第5章 6 分かたれた仮想世界。
月明かりと街灯が、三人の影を地面に長く落としていく。
夜は静かだった。
風の音。
遠くを走る車の音。
そして、並んで歩く三人の足音。
吐く息は白く、公園の入り口へと吸い込まれていく。
ふと、過去の記憶がよみがえった。
――三人で遊んだ、あの頃の記憶。
追いかけっこをする幼い三人が、
まるで幻のように、今の三人の横を駆け抜けていく。
「……懐かしいね」
ぽつりと、美咲が呟いた。
どうやら、同じことを考えていたらしい。
美咲と迅は、同時に振り返る。
「?」
二人の視線に気づき、紗良は少し驚いたように瞬きをした。
「……どうしたの?」
「今日は、ありがとな。紗良」
迅が、まっすぐに言う。
「ありがと!
元気、いっぱいいただきました!」
美咲も、いつもの調子で続けた。
「あはは……バレてたか〜」
紗良は照れくさそうに笑い、指先で髪をいじる。
「二人とも、元気なかったから……
おとーさんに相談したら、すごく乗り気になってくれて」
「鍋、美味しかったね〜。
また食べたいな〜」
美咲は思い出すように目を細め、今にもよだれを垂らしそうだ。
迅も、無言で頷く。
「おとーさん、めっちゃ喜ぶよ。
伝えとくね!」
紗良は、心から嬉しそうに笑った。
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少しの沈黙。
次の瞬間、美咲が突然、遊具の方へ駆け出した。
「ちょっ——」
止める間もなく、美咲はジャングルジムを軽やかに登り切る。
仮想世界で木を登ってきた成果なのか、その動きはやけに様になっていた。
てっぺんで振り返り、美咲は声を張り上げる。
「言っとくけど!
私は、このままじゃ納得しないから!!」
夜の公園に、美咲の声が響き渡る。
「絶対、あいつらにリベンジするから!」
その言葉は、真っ直ぐに迅の胸を打った。
――簡単なことだった。
この衝動と、どう向き合うか。
迅は、一歩前に出る。
「……俺も誓う」
静かに、しかし確かな声で言う。
「現実世界でも、仮想世界でも。
俺は、最強を目指す」
迅は拳を、夜空へと掲げた。
それを見て、紗良も、美咲も拳を上げる。
三人は、それぞれの想いを胸に刻み、
それぞれの信念に、静かに誓った。
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章の終わりなので少し短いです。
拙い文章ですが読んでいただき本当にありがとうございます。
続きも引き続き書きますのでブックマーク登録、感想お待ちしております。




