プロローグ
今週は毎日投稿します。
今日は2話同時です。
よろしくお願いします。
今考えると入学当初は、出来すぎていたなとライオッド・バルトは暗くて冷たい食堂の端っこで自嘲的に笑う。
召喚魔法適正、特S級として特待優遇で入学した王都魔法学院。十年前から始まった平民特待制度は、国内外問わず、著しく魔法の才能を持つ者を対象に特SからC級とし、等級に応じた待遇で迎え入れられることになっていた。
王都魔法学院は大陸でも有数の魔法学校で、卒業生には『七賢』や『天帝』など多くの実力者を輩出している。そのため、国内に存在するいくつかの魔法学校の中でも特にエリート気質で、教育方針も相まって競争意識が強く選民的な生徒が多かった。
そんな環境だからこそ、ライオッド・バルトは溜息を吐く。
剣と魔法はいつの時代も互いに研鑽し合う仲だった。剣が新たな境地へ進めば、負けじと魔法もその一歩先を目指して進む。その結果、現代では五種と呼ばれる魔法の区分が設けられ、それをもとに自分の魔法を構築していく事が主流となっていた。
魔法の花形〈攻撃魔法〉 様々な属性を使い、気高く立ち向かう戦士の誉れ。
戦場の要〈守護魔法〉 痛みや傷を厭わず、最後の一人になっても折れない真の刃。
勝利の立役者〈支援魔法〉 卓越した技術と繊細な判断は風向きを変える。
一騎当千〈召喚魔法〉 無限の可能性を持ち、単騎でも盤面をひっくり返す猛者。
聖寵〈治癒魔法〉 生物の根源であり、現代魔法の叡智の結晶。
この五種類の魔法の適性によって、王都魔法学院の入学が決まりそれぞれ基準でクラス分けから、待遇面が決まる。この適正というのは潜在的な魔力量、五種魔法の才能、成長限界等から判断されるため、適性が高いからといって最強になれるわけでもないという事は入学時に学長が説明していた。
しかし、当時の俺はそんな話を聞くことはなく、田舎町から王都に来れた興奮、始めてみる同年代の貴族、そしてそのほとんどから向けられる、羨望、尊敬、嫉妬、に感じたことのない全能感を覚えていた。
だがしかし、今こうして一人寂しく学食を食べているのは、孤高の戦士を気取っているとか、周りが恐れ多くて近寄ってこないみたいな特Sらしい理由じゃなかった。
〈召喚魔法〉にはいくつかルールがある。召喚する種族、召喚したものと結ぶ契約の種類、そして召喚できる数。
強い召喚獣を呼ぶには、潜在的な才能、莫大な魔力量が必要になり、一番才能差が生じる部分。次に召喚数と召喚できる種族。これらも潜在的に決まっており、後天的に得られる〈召喚魔法〉の才能はごくわずかな部分だった。
そのため、〈召喚魔法〉は適性がすべてといわれるほど才能がそのまま色濃く出る分野だった。
ではなぜ俺がこんな状況になっているのか。それは召喚枠が三つしかないという決定的な弱点があった事。それに加えて、共鳴契約のみしか結べなかった事の二点から、完全に落ちこぼれのレッテルが張られてしまった。
攻撃魔法の主として戦うものでさえ、召喚枠は三十を超えているだろう。それほどまでに召喚枠“三”というのは致命的だった。そしてその絶望に拍車をかけているのが共鳴契約のみという縛り。
隷属、使役、共鳴の三つに分けられる召喚対象との契約。
隷属は、意思を持たせない事で召喚コストを下げるが、その代わり本来の半分ほどの力しか出せず
使役は、最終的な支配権は持っているものの自由意思を持たせる契約で、殆どがこの契約で召喚されている。
共鳴は、完全な対等の契約であり、片方が死ぬともう片方もそれに準じた損傷を負う。最悪死ぬことすらあるが、召喚対象の力を契約者自身も使用できる。
量より質だという者も中にはいるが、その土台に建てるものではない。鈍らな剣を百本と、高純度で硬度の高い砂鉄を比べているような話で落ちこぼれとなった俺は、英雄として送られた村に帰るわけにもいかず、学院も今年度までは特待を解除するわけにもいかず、まるで見せしめのように光る胸の特Sの称号が、嘲笑の的になっていた。
憂鬱だ、バルトはいつも以上に気に病んだ様子でため息を漏らす。明日から中期が始まる。座学と基礎の多かった前期。勉強であれば死に物狂いでやればどうにかなる。特待打ち切りの理由を作らせないために必死で食らいついたのだが、中期からは実践が増えてくる。特待が打ち切られるという事は学費、寮費、日々の支援費、を自ら算出しなければいけなくなる。どれか一つならまだしも全てが圧し掛かることは学院の退学を意味していた。
この力で家族を楽にしてあげたい。憧れの冒険譚に出てくる英雄になりたい。バルトの求めるものをすべて手に入れるためにはこの学院を去るという選択肢は存在していなかった。
どうやって乗り切ろうか。休みの期間、帰省する寮生も多い中バルトは孤独に勉学を励んでいた。何か活路が見出せるかもしれない。そしてその答えを中期が始まる前日に見つけた。
活路はない。今持つ全てを駆使しても来年にはこの学院に自分は姿はないだろう。
その事をわかっていたかのように、普段バルトを馬鹿にしてくるエシル達は寮で俺を見つけても嘲りは向けてくるものの、それ以上関与してこようとはしなかった。
バルトは慣れたはずの疎外が、誰からも見向きもされなくなるという孤独のせいでより一層一人が際立ったように感じた。
自分は強くあるしかない。ただそんな気持ちだけが心の頼りだった。
バルトの状況をわかりやすく説明すると、ポケ◯ンで一匹しか使えないみたいな感じです。レベリングという概念はないので、レベル差ゴリ押しなんかも出来ません。




