137.新たな仲間
オズマンファミリー本部を出たアキラ達は酒場に向かった。
暫し歩くと酒場に着く、酒場に入るとカランカランと来客を告げる鐘の音がアキラ達を出迎えた。
まだ夜前で酒場内はそこまで賑わっていない、アキラ達は4人席の奥窓側のテーブルに座る。
「ん?まぁいいか」
アキラは窓の外を見て何やら外が騒がしいのに気づく、オズマンファミリーの壊滅が都市全体に広まって外はてんてこ舞いだ。
そんな事はつゆ知らず、4人は酒とツマミを頼んだ。
ー乾杯!ー
アキラの掛け声の後皆酒を飲み始める、少ししてツマミの燻製肉やチーズ、豆料理などが運ばれ各々が舌鼓を打つ。
タイミングを見計らいアキラは本題に入る事にした、リュコ奪還も全てはジェイドをアクティースに引き込む為だ。
「……ジェイド俺は今、神樹国アクティースと言う国で王をしている、その事を前提で頼みがある、俺の国に来てくれないか?」
「そうなのか……、だが何故だ?」
ジェイドはグラスを置くとアキラの目を見た、ジェイド程の腕前がどの国にも仕えない事には理由があるのだろうかと思ったアキラに緊張が走る。
そんな2人をヴェッジとハヤテは静かに見守る。
3人はアキラが王になった事に然程驚いて無い、それだけの力があれば人が集まるのは当然だと思っていたからだ。
アキラは言葉を続ける。
「俺の国は建国したばかりでまだいろいろと手探りな状況なんだ」
「「「…………」」」
「この前とても強い奴から襲撃を受けた、その人とは和解して今は良好な関係を築けているが、この先また同じ事が起こり今度も和解できるとは限らない」
アキラは一呼吸おき、緊張で渇いた口に酒を流す
「だから国を守る戦力が欲しいんだ、ジェイドだけじゃない、ヴェッジとハヤテにも来て欲しい」
アキラが心の内を吐露した後、暫しの沈黙が続く。
少ししてジェイドが口を開く。
「……わかった、アキラに仕えよう」
「本当か!?」
興奮したアキラはジェイドに詰め寄る。
「落ち着け」
「あ、あぁ……ごめんごめん」
「アキラが居なければ、俺はオズマンに利用され続ける人生で終わっていただろう、ちゃんと義理は返すさ」
「……マジでありがとう」
ジェイドの言葉に、アキラはホッと胸を撫で下ろした。
次にヴェッジの方を見る。
「んー、どうしようかな……」
ヴェッジの反応は芳しくない。
元々槍術の武者修行をしているヴェッジは、どこかに定住する気などさらさら無かった、それにそこまでアキラに義理建する理由も無い。
(ヴェッジの気を惹く何かがあれば……)
アキラは思考をフル回転させる。
(……あ!よし、これでいこう)
そして閃いた、アキラは悪魔の囁きの様な声色でボソッと独り言を呟く。
「……そうかぁ、綺麗なエルフのお姉さん達が悲しむかもなぁ」
「!?」
アキラの独り言にヴェッジがピクんと反応した。
そして唐突に立ち上がると、アキラの前で片膝をつく。
「……アキラ様とお呼びすれば良いですか?」
(変わり身早!?)
目をキラキラさせながらヴェッジはアキラを見ている、エルフ、綺麗、お姉さんのワードがヴェッジの脳内を一瞬でピンクにした様だ。
それで良いのかヴェッジよ……。
「アキラで良いから」
アキラは苦笑いを浮かべた。
「よし!ヴェッジも歓迎するよ!」
気を取り直したアキラはヴェッジと固い握手をした。
最後に最難関であろう、ハヤテの方を見る。
案の定ハヤテは興味なさげだ。
「ハヤテも……」
「行くわけ無いだろ」
アキラの話を遮る様に、ハヤテは言葉を被せた。
この天邪鬼で頑固で厨二病気味でむっつりのハヤテを堕とす秘策を考えなければ。
(ハヤテは最強を求めていたな……)
アキラは腕を組みながら悩む。
(……すまないムゲン)
生贄を捧げる。
面倒くさいハヤテの面倒をムゲンに押し付ける、アキラは心の中でムゲンに合掌した。
そして先程と同じ様にボソッと独り言を呟く。
「残念だなぁ……同じ刀が武器同士のムゲンと、しこたま戦い合って己の技の研鑽を高める事もできたのだが、ハヤテが嫌なら仕方ないなぁ……」
「ほう?」
アキラの言葉にハヤテは不敵の笑みを浮かべた。
どうやら釣れた様だ。
「あれ程の手練れと心置きなく戦えるのか、悪くない」
アキラはここで追撃を加える。
「……あと綺麗な女の人いっぱいいるぞ」
「……それは興味ないな」
嘘つけ顔が真っ赤だぞ、アキラはじと目でハヤテを見た。
「……しょうがない、アクティースに行ってやる」
ハヤテの言葉にアキラは、テーブルの下で静かにガッツポーズした。
その後は和気藹々と話しをした後、ジェイド、ヴェッジ、ハヤテの身支度の為、一旦解散した。
アキラはその間にルージュ達の合流と、ミランダへの挨拶をする事にした。
ルージュ達はミランダファミリーの事務所前に居た、アキラは3人に駆け寄る。
「ルージュ、ナターシャ、ザガ、皆お疲れ様」
「お安い御用で、旦那も無事で良かったです」
「流石ルージュだな、もう少しでアクティースに戻るからそれまで異空の楽園でしっかり休んでくれ」
「わかりやした」
アキラはルージュを異空の楽園へと戻した。
「アキラ様、お怪我はありませんか?」
「ミニライムもいるし大丈夫だよ、ナターシャこそ顔が少し暗いが大丈夫か?」
「……ミスをしてしまいました」
ミランダは警報装置を鳴らしてしまった事をアキラに話す。
「あまり気を病むな、ナターシャが居なければもっとミランダ奪還に時間が掛かっていたさ、充分役に立ったその事を誇りに思え」
「……ありがたきお言葉」
ナターシャはそう言うと深々と頭を下げた。
「えーと、ザガで合っているよな?」
オズマンファミリーの若い組員に変装中のザガを見て、アキラは首を傾げる。
「ええ、今は変装しています」
「すごいな、まるで別人だ」
「ははは、これが私の特技ですから」
アキラに褒められザガは嬉しそうだ。
「2人共アクティースに戻ったらゆっくり休んでくれ」
ーありがとうございますー
お辞儀するナターシャとザガに見送られ、アキラはミランダファミリーの事務所に入る。
「兄貴!!」
ボルツがアキラの元へ駆け寄る、その目には涙が浮かんでいた。
「よくぞご無事で!本当に兄貴には感謝しても仕切れないです!」
「ミランダが無事で良かったよ」
他の組員達もそれぞれがアキラに感謝の言葉を伝えた。
「……世話になったね」
そこにミランダがやって来た。
「巻き込んでしまってすまない、オズマンの狙いは俺だった、俺をここに来させる為ミランダが餌にされたんだ」
「そうだろうとは思ったさ、気にするな」
「ありがとう」
「それより王になったのは本当かい?」
「本当だ、どこでそれを?」
「噂はあちこちで広がってるよ、アキラが商人を使って宣伝していたんだろ?」
「……あ、移民を受け入れる為にやった」
「全くおまえって奴は……他の国に戦争を仕掛けられない様用心しな、噂じゃかなりの肥えた土地になったとか、侵略しようと考える輩がわんさか出てくるよ」
「助言ありがとう、気をつけるよ」
「まぁ、ジェイドを味方に付けたんだろ?あいつが居ると知れば二の足を踏む輩も出てくるよ」
「頑張った甲斐があったよ」
「ジェイドには勝ったのか?」
「もちろん勝った」
「はあ……どんどん化け物じみてくねアキラは、あれに勝てるとか驚きだよ」
「ははは、まぁ俺だけの力じゃないけどね」
ミランダの言葉にアキラは照れ臭そうに笑う。
「なにわともあれアキラには世話になった、何か困った事が有れば遠慮なく言ってくれ、まぁ当分この都市は忙しくなるから直ぐにとはいかないがな」
「良いのか?」
「義理は返すさ」
「ありがとう、忙しくなるのはやっぱりオズマンが居なくなったせいか?」
「そりゃそうさ、オズマンの後釜に着こうするファミリー達の争いが始まるよ」
「ミランダは参戦するのか?」
「私はしないよ、しがらみが面倒くさそうだしな」
だが将来ミランダはアキラの計略により、世界を跨ぐ裏社会の首領になる事をこの時は知る由も無い。
「ミランダらしいな、そろそろ荷物を纏めた3人が来るだろうから俺はもう行くよ」
「わかった、またいつでも来な」
ミランダ、ボルツ、組員達に見送られ、アキラは都市の外へと向かう。
外門の前で待っていると、暫くして荷物を持ったジェイド、ヴェッジ、ハヤテの3人が向かって来る。
合流した後、先に呼んでおいたヴェルサスが待つ場所へ向かう、その場所に着くと案の定ヴェルサスを見て3人は驚いていたがアキラの従者だと分かると、各々が規格外になりすぎだろと呆れていた。
ヴェルサスはアキラ達を乗せ飛び立つ。
暫しの空の旅を楽しんでいると、あっという間にアクティースに着いてしまった。
アキラ達はヴェルサスの背から降り地上に立つ。




