197.派手に行くぞ
敵襲ー!!
テラスの窓ガラスを打ち破り、アキラの天氷魔法は部屋内の壁をも破壊する。
その音は城中に鳴り響き、城内にいる兵達はてんやわんやだ。
「止まれぇぇ!!貴様ら何処から入り込んだ!?」
教皇フロイズンを守る親衛隊達は直ぐ様落ち着きを取り戻し、アキラの居る部屋へと続々とやって来る。
親衛隊なだけあって、走り方や状況判断など練度の高さが垣間見れた。
「何処って、城壁登って来た」
兵達に囲まれてもアキラは余裕の表情を見せる。
「気でも狂ってるのか!?登れるわけないだろ!!」
そんな姿を見た兵達は困惑している。
先ず城壁を登るという荒唐無稽な事を信じるわけがない、城壁に手や足を引っ掛かる窪みや突起は無いからだ。
そして囲まれているのにも関わらず命乞い一つもしない、ここまでの事をやらかしたら死刑は免れない、そんなアキラの顔には悲壮感のカケラも無い。
「旦那、始末しても?」
「好きにしていいよ、ただ降参する者には手を出すな」
「わかりやした」
「な!?誰と話している!?」
部屋にはアキラの姿しか見えない、だが何処からか声が聞こえる。
兵達はキョロキョロと周囲を見渡した。
「上から失礼しやす」
兵達は皆一斉に上を向く。
そこには黒いローブを来た何かが天井に張り付いていた。
気づくのが遅すぎる、ルージュはすでに天井を蹴り落下、そのままナイフを兵に突き立てた。
「ぎゃあぁぁぁ!!」
兵の一人から悲鳴が挙がる。
「排除しろ!!」
指揮官が命令を降すと、アキラそっちのけでルージュだけに注目が集まる。
ーぐわぁぁぁぁ!!ー
ーぎゃああ!!ー
だが兵達の悲鳴は止まらない。
人と人の隙間を縫う様に、ルージュはスルスルと移動しながら致命傷を入れて行く。
ルージュに対し殺気が強い者程、より悲惨な結末を迎えていったのだった。
「ルージュ、そろそろ行くぞ」
「へい、お供しやすぜ」
アキラは部屋の出入り口に向け歩き出す。
ルージュは攻撃するのを止め、アキラの一歩後ろに付き従った。
「…………」
兵達は左右に別れ道を開ける、いや、開けざるおえない。
それは"モーゼの海割り"の様に見えた。
(……ちくしょう)
一人の兵は唇を噛む。
親衛隊に入隊して2年、弛まぬ努力をしてきた。
そして親衛隊である事に誇りを持っていた、それがこのザマだ、プライドがズタズタにされた気分だった。
それは他の兵にも見られる、ある者はぎゅっと握り拳を作り、アキラ達を呪い殺す様な目で見つめた。
それでも恐怖心は拭いきれない、周りには呻き声をあげる同僚達が激痛を訴えている。
部屋を出るアキラとルージュ。
「旦那、誰かこっそり見てやすぜい」
男が廊下の死角から、ちらちらとこちらを伺っていた。
顔を出しては引っ込めての繰り返しで、本人は隠密しているつもりなのだろうか。
「わかってる、気配がバレバレだ」
「こりゃ、ただの素人だ」
「城内に居るって事は、執事かなんかだろうな」
「どうしやす?」
「泳がそう、もしかしたら教皇の元へ行ってくれるかも知れない」
「わかりやした、エリアサーチでその者の行方を追いやす」
「頼む」
アキラ達はゆっくりとその男の行方を追う。
◇ ◇ ◇ ◇
「誰だ?」
教皇フロイズンは扉へ向け声を掛けた。
「し、至急お伝えしたい事がございます!!」
連絡用の扉の小窓を開け、そう言うと執事長は息を整えた。
「なんだ?アクティースとか言う弱小国家にもう勝ったのか?はっはっはっ!!」
教皇フロイズンは大きな声で笑った。
これで当分は至福を肥やせる、そして聖女アストリカを抱きながら自らの有能さを語りたくなった。
「なんだー、もう終わっちゃったの?アキラとかいう奴はご愁訴様だな、まぁ来世で頑張るんだな」
セイヤも教皇フロイズンに便乗した。
「俺の日常は誰にも変えられない」、下卑た顔をするのを堪え心の中で高笑いする。
「ち、違います!!し、侵入者が直ぐそこに!!」
「「は?」」
二人は鳩が豆鉄砲を喰らった様な顔をする。
奇しくも教皇フロイズンの自室は完全防音であり、外の騒ぎは耳に全く入っていなかったのだ。
「で、ですから!!」
「落ち着け、とりあえず中に入って詳しい……」
「う、うわぁぁぁぁ!!!!」
教皇フロイズンの言葉を遮る様に、執事長の悲鳴がこだまする。
声はどんどん遠のいて行く、どうやら執事長はその場から居なくなった事がわかった。
「な、何が起こっておる!?」
教皇フロイズンは思わず立ち上がる、その時……。
ードガァンー
部屋の出入り口の扉が吹き飛んだ。
「な、何だ!?」
セイヤも思わず立ち上がる。
その音が原因で二人の両隣に座っていた女達は、部屋の隅っこに行きプルプルと恐怖で震えていた。
そして、二人の目が捉えたものは……。
「教皇フロイズン殿お初にお目にかかる、ちょっと半殺しにしに来た」
男はにっこり笑う。
だが教皇フロイズンとセイヤから見たそれは、全く目が笑っていなかった。




