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196.そのころアキラは

戦闘真っ只中の頃、ミスラウェル聖皇国城内は平和そのものだった。


「いやいや、セイヤは努力家だな、だいぶ剣の腕前も上達したと聞いている」


「はい、俺にかかればこんなの楽勝ですよ、なんて言ったって勇者ですからね俺!」


「はっはっは、頼もしいな、まさに聖皇国の聖なる勇者だな」


「煽ても何もでませんよー、まぁ国民にはそう映ってるみたいですが」


「ずっとそのままでいて欲しいものだ」


教皇フロイズンは自室でワイン片手に、護衛であるセイヤと談笑している。

ソファーには4人の見目麗しい美女が、二人を挟む様に座って酒を注いでいる、そこはまるで高級クラブの様だ。

その光景を殺し殺されている自国軍の兵が見たら、怒りで震え上がるだろう。

その内ミスラウェル聖皇国が圧勝したと言う報せが来るだろうと思っているのか、なんとも上機嫌な口調だった。


セイヤに至っては、テーブルの死角で女のスカートに手を突っ込んで、性器に指を入れて遊んでいた。

女は声が出ない様に頬を赤らめながら、普段通りに振る舞う。

それを見たセイヤはニヤッと笑って、性器の中をいっそう掻き回した。


「おまえ、夜は俺の部屋に来い」


「……はい」


女の耳元でそう小声で伝えるセイヤ、頭の中はピンク色で埋まっていた、まさに"性なる勇者"そのものだ。


教皇フロイズンのワイングラスが空になる時、コンコンと扉をノックする音が部屋に響いた。



◇ ◇ ◇ ◇



その頃アキラはミスラウェル聖皇国の城下町にいた。

街は静かだ、戦争中にわいわい騒いで楽しそうにするのはもっての他だろう、多くの人が家で待機し家族の無事を祈っていた。


路地裏から顔を出し、周囲の状況をルージュと一緒に確認する。


「衛兵がちらほらいるな」


「ええ、ゼルヴィンさんの信頼できるという人からの手引きで中に入れやしたが、ここからが本番てすぜい」


「わかってる、だが騒ぎは起こしたくないな」


「城まで最短距離でいきやす、しっかりついて来てくだせぇ」


「わかった、早く戦争を終わらせてこれ以上無駄な犠牲を増やさない様にしよう」


会話を終わらせ二人は移動を始める。


この作戦には三つの意味がある。


一つはアキラの力の大きさを知らしめる事だ。

王自ら敵陣に乗り込み戦争を終結させる、そのインパクトは世界中に広まるだろう、この先にもあるだろう余計な戦争の回避にも繋がる。


二つ目は、聖皇国の膿みを出しきる為だ。

教皇フロイズンを心の底から屈服させる事で、アキラにすり寄る者、我先にと逃げる準備をする者、そういった貴族を選別する為にある。

ゼルヴィンが悪徳貴族を調べてはいたが、全て把握しているわけでは無い、聖皇国を生まれ変わらす為には必要な事だった。


三つ目は、アキラの個人的な感情だ。

アキラは表には出していないが、心の中では激怒している。

アルグレームやゼルヴィンから聞いた、教皇フロイズン、勇者セイヤ、聖女アストリカ、その他悪徳貴族の行いを許せなかった。

一発ぶん殴ってやりたい、そうでもしないと胸糞悪すぎて心に少なからずしこりが残る、そんなのは御免だ。


そしてこの作戦は強者であるアキラだからできる事であり、普通に考えればあり得ない。

敵はパニックに陥るだろうという事が予想がつく。



「もしもの事があったら、あっしが殿を務めます」


「頼む、だが、何故だろう負ける気がしない」


「今の旦那の殺気は、あっしでも震え上がりやすぜ」


「すまん、だが怒りが限界に来てる」


「こりゃ頼もしいや」


移動しながらアキラとルージュは軽口を言い合う。

侵入ルートにいる衛兵は、ルージュが見つかる前に気絶させていた。

ルージュの速さに反応できる者など居ない、もし居たらとっくに徴兵されアクティースへと送り込まれているだろう


そのおかげですんなりと城門前に辿り着く。

二人はそこを通り過ぎ反対側に向かう、そこは高い城壁が侵入者を拒んでいた


「旦那、道を作ります」


ルージュはスキル【暗器】でフックショットを出す。

ローブの袖から鎖が伸び、それは城壁の天辺に食い込み固定された。


「あっしに捕まってくだせぇ」


アキラは頷くと、ルージュの腰に手を回す。

それを確認したルージュはフックショットを戻した。


「結構高いな」


「落ちない様に気をつけてくだせぇ」


鎖は縮み二人は城壁を駆け上る。

それに連れ街の景色が遠のいていった。


「着きやしたぜ、旦那」


「ありがとう、ルージュ」


二人はテラスに着地する。

見張りは居なかった、流石にここを乗り越えてくる賊はいないだろうと思うのは無理もない。


「さて旦那、この後はお任せしやす」


「ルージュ、派手に行くか」


「その言葉を待ってやした、どうも隠密をしすぎると肩が凝って仕方ない」


「奇遇だな、俺もそう思っていたところだ」


二人は顔を見合わせ、ニヤッと笑った。

考えている事は同じだ、全ての鬱憤を晴らしてやろうと。


「では旦那、先陣は任せやす」


その言葉にアキラは詠唱を始める。

少しして開幕を告げる天氷魔法が放たれた。










揺るがす凍てつく氷牙アッドシメント・ガロウ







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