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3-2-7

「あー…良いです良いです。実験に参加出来たら良いかな、くらいの発想だったので。そこまで嫌がられるとは思っていなかったので。私がやるので良いですよー」


ため息混じりにそう告げ──よいしょ、と一歩踏み出す──と。


「あだだだだっ!?」


それはもう、肩の骨が砕けるのでは、というほどに強い力で私は斜め後ろから、土方さんに肩を掴まれた。


──目が……怖い!


そして、凶悪な目つきで睨まれることたっぷり三秒。人の肩に阿呆のような力で指を食い込ませながら、土方さんが地を這うような声を上げた。


「俺が……やる……ッ」


「え。本当ですかー?」


──何だ、本当はやってみたかったのか?


もう少し押してあげるべきだったか、などと考え──


「ではでは、どうぞどうぞ」

と、火が消えるのを待つために、池の縁に屈み込む。


──燃え上がって、五分ほどか。水の嵩は、水質はどうなっているのか。


これは是非とも確かめねば。そう思っていたのだが──。


「副局長が憤死する前に部屋に帰ろうな。狂科学者──」


私は藤堂さんに後ろ襟を引かれ、自室へと戻らされてしまった。




しばらくすると、屋外から今まで聞いたこともないような、沖田さんの大きな笑声が聞こえてきた。


次いで、土方さんの怒号も。


──何か、楽しそうだな。


藤堂さんの制止を無理矢理振り切って外を覗く──と、池の火はしっかりと消えており──


「沖田ァァ! てめえは今月減給だ──!!」


どこからかやって来た沖田さんへと、土方さんは減給を言い渡していた。


鬼など生易しい。今なら眼光だけで人を殺せるかもしれない。そんな土方さんの前で、未だに腹を抱えていた沖田さんは、


「ゴメンゴメンって! でも……っあははは! 土方さんが池で用を足してるトコロが見れるなんてね──」

と、このままでは笑い死にするのではというほどには、笑う笑う。笑い転げる。


「これしか消火方法がねえんだ! 笑うんじゃねえ!」


尚も牙を剥く土方さんに私は──


──実は砂をたくさん掛けても消えました。

とは、今更言えず。


「池だから尿を選んだんだけど……」


この真実は黙ったままローマまで持って帰ろう。そう決めた──。




その後、再び自室に戻った私はサイトウくんに話し掛けながら、恋茄子をゴリゴリとすり潰したり、箪笥にしまい込んでいた梅の種やら枇杷の種やらを潰したりする。


「この前試したのがこの配分だったから……と……」


配合の分量を変えていると、未だ、頑として部屋から出ていこうとしない山崎さんが、それはもう穴が空くのでは、というほどに手元を見つめてくる。


──興味津々すぎやしませんかねえ。


そんなことを思いつつ、私は完成した粉を薬包紙に落とし込んだ。


「サイトウくんサイトウくん。薬効、試したらご飯にしましょうか。蟇蛙(ひきがえる)も鼠も、あちこちに五万といますからね〜」


──蛇とはいえ、部屋に生き物がいるのは悪くないな。


呑気にサイトウくんへと話し掛けていると、山崎さんの手が薬包紙へとそっと伸びてくる。


「一応お聞きしますが……何をされているのですかね山崎さん?」


「そこに僕の知り得ない医学があるのなら……是非その薬を僕にも試させてほしいわけだ」


薬に手を伸ばす、医学馬鹿の山崎さんの息は、興奮しているのだろう。やたらと荒い。


「これはまだ開発途中。つまり、ただの毒の塊ですが?」


薬包紙に伸びる手を叩き落とすも、不撓不屈の手は再び持ち上がってくる。


「大丈夫だ。僕もあんたと一緒さ。度重なる服薬のお陰で、毒も薬も中々効かない、難儀な身体を持ってしまったからな──」


勝手に一緒にしてくれるな。私はあくまでも──


「主の一番近くで働くよう幼少期から仕込まれた奴隷だったから、主の毒殺を防ぐためにこんな身体にならざるを得なかったんです。誰が好きで毒なんて試しますか」


立場上、仕方がなかっただけだ。


私が治療を受ける度に、山崎さんが「薬が効かない」と愚痴を零していたが、そういう理由なので許して欲しいところである。


「まあ側仕えでなかったとしても、奴隷は服毒実験の実験台ですからね。……クレオパトラ七世、ご存知ですか? かの女王が最期を楽に迎えるために、どれだけの奴隷が、苦しまずに死ぬことのできる毒蛇を見つけるための実験台として、犠牲になったことか──」


奴隷とは、そういうものなのだ。


命は軽く、殺されることへの拒否権もない。


「もしかして、その女王が結局、最期に選んだ毒蛇とは──」「──はい正解です。サイトウくんと同じ、アスプコブラでよ」


山崎さんが言おうとしていることを先回りし、正解判定を出しておく。


「やはりな! では安芸副組長、正解した褒美に、僕にその薬を試させてくれ!」


──コレ、試すまで絶対引かないんだろうな……。


私は深いため息を吐き出し──彼を止めることを諦めた。


「……絶対に、一舐めだけですよ? 分かっているとは思いますが、症状、時期、それから──」


「──分かっている! 臨床経過ほど大切なものはない、だろう。当然のことを一々聞くな。さあ、試すぞ!」


面白い、続きが気になる!


と思ったら星5つ、


つまらない……。


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