の圧に押されているのは彼なのだろう。
――――――――――――――――――――――――――――――
下宿先でバルトは自分の力について考えていた。不完全だなと自分自身でも感じている。圧倒的なものでありながら、わからない事だらけ。自分の体が自分じゃないみたいな気持ち悪さがある。ただ、その違和感を取り除く方法は持ち合わせていない。
バルトにとってこの学院はあくまで踏み台でしかなかった。かといって魔術師として大成したいみたいな夢も持っていなかった。
物語に出てくるような英雄達は夢のまた夢。
特別が一つもない街に生まれたバルトは身の丈にあった夢を持つように生きてきた。
学院に来れたのも奇跡が重なった結果であり、特待という言葉も未だに耳馴染まない。同い年のウルルの高潔さと誇りを肌で感じ、自身の在り方はなんとなく見えてきた。
しかし、自分はこの学院を退学になりたくないとか、家族を楽にするために安定した稼ぎが欲しいみたいな、何かを失わないためばかりを考えて一歩を踏み出せずにいる。
きっと自分はこの学院では異質なんだと、二度目の自覚をする事になった。
ボンボロに言われた言葉、そしてレタに言われた「下を向くな」という言葉。
バルトは自分の立っている位置をこうやって確かめるのは初めての事だった。それと同時に自分の持っている圧倒的で不可解な力をどう扱っていけばいいのか、これまで指針がないまま航路を走っていたという事に気づいてしまった。
「上だけ見てて、か、」
レタの言葉が不思議と頭から離れない。半年間近く向けられた嘲笑と罵声。そもそも学院の者達は別の世界の人間だと考えていたから、真に受け止めずなんとなく流せていた。
けれど、ここ最近、特Sや落第生としてではなく、“ライオッド・バルト”として目を見てくれる者が出来た。
それはこの力が理由なのだろうが、それは摂理だと知っていた。小さい頃から知っている、強者の魅力と弱者への仕打ち。
バルトは失いたくない自信の大切のためにも強くあり続けなければならなかった。
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