剣の極意
修行も佳境に入った頃であった。あまりにも無茶を重ねるリスターに対して、竜童がたまらず声をかけた。という出来事があったのである。
「おい!そんなに無理すると体にガタが来るから、適当な所で休め。」
「って言われましても、今なら何でも出来ちゃう気がするんですよね。」
「そういう時こそ、意識して休むように心がける方が良いぞ。」
「何だか時間がもったいなくて。今は止まってる時間が惜しいです。」
「強さをただひたすら追い求める事は悪い事ではない。」
「なら、止めないで下さいよ。私には強さが必要なんですから。」
「罪なのは、己の限界をわきまえず無理を重ねて、強さを追い求める事だ。」
「私の後先考えない修行プラスαは有害だと?」
「もう少し自分の体の事を考えろという事だ。違うか?」
「強さを追い求める事は、私の中で猛稽古する事とイコールなんです。」
「資本である体に気を使えなければ一流とは言えん。」
「そういう弱さが私には必要なんです。だから剣を振る。」
「強さ……とは一体何だ?答えてみろ!答えるんだ‼」
「守りたいモノを好きなように守れる力の事ですかね。」
「本当にそれが答えか?それがお前の答えならお前は剣士失格だ。」
「例え剣士失格でも、強さがあれば何でも出来ます。」
「そんな事ではいつまで経っても剣の極意には辿り着けんぞ。」
「私がエクストラハードコースを終える迄に会得します。」
「そいつは楽しみだな?ヒントをやろう。強さとは剣の極意そのものだ。」
「だから強さを極めるんじゃないですか。その先にあるんですよね?剣の極意が。」
「そういう事だ。お前は今イイ線まで行ってる。あと一押し!」
「そのあと一押しが、重要なスパイスとなるって事ですね?」
「そこまで分かってるならもう、答えだ。」
「そんな事言わないでもう少し焦らして下さいよ。折角もったいぶっているんだから。」
「さて、もう充分休んだろ?まだやれるだろ?素振り一万回!」
「そうですね。って多くないすか?剣の極意恐るべし。」
「さぁ、修行も終わるぞ‼」
「うす!」
リスターは確実に成長している自分の力を早く発揮出来る、実戦を心待ちにしていた。




