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第8章 冬フェス ヴァーチャルリンク開催

日本都市エリア――カフェエリア。


協定会議が終わり、迅達は日本都市に帰還していた。


テーブルを囲み、協定会議の内容を整理していく。


だが、その空気を破るように、今まで黙っていた紗良が勢いよく立ち上がった。


「ずっと思ってたけどさ……何、あんなヤバい奴らに喧嘩売っちゃってんのよ、バカ!」


紗良はそのまま迅に詰め寄った。


次の瞬間――


「ぷははっ」


美咲が堪えきれず、噴き出す。


「ちょっと!?

 美咲、なんで笑ってんのよ!」


紗良はむくれ顔で振り返る。


「だってさぁ。紗良、会議中ずーっと黙ってたじゃん?

 それが急に元気になるから、可笑しくって……くふふっ」


「あんな連中の前で平気でいられるわけないでしょ!

 おかしいのは、あんたたちの方よ!」


紗良はキリキリと歯ぎしりする。


「……紗良。悪かった」


迅はぽつりと呟いた。


迅は会議の光景を思い返すように、視線を空へ向ける。


どこか上の空な様子だった。


「……はぁ。

 どうしちゃったのよ、迅」


紗良は呆れたようにため息をつき、椅子に座り直す。


迅の脳裏には、沈・夜哭が倒れていた光景と、

白澤の冷たい笑みが焼き付いていた。


(身内同士で、あそこまで敵対し合うなんて……

 やっぱり、あいつらおかしいだろ)


心の中で、そう呟く。


一方、美咲は笑いすぎて目尻に溜まった涙を拭っていた。


「迅さぁ。

 どうせ“一方的すぎて除名された人たち可哀想”とか思ってるんでしょ?」


迅は思わず、美咲を見つめる。


「でもね、私が同じ立場だったら……

 ああするしかないと思うよ」


「どういう事だ?」


「考えてみなよ。

 もう718人も、違法薬物を使ってたんだよ?」


美咲は指を立てながら続ける。


「あのまま何もしなかったら、使用者は増える一方だし。

 そのうちギルドごと、薬を売ってた連中に乗っ取られてたかもしれない」


少し言葉を選びながら、美咲は顎に指を当てる。


「……ほら。

 足先から回った毒が、気づいたら全身に回ってる、みたいに」


「怖いこと言わないでよ……!」


紗良は顔をしかめた。


「ごめんごめん」


美咲は困ったように笑い、軽く頭を下げる。


「――それよりさ!」


ぱっと空気を切り替え、美咲が目を輝かせる。


「昨日、すっごい発見しちゃってさ!

 迅、今すぐ明鏡止水出して!」


ぴょんぴょん跳ねながら催促する。


「……明鏡止水?」


迅は首を傾げた。


「忘れちゃったの?

 紫炎の英雄具だよー!」


「ああ……」


迅は思い出したように頷く。


「そういえば、そんな武器あったな。

 使い道なくて、すっかり忘れてた」


言われるまま、迅はストレージを開き、英雄具を取り出した。


「九尾の晩餐が、あんな必死に集めてた理由――

 分かっちゃった♪」


美咲は自信満々に笑い、次々とデータを展開し始める。


「英雄具のデータ、ずっと解析してたんだけどさ……

 時間かかったけどついに見つけちゃったんだよね〜ほらこれ!!」


美咲は展開したデータを指差す。


複雑な数式とグラフが並ぶ画面に、迅と紗良は揃って首を傾げた。


「……悪い。

 俺たちにも分かるように解説頼む」


「そう言うと思ってました!」


美咲は嬉しそうに頷く。


「英雄具って、武器としての容量以上に、

 とんでもない量のデータが圧縮されて保管されてるの」


「最初はね、

 この世界の秘密でも隠してあるのかと思ったんだけど……」


一拍置いて、美咲は首を振る。


「全然違うものが入ってたんだ〜」


そう言って、美咲はストレージから一体の人形を取り出した。

そして迷いなく、英雄具と人形を回線で接続する。

その動作は葵時雨が白澤を呼び出したときと全く同じ光景。


「英雄具はね、

 発声とか身振りができないだけで――」


「ずっと仮想世界を観測して、

 データを集め続けてたみたい」


その瞬間。


人形が、ピクリと動いた。


「……ふざけるな」


「……は?」


思わず声が漏れたのは、迅だった。


「私を、ずっと倉庫に放り込んでおきおって……この馬鹿者が!」


次の瞬間。


人形の拳が唸りを上げ、

紫電の頬に渾身の右ストレートが叩き込まれる。


「ぐはっ!?」


あまりの衝撃に、迅の思考が一瞬、真っ白になる。


(いや、ここ非戦闘エリアだろ!?

 それに、人形に戦闘能力なんて……)


(……というか)


(こいつ、一体なんなんだ!?)


人形は何事もなかったように腕を組み、

カフェテーブルの上に堂々と鎮座した。


「あなたが明鏡止水ね!」


美咲の問いかけに、人形はゆっくりと頷く。


「いかにも」


静かで、やけに威厳のある声。


「英雄具の一振りが一つ。

 ――明鏡止水とは、我のことだ」


「……どうなってるんだ。一体……」


迅は、心底困惑したまま呟いた。


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