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第7章 4 協定会議

無言のまま、兎鳴は白澤の前に進み出て傅く。


差し出されたのは、一つのデータ。


白澤はそれを受け取り、

何の躊躇もなく――参加者全員に共有した。


展開されたウインドウに、

膨大な名前の列が映し出される。


九尾の晩餐、ギルドメンバー。

その数718名。


「……まさか……白澤様……!」


孔岳は、思わず席を立ち上がった。

その顔色は先ほどとはまるで違う。


白澤は、変わらず笑っていた。


しかしそれは、

喜びでも嘲りでもない。


まるで能面を貼り付けたような、

感情の温度を持たない、不気味な笑みだった。


――迅は、この瞬間に気づく。


最初から、

白澤は“笑ってなどいなかったのだ”。


白澤は淡々と告げる。


「このデータは、

 違法薬物使用者のリストです」


「兎鳴を筆頭とする匿名隊に、

 極秘で調査させていました」


「おいおいおい……!」


ミハイルが思わず声を上げる。


「幹部の名前まで入ってるじゃねぇか!!」


ウインドウを凝視し、言葉を失う。


リストの中には、

序列4位 饕餮、そして――序列6位 沈・夜哭の名もあった。


「白澤様!!」


孔岳は半ば叫ぶように訴える。


「昨日の決定を……!

 今すぐ取り下げてください!!」


必死の形相だった。


だが、白澤は静かに首を振る。


「既に決定したこと」


「それを覆すことは――

 例え私であっても、許されないだろ?」


白澤の視線が、孔岳を射抜く。


その眼差しは、

怨嗟の地獄の釜を開いたような色。


黒く、ただ――黒かった。


「……っ……」


孔岳は、

それ以上言葉を発することができなかった。


「昨日の決定……?」


ローゼが、堪えきれずに問いかける。


「それは一体何だ…!」


白澤は、ゆっくりと口を開いた。


「昨日――

 九尾の晩餐、鉄の掟に従い」


「威閻を“裁定”にかけました」


「違法薬物使用者に対する処罰をどうするのか話し合う裁判です――」


白澤は、淡々と宣告する。


「結論は永久除名」


「今後、

 九尾の晩餐に一切関わることを禁じる

 “絶縁の誓い”です」


「裁定の結果は、

 賛成6」


「よって、威閻は永久除名としました」


白澤はウインドウを一瞥する。


「――つまり」


「ここに記された718名もまた、

 同様の罪を犯した者として」


「全員、永久除名とします」


庭園に、静寂が落ちる。


幹部たちは、誰一人として口を開かない。


その決定を――

第三者を交えたこの場で、

白澤は、確かに宣言したのだった。


白澤の指が、ウインドウをなぞる。


淡々と、ただ淡々と。

プレイヤーの除名登録が進められていく。


誰一人として、

それを止めることはできない。


そのとき――

池の向こう側から、一人の影が現れた。


「……ふざけるな……!」


沈・夜哭が、ナイフを抜き放ち構える。


「彼は確か、遺跡探索に向かっていたはず。

なぜここに…?」


真羅は眉をひそめる。


「どれだけ俺たちが……

 このギルドに貢献してきたと思ってる……!」


沈・夜哭は、

喉の奥から絞り出すような声で叫ぶ。


「お前が……

 俺たちを否定するのか……!!」


だが白澤は、

その言葉を一切意に介さない。


視線すら向けず、

除名作業を続けていく。


「……殺す」


沈・夜哭の低い声と同時に、

蓮の葉がわずかに揺れ、

水面に波紋が広がった。


沈・夜哭は蓮を足場に、

池の中央へと踏み込む。


赤錆びた刃が、

白澤へと向けられる――


金属が擦れる音。


李・酒龍の青龍刀が刃を弾いた。


欠伸をしながら退屈そうに沈・夜哭を見下ろす。


「……どけ!!」


沈・夜哭は返す刃で、

李・酒龍の首を掻き切ろうとする。


――しかし。


乾いた発砲音が、会場に響く。


李・酒龍は、

もう片方の手で黄金の拳銃を構えていた。


銃口から、

細い煙が立ち上る。


沈・夜哭はその場に崩れ落ち、血を吐く。


沈・夜哭は浅く呼吸をしながら、

血の滲む口で、なおも言葉を紡ぐ。


「……お前だけは……

 許さない……!」


「……必ず……必ずだ!

 俺が……殺して…やる……!」


だが白澤は、

一言も返さない。


ただ、カーソルをなぞる。


――沈・夜哭。永久除名。


次の瞬間、

沈・夜哭の身体は光に包まれ、

エリア外へと強制転送された。


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