無力さやちっぽけさへの挑戦心
リスターは、厳しい状況に置かれている事は百も承知であった。それでもアイザー・ゼルト元帥閣下はSTRSの総大将である。少し位の困難になっていたとしても、それを切り抜ける力はあったし、リスターの右腕ジャスミンも向かった。
現状これ以上閣下にリスターから出来る事はない。グロセリウスの撤退も無しだ。リスターは先に進むしか無かった。
ドラゴン軍団はリスターを倒そうと竜騎兵が、どんどん襲って来るが、覚悟を決めたリスターのサマムネの一撃には、敵わなかった。体力の温存をしている場合ではないはずだ。行ける所まで行ってなるようにしかならない。そう腹をくくった。
ジャスミンを送り出した時に決めたじゃないか。もう後ろは見ない。例えこの命尽きても、戦いの中で死ねるなら本望である。
まだ、STRS兵士になって時間が経っていないが、それでも自分の出来る限りの事を尽くそう。どうしてそこまで強くなれるのか?彼とてただの人間であろうに。彼を突き動かしているのは、己の無力さであり、己という存在のちっぽけさであり、それらに対する挑戦心であった。
一度はブラックキャットに敗れて現実を痛いほど思い知った。それでも沢山の人に支えられ、関わりあい、今日まで必死に生きてきた。いや、食らいついて来た。
今この戦いでDASをやっつけなければ、またしても衝突は起きる。そうしなければ、いつまでたっても憎しみあい、殺し合いついには大量虐殺にまで発展するだろう。
リスターは、その憎しみの連鎖を断ち切る為には、どちらか一方の勢力の完全な勝利しかないと考えていた。そういう考えが無ければ、恐らくここまで強くなる事はないだろう。リスターは心の底から平和の為に、剣を振るっている。
きっと後世の人間はリスターのような者を「勇者」と呼ぶのかも知れないだろう。無論、リスターにそんなつもりは更々無かった。それでもリスターは、エリア2の竜騎兵をひたすらに倒し続けていた。すると…。
「ん?ディザードルーム?」
竜騎兵の姿はもう無く、エリア2の最深部に到達した。




