第6章 7 暴かれる真実
**奪還戦エリア・ローマ**
巨大な城塞都市が、高い外壁に囲まれてそびえ立っている。
その外周には荒野が広がり、踏み荒らされた大地から土煙が絶えず舞い上がっていた。
外壁の前では、門を守る白騎士と、それに群がるプレイヤーたちの押し合いが、果てしなく続いている。
前線は膠着し、怒号と金属音だけが響いていた。
「なぁ……出撃の指示は、まだか…」
物資の山に腰掛けながら、李・酒龍が吐き捨てるように言う。
九尾の晩餐は、北側の丘を占領して突入準備を進めていた。
高所から戦場全体を見渡せる、絶好の陣地だ。
「孔岳殿の兵団の準備が整うまで待機、との御達しですな」
後ろで手を組み、丘の上から戦局を観察していた真羅が答える。
「ちっ……あいつの準備を待ってたら、日が跨ぐぞ」
李・酒龍は舌打ちし、足元の物資を蹴り飛ばした。
宙に舞った物資を、軽やかに受け止める影。
「物を大切にしない奴は、地獄に堕ちるよ」
葵時雨だった。
宙で身体を捻り軽やかに着地する。
李・酒龍は腹を抱えて大声で笑う。
「そいつはいい!犯罪者と悪魔を、やり放題じゃねぇか!」
「……こいつにマトモな感性を求めた私が馬鹿だったね」
葵時雨は呆れたように物資を置く。
「……あいつも、だいぶ頭のネジ飛んでるけど」
そう言って、丘の下――戦場へ視線を向けた。
そこには、丘へ近づこうとするプレイヤーを八つ裂きにする威閻の姿があった。
アバターを壊し、砕き、引き裂くたび、威閻は至上の喜びに身体を震わせる。
「もっと……!もっと来い!!」
逃げ惑うプレイヤーの足を掴み、英雄具《断罪の斧》を振り下ろす。
何度も。
何度も。
……。
真羅は無言で、その光景を見つめていた。
その瞬間――
破裂音が響く。
威閻の肩が撃ち抜かれ、血飛沫と共に片膝をついた。
「あ……!?」
瞳孔の開いた目で、威閻は射線の先を見る。
そこには、銃剣を構えたルージュローゼの姿があった。
二発目。
威閻は《断罪の斧》を盾代わりに構え、弾丸を弾き落とす。
「あいつ……今、俺を撃ったよな……?」
首元に血管を浮かせ、低く唸る威閻。
「は、はい……!見ました……!」
そう答えた仲間を、威閻は振り向きざまに両断した。
「分かってて、なんで俺の盾にならねぇんだぁ?あぁ?」
踏み砕かれる仲間のアバター。
その異常な光景を前に、周囲の部下たちは――
なぜか、ヘラヘラと笑っていた。
威閻は吠え、部下も吠える。
狂乱の集団。
それは、もはや人ではなく、狂った鬼の群れだった。
「……食いついたようだな」
ローゼは踵を返し、その場を離脱する。
まるで獲物を追う獅子のように、
威閻は逃げるローゼを追い始めた。
「あちゃ~……あの脳筋、どんどん陣から離れてくよ」
額に手を当て、葵時雨が呟く。
「……ほっとけ。馬鹿が減る」
李・酒龍は吐き捨てる。
「そういう訳にもいかないでしょう」
真羅は静かに言った。
「総帥殿からは、待機命令が出ています。
――葵。連れ戻してきなさい」
嫌そうな顔をする葵時雨を、真羅は無言で見据える。
その圧に、葵時雨は肩を回した。
「……分かりました!
その代わり、帰ったら新商品の揚げ団子、買ってください!」
「……検討しましょう」
葵時雨はニコリと笑い、崖から跳躍する。
丘のわずかな出っ張りを足場に、
そのまま戦場へと飛び降りていった。
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