第7章 6 協定会議
迅と幹部たちの視線が、正面からぶつかる。
その緊張を破るように、声が上がった。
「ちょっと待て……!」
アーサーが一歩前に出て、李・酒龍を指差す。
「お前の相手は、こちらだろう!」
李・酒龍は口元に笑みを浮かべる。
「悪ぃな」
「雑魚には興味がねぇ」
「言わせておけば…!
だいたい大勢で一人と対するなど
お前達こそ臆病ではないか…!」
アーサーの一言に李・酒龍は口角を上げる。
「私も、貴様らのやり方は気に入らん」
ローゼが、凛とした声で言い切る。
「南の風は、紫の境界につくぞ!」
その宣言に、隣のワトソンは思わず眉をひそめた。
「ローゼに俺も賛成だ、対ギルド戦なら俺等に勝てると思うなよ狐」
ミハイルが、不敵な笑みを浮かべる。
「全く……協定の話を出したばかりなのに」
真羅は、呆れを隠そうともせず息を吐いた。
「いいじゃないか。
これはこれで面白いー。」
白澤が静かに口を開く。
――協定会議は、こうして幕を下ろした。
だが同時に、
新たな戦いの火種が、確かに撒かれていく。
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会議終了後、上海都市 街外れの一角。
沈・夜哭は途方に暮れながら歩いていた。
胴体の鎖帷子に穴が空いており、今起きていることが夢ではない事を知らせる。
「こんにちは…」
横切った路地から声が聴こえてきた。
沈・夜哭は立ち止まる。
そこには黒い羊の顔をした獣人が立っていた。
沈・夜哭はノータイムでナイフを突き立てる。
しかし、非戦闘エリアに設定されている都市エリアでは攻撃が当たらない。
「誰だが知らないが、失せろ…!」
「随分苛立っているな…とても興味深い反応だ」
沈・夜哭は手を止める。
言い回しといい、聞き覚えのある声。
「お前は…!」
「取引はメールのみだったから顔を合わせるのは初めてかな…
君達に薬を提供したのは私だ。
そうだな…モールとでも呼んでくれ」
「…あぁしかし、哀しいね。
組織に準じた君たちに白澤は残酷な仕打ちをー。」
わざとらしく、舞台俳優のように身ぶり手ぶりで哀しみを表現する。
沈・夜哭は無言でナイフを構える。
しかし、物怖じせず話す黒い羊の男。
「ついてきなさい。
君たちには更なる新しい力を授けよう…」
モールは邪悪な笑みをしていた。
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路地の奥には、地下へと続く階段があった。
モールは一度も振り返ることなく、そのまま階段を下っていく。
「……気に入らなければ、殺すまでだ」
沈・夜哭はそう呟き、導かれるままに後を追った。
階段は暗く、どこまで続いているのか分からないほど深い。
湿った壁には黒いカビがこびりつき、息をするたびに澱んだ空気が肺に溜まるような感覚。
とても、居心地が良いとは言えない場所だった。
やがて最深部に辿り着く。
微かな光が、闇の中に差し込む。
その先には――饕餮を含む、ギルドから追放された者たちが集められていた。
沈・夜哭は、彼らを一瞥する。
いつの間にか黒い羊は消えていた。
……奴はどこに?
代わりに、沈・夜哭の視界に通知が浮かび上がった。
差出人は――モール。
『君達に素晴らしい力を用意した』
『その力を皆に分け与え、白澤への復讐を果たしたまえ』
『――血に塗れし者』
そのメールと共に赤い薬が添付されていた。
饕餮が、沈・夜哭の傍へ歩み寄る。
「おい……お前も黒い羊に?」
沈・夜哭はしばし考え、短く答えた。
「……あぁ。
ここまで、奴を追ってきた」
「急にギルドを除名されて、近づいただけで警告表示だ。…わけが分からねぇ」
饕餮は吐き捨てるように言う。
苛立ちを抑えきれず、拳を握り締める。
「教えてやる…あの場で起きたすべてを…!」
沈・夜哭は、胸の内を抉るように呟いた。
脳裏に浮かぶのは、あの穏やかな笑み。
そして、何の躊躇もなく下された“裁き”。
沈・夜哭の内側で、黒い焔が滾り始める。
「必ず……報いを受けさせてやる」
地下に、黒い焔が灯った。
それは地上からは決して見えない。
だが、確実に――静かに、伝播していく。
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