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ずっと一緒に。異世界ライフ  作者: 江野喜けんと
第2章 裏世界をもう一度
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【皇帝】追従に焦がれた支配者⑥


 美奈view


 アタシの前に広がる光景は絶望的だった。倒れ伏す直と麗子さん。そして奥には虎徹さんらしき遺体。そして聖王は傷こそ負っているものの、十分戦闘可能な様子。優子さんはさっき止血を受けた状態で船に横たわっていた…つまり。


 「アタシが…やるしかない…!」


 戦闘用のマイクを手に持つ。


 「お前とも久方ぶりだな…鳴海美奈…。小此木直は時浦学園の時とは目付きがまるで違ったが…。」


 そう言って聖王は冷たい眼光を突き刺す。


 「お前は特に変わっていないな。」


 「成長してねぇってか。ふざけやがって。」


 「違う。元々お前は覚悟の決まった目をしていたというだけだ。その歳で大したものだ…愚弟に爪の垢を煎じて飲ませたいな。」


 「そーかよ。お褒めに預かったついでに教えちゃくんねーか。直はさっき明後日の方を向いてアタシの名前を叫んでたぞ。アタシには何も起こっちゃいない。一体何したんだ。」


 アタシが言うと聖王は返答がわりに槍を投擲。アタシはそれを避けるので精一杯だ。


 「自分で突き止めてみろ。生き残れればの話だがな。」


 甲冑騎士たちの群れがアタシに向かってくる。多分直たちをやっつけたのはもっと激しい攻撃のはず。舐めてやがる。


 


 「すぅ〜……………わああああああああぁぁぁぁぁっ!!!!」


 アタシは戦闘用マイクで雄叫びを上げる。音の衝撃波が甲冑騎士たちを吹き飛ばす。こっちだってできることはあるんだ。


 「これならどうか。」


 甲冑騎士たちが盾を構えて一列に並ぶ。衝撃波じゃ吹き飛ばせそうにない。


 「可変重力の助旋律っ!…………わあああああぁぁぁぁぁっ!!!」


 アタシの声を浴びた甲冑騎士たちに超重力が襲いかかる。崩れた防壁の奥から聖王が飛び出してきた。


 「接近戦のスキルも見ようか。」


 速すぎて全く見えねぇ。でもこっちの武器はデカい、適当に振っても一撃くらい防げるはずっ!


 「頼むっ、アタシの山勘んんんん!!」


 ゴウウゥゥゥン!! と腹の底まで響くような重低音と共に聖王が後退する。


 「音楽家のお前がそんなものを武器にするとは。」


 「こう言っちゃなんだが、歌手としての楽器はアタシの体自身だ。他のは別に…それにお前をぶっ倒そうってんだ。これくらいやるだろ。」


 アタシが手に持つのは巨大なヴァイオリン。その形状は武器として使用するために斧のように物々しい。


 「くたばりやがれえぇぇぇぇっ!!」


 アタシは弓も使わず乱暴にヴァイオリンの弦を掻き鳴らす。


 「音が持つ破壊力を自在に操るか。だが一芸を持ったところで実力差は如何ともし難い。」


 聖王が衝撃波を掻い潜り、豪速の槍をアタシに突き出してくる。


 「舐めんなぁぁぁぁ!!」


 アタシはヴァイオリンを振り回して聖王の槍を迎え撃つ。


 「…なるほど、絶対音感か。私の筋肉の動きを音で聞き先読み。この雑音だらけの中から正確に聞き分けるとは…天に愛されている。」


 たった数秒でこっちのカラクリを見抜く聖王。


 クソが、マジで強え……これで9位? あと8人も上にいる? 冗談きついぜ…。


 「ごちゃごちゃ余裕混じりに批評しやがってぇっ!! 一発くらいくらっとけよぉぉっ!!」


 アタシが弦を鳴らすと同時に渾身の雄叫びを上げる。


 「ふむ。力押しか。だがお前にそれは無理がある。」


 聖王の持つ槍が光る。そして全力のスイング。


 「おいマジかよ…。」


 そして音の二重奏を正面から破壊した。分かってたことだけどこいつ、アタシを殺そうと思えばいつでもできたのか…。遊びやがって…ほんと…


 「頭に来るぜえぇっ!! ホームランで吹き飛びやがれえぇ!! 魔球・大波紋助旋律(インパクトオブリガード)・三重奏!!」


 アタシはボールに渾身のキャドーを込めてヴァイオリンをバットがわりにフルスイング。今度はあの時の3倍だぞっ、砕けろよぉ!!


 「以前私を吹き飛ばした技か。つまりお前の底は見えた。終わらせようか。」


 聖王はその場から動かずに槍を構える。





 「槍輪(そうりん)燕飛旋(つばめひせん)突き。」


 聖王の突きは一発に見えた。だけどアタシが放ったボールは三発とも返ってきやがった。



 「ぅ………。」

 

 アタシはその音だけを聞き、反射的にヴァイオリンを体の前に置いた。


 死ぬ……そんな気がしたから。


 次の瞬間、視界が天地ひっくり返り、体を打ち付ける衝撃と痛みが脳天を突き抜けた。そこで初めて、アタシは吹き飛ばされて地面を激しく転がったんだと気付いた。


 「が………………ぅ…………ぁ……。」



 頭に生温かい感触、多分血が出ている。ここでさらに底を見せるのかよ…。


 だけど致命は避けたらしく、なんとか立ち上がることができた。聖王は悠然と此方に歩いてくる。


 だめだ、あと一発でも受ければ死ぬ。なんでもいい、やつをお話モードに入らせないとっ!


 「へ……へへ、不壊聖王さんは十分な戦果を得たじゃねぇか…。麗子さんたちを不意打ちで仕留めて、アタシみたいなガキを真正面から撃破…さすがエデンの幹部様だ…がふっ!?」


 槍の柄で殴り飛ばされた。マジで痛すぎるけど、命を奪うものじゃない、挑発が上手くいった。


 「挑発が上手くいったと思っているのだろう。お前も恐怖に溺れて死ぬがいい。」


 その時、聖王の背後に何かが現れる。あれは直…? しかも明らかに事切れている。


 聖王との戦いに巻き込んだ? 一瞬心臓がバクつきそうになるがすぐに沈める。直がくたばるなんてあるわけがない。いつの間にか聖王が間合いを侵略していた。動きは単調、ギリ間に合うっ!


 アタシは壊れかけのヴァイオリンで聖王の槍をいなした。


 「お前、私のキャドーが効かんのか。本当に稀有な存在だ。」


 「キャドー? さっきの幻覚のことか。お前の裏表示キャドーはこの島に立ち込める霧じゃないのか。」


 なんかよく分からんが聖王がアタシに興味を持った。時間を稼ぐ…。多分、あと少しなんだ。


 「私と弟は二人で『皇帝』のカードに選ばれた。だが裏表示機能は異なる。弟は幸福、私は恐怖の夢を見せることで相手を支配する。私たちの、支配に対する思想の違いだ。」


 「恐怖ね……アタシの主観だけど…恐怖というより絶望の幻覚に見えたぞ。絶望は支配に向かない…弟の方はともかく…お前、支配者向いてないんじゃねぇの?」


 「………黙れ。」


 聖王が途端に強い怒気を纏った。


 「私は支配者になることを運命付けられた身なのだ。それ以外の道などあるはずがない。お前は被支配者でありながら珍しい精神性だからと観察をしていたが…止めだ。これ以上は不快が募るばかり…もう終わらせる。」


 次の瞬間、聖王は視界から消えていた。


 あ、これはだめだ…。


 「結局、私より力のある者などいない。等しく私の前に倒れ行く。」


 アタシの腹が完膚なきまでに聖王に貫かれていた。こりゃ……死ぬやつだ……でも、聞こえる。





 「っ、ちっ。」


 木々の奥から蛇腹のようにうねるツルが飛び出して聖王を吹き飛ばした。


 「やっと見つけたわよ。って、美奈!」


 迷だ。間に合ってよか………た………。



          ◇ ◇ ◇


 意識を失い、急速に冷たくなっていく美奈に迷は無理矢理果実の汁を飲ませた。


 「果実はこれしかない…もう回復できないわね。」


 そして聖王が戻ってくる。


 「黒金迷か。次から次へと…もはや手加減なしだ。お前が最後の一人、確実に仕留める。」


 「誰が最後の一人ですって…?」


 その時、眼から血を流すズタボロの麗子が現れる。


 「まだ生きていたのか。往生際の悪い女だ。」


 「あなたの攻撃如きでこの神崎麗子はとれないわ。ここで綺麗に死んでもらうまでは許さない。」


 麗子は迷の横に立つ。


 「その傷で戦えるの? 生憎回復はできないわよ。足を引っ張らないように頼むわ。」


 「必要ありません。あなたこそ、下手に視界に入らないように。細切れになってしまいますから。」


 迷と麗子、この島にいる特記戦力が聖王とぶつかる。この戦いが直たちの命運を分ける。

 


 

「審判」 夕霧彼方vs佐藤明梨

「世界」 山田吹雪    

「教皇」 邪馬脳 

「力」  軍尾夏豪

?     ?

「月」  上島御奈帆

「運命の輪」蛭子鉄丸     

「節制」 神威マニア

「皇帝」 不壊聖王vs黒金迷&神崎麗子

「隠者」 羽田素子 death

「太陽」 稲取楓  death

「戦車」 剛火拳乱 death

「死」  那由多一美death

「塔」  谷岡浩二 death

「愚者」 影木幽  death

「魔術師」上代芳司 death

「吊し人」玉城清  death   

「女教皇」山田深雪

「正義」 騎千勇士 death

「星」  屋島祈

「悪魔」  ?

「恋人」 空席   vanish


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