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湖畔のマリス  作者: 夜風 紅葉
第2章:不良の憎しみ
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第3話:戻ってきたら締め上げる

「おーいラザ!セテン!どこ行ったんだよ馬鹿ー!」


 ルオは次の日の休み時間に声を張り上げた。

 昨日、メルジュとサオールが、


「ヴァグル様は、『ご友人をいじめる』と脅されているのではなくて?」


「私もそう思う」


 という会話をしていたのだ。

 なんでそこまで知っているのか、不思議に思った例の馬鹿二人が例のごとく失言をかます。


「なんでサオールもメルジュもそこまで知ってるんだよー」


「もしかしてヴィアスの仲間なんじゃね?」


 馬鹿二人は無事メルジュの飛び蹴りを受けた。

 しばらく床に転がってうめいていた馬鹿二人はさておき、「友達をいじめる」と脅されているか確かめるには、それらしき雰囲気を作り、ヴァグルが動揺したかどうかを見ればいいのではないか。

 そう考えたルオは、サオールとメルジュに相談し、結果的に実行することになった。

 まず、ラザとセテンに身を隠してもらって、ルオは探すふりをする。

 途中でヴァグルに「ラザとセテンをみなかったか」と聞く。

 そしてヴァグルの反応を見る、簡単と言えば簡単な計画…………なのだが、悲劇は起こる。


「なあ、ヴァグル………ラザとセテンがいなくて……」


「…………え」


 ヴァグルの顔がみるみる青くなっていった。


(黒だ)


 瞬間的に判断したルオは、ヴァグルを逃さないための行動に移る。


「なあ、一緒に探してくれよ」


 このまま、打ち合わせ通りの場所に行けばラザとセテンがいるはずなのだ。

 打ち合わせ通りにいっていれば。

 上手くいった、という高揚感に身を包んだルオは、ラザとセテンがいるはずの場所にカラスがいるだけなのを確認した後、青筋を浮かべた。


「なぁぁにやってんだ、あの馬鹿ども〜〜〜!!!!」


「ど、どうしたの?ラザと、セテンは…………」


 これで見つけられないとヴァグルに申し訳ない。本気で探すしかない。

 かくして、貴重な休み時間を、ほとんど走り回る羽目になるのだった。

 しかし、体力のないルオとヴァグルのコンビだ。

 途中で力尽きてしまうのは目に見えている。

 目撃情報でもない限り、この広い敷地内でラザとセテンを休み時間内に見つけるのは至難の業である。

 彼らが授業時間に戻ってくるとは思えないのだ。


「ヴァグル。聞き込みしよう」


 人見知りのヴァグルは一瞬戸惑ったが、ラザとセテンのためと思って頷く。

 こんなヴァグルの健気な態度に、ラザとセテンへの怒りが昂る。

 その怒りが、前を見えなくした。


「よぉ、ヴァグル〜?なんでこいつと一緒なんだ〜?探したのによぉ?」


 最悪の事態だ。

 これでヴァグルにはラザとセテンが無事だとわかってしまうし、何よりヴィアスになんて会いたくもない。

 半ば諦めたような気持ちのルオに、希望の持てる発言が舞い降りる。


「あぁ〜?今日はあのお友達いないんだなー?」


 くつくつと笑うヴィアス。


(まさか、あいつら捕まったのか?)


「残念だったな、ヴァグル」


(まさかあいつら…………)


 ラザとセテンは自分の意思で約束の場所を抜け出したのだと思ったのだが、ヴィアスの一味に捕まったのだろうか。

 心配ではあるが、同時にあの二人ならなんとかなるだろう、と思っているルオがいる。

 ルオ自身は気がついていないが、これを信頼という。

 それよりもよっぽど心配なのは顔を青くして震えるヴァグルである。今にでも倒れそうなヴァグルと、あの神経が図太い二匹の野生児を一緒にしてはいけない。


「まあ、俺は知らねーけどな。ほら、行くぞヴァグル」


 ヴィアスがヴァグルの腕に腕を絡める。ルオは、やっぱりラザとセテンは自分の意思で動いたのだと思いつつ、口を挟む。


「待てよ、今、僕がヴァグルといたんだ」


「あぁ?生意気なや、つ…………」


 ゴリラのようなヴィアスと小柄なルオでは、ずいぶんな身長差がある。

 となると、ルオの頭頂部なんてよく見えるわけで。

 赤と黒の髪がはっきりと認識できるわけで。


「お前………」


 黙ってルオは下からヴィアスを見上げる。見上げるというよりも下から睨みつけている。

 今は灰色の目がぎらりと光る。

 その目が、一瞬緑に変わる……。


「お前、お前、まさか………」


「どもってないで言えや」


 ついついラザとセテンと一緒にいる時の癖で言ってしまった後で、「しまった」と思った。

 認識してもらえと最強女子軍よりいいつかっていたので、別にいいかと思い直す。


「<魔の子(スメルツァ)>……………」


 クフっと、ルオは吹き出した。


(「魔の子」なんて、ラザとセテンが言いそうな………)


<魔の子(ス・メルツァ)>は旧国語である。

 何故それを馬鹿そうなコイツが知っているかは、なんとなくわかる。

 イキリたいやつは、適当な単語や短い文章を覚えてイキリ散らかすのだ。

 ラザも似たようなことをやっていたのだ。

 ありし日のラザも、<魔の子(ス・メルツァ)>発言をしている。

 妙なところで似ているのだなぁと、ルオは思った。


(えーっと、認識してもらうには「恥ずかしい思いをさせた方がいい」んだっけ?)


 サオール仕込みの知識である。


「なぁ、ルシィルの不良のヴィアスさん?正しい発音は<魔の子(ス・メルツァ)>だよ。<魔の子(スメルツァ)>ではなく」


 ラザやセテンのごとく爆弾発言をしてルオはあっさり背を向ける。


 あの馬鹿二人、見つけたら締め上げると心に誓って。

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