第1話:飛び出すな馬鹿野郎
お久しぶりです…やっと…やっと……。
まあそれはともかく、なんとか投稿することができました。
これからも急に投稿できなくなったりするかもしれません。
ちょくちょく投稿していきたいと思います。よろしくお願いします。
ルオやラザがこれから通う学園は、コリフレア学園という。全寮制で、かなり広い。寮があるというのは、ルオにとって喜ばしい事だった。
何故なら。
小学生の頃は、いくら頑張って歩いたり、早く出たりしても遅刻ギリギリだったし、息はすぐに上がってしまう。
簡単に言って、ルオは体力がないのだ。馬車を手配すれば良かったのかもしれないが、母のルナに「運動しろ」の一言でバッサリ切り捨てられてしまった。
しかしながら寮だったら学校に遅れる心配もないだろう。
この頃のルオはまだ知らない。コリフレア学園は凄まじい広さで、階段がたくさんあることに。
ルオが教室移動に間に合うことを祈るのは、もうしばらく後のことである。
ここ、ノルジェータ王国は教育について重視する国だ。当然だが、将来を担う大臣や貴族が無能だったら困るからだ。
貴族には、貴族の学校がある。庶民では入れないような高い学費。豪華な設備。多くの貴族はそこに子供を入れる。
しかし、貴族が庶民の暮らしを知る必要があるのも、事実なのだ。
かつて、民の暮らしを知らないまま、贅沢をした王がいる。高い税を搾り取るので、民は今よりもずっと質素な暮らしをしていた。
そうして不満を溜め込んだ民は暴動を起こし、結果としてその王は滅びた。
だから、自分の子供をわざと庶民の学校に入れる貴族もいる。その学校の名は、コリフレア学園といった。
昔は寮もなかったし、みすぼらしい小さな学校だった。しかし貴族の子が入学するにあたって段々と豪華なつくりに変えていった。
あくまで、庶民も貴族も通える学校として、コリフレア学園は存在していた。
「おーーーい!はよ、ルオ!」
「ん〜、おはよ〜」
道端でばったりラザに出会したルオは、もはやこれが運命……という名の腐れ縁だと諦めた。
「眠いね!」
「そんな爽やかな顔で眠いとか言わないで?めっちゃ元気じゃん。どうせ12時間寝たかったのに9時間しか寝れなかったとかだろ」
「ぶっぶー!残念でした〜!12時間寝たかったっつーのはあってるんだけど、寝たのは11時間だよ」
「誤差だろ!」
「いいや、1時間の差が勝敗を分ける!」
「そういうの試験とかで使ってくれないかなぁ?『30秒の差が勝敗を分ける』みたいな」
「試験の30秒で何ができるんだよ。昼寝か?」
「お前は寝落ちすんのが早すぎるんだよ」
ともかく、新学期から元気そうで何よりである。
「ねーね、ルオさ〜、不安なことないの?勉強についていけるかな〜とか、購買にお菓子売ってるかな〜とか」
「いやあんまり?それラザが悩んでることでしょ」
「あ、バレた」
えへへ、と笑うラザの顔が明るかったので、こいつなら悩み事があっても大丈夫だろうとルオは安心した。
勿論、ラザが本格的に困っていたら助けるつもりだ。だって友____じゃなくて、ルオはラザのお目付け役なのだから。
「ルオは『運動の授業嫌だなぁ』じゃないの?」
ラザの言葉にルオはギクリとした。つまりは図星である。
「え〜、う〜ん、まぁそうかも、ね、はは…」
「困ったらさ、俺頼りなよ!補助してやるから!」
ありがたい申し出だが、補助をラザに任せるのは少し……かなり心配だった。
小学校の頃、ルオは体の柔軟さを鍛えるための運動、すなわちマット運動でなかなか技ができず、四苦八苦していた(いまだにできない)。
そんな時、ラザが寄ってきて今のような笑顔を見せながら
「助けるよ!俺が補助してやるからそこで回転してみ?」
と言ったのだった。ルオは戸惑いつつもラザに補助をお願いし、思い切って回転した。しかし、運悪くそのタイミングで。
「あ!蝶々!」
たまたま窓の隙間から入ってきた蝶にラザはキラキラとした眼差しを向け、手を伸ばした。当然意識は蝶の方に向いていて、ルオはラザに補助してもらえず、あっけなく潰れた。
苦い思い出である。
「う〜ん、機会があったらよろしく頼むよ。僕も勉強教えるからさ」
ルオは曖昧な笑顔を向け、返事を返した。
「それより菓子買ってくれた方がありがたいな」
「中学行ったら今以上に勉強難しくなるぞ?テストも頻繁にあるんだぞ?」
「ぐぬぬぬ……」
「赤点取ったら補習、再試験、罰則……休み時間がなくなるかもね?そしたらお菓子買う時間もなくなっちゃうかもしれないじゃないか…?一緒に頑張ろうぜ…?」
「ぐああああ!」
頭を抱え天を仰ぐラザの思考が、ルオには手に取るようにわかった。「勉強したくないけどやらなきゃやばいかもしれない……でも勉強はしたくない!どうしよう!」というところだろう。
ラザは悩んだ挙句勉強の話題を切り上げることにしたらしい。
「と、ところでさ、今俺が考えていること当ててみて!」
ラザの思考は率直にいって単純である。だからルオは迷うことなく答えたのだが、結論から言うとはずれだった。
「『学校に行くのが楽しみ』?」
「んー、はずれ!まぁそれもあるんだけどさ〜」
あるならあたりにしてくれ、とルオは心の中で思った。
「正解言ってほしい?言ってほしい?」
正直ラザを相手に正解を教えてくれと言うのは、ルオのプライドが邪魔をする。
だからルオは、こう言った。
「言いたければ、どうぞ?」
「正解は〜!『革靴痛いなぁ』でした〜!!」
(あ、言いたかったんだ)
小学校の頃はもう少し柔らかい素材の靴を履いていたが、進学するにあたり靴から鞄、服などの色々なものが統一されるようになったので、やむを得ず革靴を履く。
「パカパカして踵が痛いんだよな〜。これなんとかなんないのかなぁ?……えぇい、もういい!革靴なんか履かない!!」
ラザは唐突に靴を脱ぎ、靴下になる。
「ちょ、お前馬鹿!道に硝子とか落ちてたらどうすんだよ!なんのために靴があると思ってんだよ!怪我するぞ!」
「ははははは、へーきへーき!」
硬い革靴からの解放感ゆえにラザは走り出す。
「おい!走ったら余計に危ないだろ!渡る時は右と左を確認しろ!」
それでもラザは陽気に笑いながら走っていく。ルオもドテドテと走って追いかける。残念ながら、大したスピードは出ない。
「おいラザ!そっち、は____!」
運動に慣れていないルオはゼヒュウ、と言う音を漏らす。
(そっちは馬車の通行が多いんだ!止まれ、ラザ!危ねぇんだよ!)
伝えようとしても息が切れて声を出せない。
「ん?何?____あ」
「危ねぇガキ!」
(危ないっ……!)
ラザの疑問の声と、御者の声と、ルオの思考が重なった。
間に合わない。どう考えたって、ラザはひかれてしまう。
御者は必死に馬を止めようと手綱を引っ張ったが余計に馬を興奮させてしまう。
ルオは絶望の中で手を伸ばした。ラザには絶対に届かないのに……。
馬の鳴き声と、キィィンと言う音が聞こえた。
かと思う間も無く、馬が倒れ、馬車も倒れた。
まるで、見えない壁にぶつかったように。
ルオは、この状況を本でしか読んだことがない。
(結界を、張った……?)




