表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
語られぬ剣の記憶  作者: ナイトさん
第一章無垢な剣

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

7/7

第七話残響

戦いの後は、静かだった。


さっきまでの喧騒が嘘のように、音が消えている。


残っているのは――


荒れた地面と、倒れた者たち。


「……生存者を確認しろ!」


隊長の声が響く。


だが、その声にも疲れが滲んでいた。


騎士たちは散っていく。


負傷者の手当て。


仲間の確認。


誰もが、口数少なく動いている。


レオンも、ゆっくりと体を起こした。


「……っ」


全身が痛む。


それでも、立つ。


まだやるべきことがある。


倒れている騎士に近づく。


「……大丈夫ですか」


声をかける。


返事がある者もいれば――ない者もいる。


その違いが、嫌でも分かる。


「……くそ……」


誰かが、低く呟く。


その言葉が、妙に重く響いた。


(……また)


胸の奥が、ざわつく。


さっきの記憶。


あの感覚。


(……まもれなかった)


剣の奥で、まだ残っている。


消えない。


消えてくれない。


レオンは、何も言えなかった。


ただ、その場に立っているしかない。


(……負けた)


はっきりと分かる。


何一つ、届かなかった。


拳を握る。


震える。


悔しさが、遅れて押し寄せる。


「……おい」


声をかけられる。


振り向くと、あの騎士が立っていた。


腕に包帯を巻いている。


無事ではあるが、余裕はない。


「生きてるな」


「……はい」


短く答える。


騎士はレオンを見て、少しだけ目を細めた。


「いい顔じゃねぇな」


「……負けました」


その言葉に、騎士は頷く。


「そうだな」


否定しない。


現実だった。


「でもな」


続ける。


「死んでねぇ」


その一言が、重く落ちる。


レオンは言葉を失う。


「死んだやつは、もう何もできねぇ」


静かな声。


だからこそ、深く刺さる。


「でも、お前は違う」


視線が真っ直ぐ向けられる。


「まだできる」


答えは求めていない。


ただ、突きつけているだけ。


レオンは、ゆっくりと息を吐く。


(……まだ)


終わっていない。


その言葉が、胸に残る。


「……強くなります」


はっきりと、言った。


騎士は小さく笑う。


「ならいい」


それだけ言って、去っていく。


レオンはその場に立ち尽くす。


そして――


視線を、森の奥へ向ける。


盗賊たちが消えた方向。


もう、気配はない。


それでも。


(……なんでだ)


思い出す。


カイルの動き。


あの強さ。


そして――


剣を引いた瞬間。


(……殺せたはずだ)


確実に。


あの距離なら、終わっていた。


それなのに。


(……なんで)


理解できない。


敵だったはずだ。


命を奪いに来た相手だった。


それなのに――


剣が、わずかに揺れる。


あの時の感覚。


(……ちがう)


冷たいだけじゃない。


何かがあった。


言葉にはならない。


でも、確かに。


レオンは、剣を見る。


血が付いている。


自分が斬った証。


(……これで)


守れたのか。


それとも――


ただ奪っただけなのか。


答えは出ない。


その時。


剣の奥で、かすかに“残響”が響く。


――伸ばした手。


――届かなかった距離。


(……まだ)


今は違う。


終わっていない。


その感覚だけが、残る。


レオンは、剣を握り直す。


「……行こう」


小さく呟く。


立ち止まるわけにはいかない。


やるべきことは、まだある。


そして――


強くならなければならない。


その決意は、もう揺れない。


剣は、それを感じていた。


過去の後悔と。


今の意思。


それが、少しずつ繋がっていく。


まだ、完全ではない。


それでも。


確かに、前に進んでいる。


曇った空の下。


敗北の余韻を残したまま。


それでも――


歩みは、止まらなかった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ