第九十九話 魔族の救世主 前編
どうもHekutoです。
修正等完了しましたので投稿させていただきます。空いた時間の合間にでも楽しんで頂ければ幸いです。
『魔族の救世主 前編』
地球の月より少し大きく感じる異世界の月の下、巨大な竪穴の底で大きな剣を片手で掲げ、真上で輝く月の光をその刀身に映すユウヒ。
「あ、あな・・・」
「なるほど・・・これは確かに体が、このしんどさは気を失ってもしょうがないのか? しかし元は無かったわけだがそこはどうなるんだろ?」
驚きの声を上げたマニリオーネは、小さな声を洩らしながらよろよろと立ち上がると、空に翳していた剣を下ろし疲れたように息を吐くユウヒにゆっくりと歩み寄る。
「ぬ、ぬい・・・て」
「ん? おう何とか抜けたな、魔力もほぼゼロだ・・・いやぁ危なかった。はっはっは!」
ふらふらと信じられないものを見た様な表情で歩み寄ってくるマニリオーネに、ユウヒは疲れを感じる笑みを浮かべると、以前にも感じたことがある大量の魔力が消費された感覚に頭を掻き、空元気を感じさせる声で笑う。
「わ、笑い事じゃないわよ! 体! 体は大丈夫なの!? 炭化は、灰化はしてないの!?」
しかし笑い事ではないのがマニリオーネである。
今まで目の前で剣を抜こうとした者は皆死に、手が炭化した者も居れば体の大半が灰に、酷ければ体全てが灰になった者も居るのだ。あわててユウヒに駆け寄った彼女は、剣を床に放り投げたユウヒの手を掴み上げて見詰め、異常のないことを確認すると今度はユウヒの体を触り異常を確認する。
「ハイカラ? うむ、そう言われると異常に腹が減ってきたような? ハイボールとから揚げとか無限に食べれそうだ」
「何言ってるか分からないけど・・・大丈夫みたいね、空腹は体の防御反応だと思う」
体のあちこちを触られ少し頬を赤らめたユウヒは、困った様にお道化て見せると急に空腹を感じはじめたのかお腹を押さえ始める。剣を抜く前と大して変わらないユウヒ様子に、ホッと息を吐いたマニリオーネ曰く、急激な空腹は魔力枯渇時に起こる体の防御反応だと言う。
「ほう、疲れた体を癒せと言う空腹か・・・さすがにお芋さんじゃもたないか」
「・・・はぁ、やってることは勇者そのものなのになんて軽い空気なのかしら」
そんな彼女の言葉になるほどと頷くユウヒの姿を見詰めていたマニリオーネは、両手で胸を抑えると安心した様に肩を落とす。しかしすぐに目を細めてユウヒを睨むように見上げると、呆れを多分に含んだ声でユウヒに不満を溢すのだった。
「悪いな、シリアスは苦手なんだ。さって世界樹はどうなったかな?」
「そ、そうよ! 世界樹は大丈夫なの?」
暗い雰囲気や湿っぽい空気などのシリアスな空間が苦手なユウヒは、日ごろから態とそういった空気を作り出さないように立ち回る癖がある。その為今もすごいことを成して居るにも拘らず、どこか締まらない空気で満たされていた。
「んー・・・封印は解除されてるな、エラーチェックにシステム再起動ってまるでパソコンだな」
そんな空気の中、ユウヒが見詰める先では先ほどまでと変わらない世界樹が、しかし剣の突き刺さっていない姿で聳え立っている。マニリオーネの目には変わらず枯れたままの世界樹であるが、ユウヒの右目には活発に活動を始めている世界樹の情報が流れ込んでおり、その大量の情報の中から意味の分かる部分を口にしたユウヒは、不思議そうに首を傾げた。
「ぱそ? 封印は解除されたのね?」
「封印は解除されてるよ・・・もうすぐ再起動作業も終わるらしいが」
「・・・・・・」
聞き慣れない言葉に首を傾げるマニリオーネの不安そうな問いかけに、ユウヒは笑みを浮かべ頷く。そんなユウヒの笑みに表情を明るくしたマニリオーネが世界樹に祈りをささげる横で、彼は右目を瞬かせながら妙な表情を浮かべる。
「まぁいいか、で? こっちの剣はと言うと、権能喪失? ありゃ、これ唯の丈夫な剣になっちまってる・・・」
妙な表情を浮かべていたユウヒであったが、すぐに頭を横に振ると足下に転がっている聖剣を見詰め、その機能が壊れている事に気が付くと困った様に頭を掻く。
「聖剣ではなくなったの?」
「あー・・・うん、壊れたっぽいな(吸収する速度以上の速さで魔力を送ったのが悪かったかな?)」
「・・・よかった」
ユウヒが呟いた通り唯の丈夫な剣となってしまった聖剣を見詰めたマニリオーネは、難しい表情で眉を寄せ考え込むユウヒの隣で、心底安心した表情を浮かべて小さく呟く。
「良かったのかなぁ?」
「あたりまえじゃない、そんな物騒な物壊れていいの「姫様!」あら?」
どこからどう見ても高価な物を壊してしまったことに、ユウヒの中の庶民感情がざわつくが、マニリオーネにしてみれば壊れてもらった方がありがたい為、ユウヒの呟きに呆れ交じりの声を上げる。しかしそんな彼女の言葉は遠くから聞こえて来た女性の声で遮られた。
「ん?」
マニリオーネと首を傾げ見つめ合っていたユウヒは、彼女と同時に声の聞こえた方に目を向け、その方向から走って来る物騒な物を手にした人物達に眉を上げる。
「姫様! その怪しい男からお離れください!」
「貴様何者だ! 姫を害する気であるならば生かしてはおけぬぞ!」
彼女たちは揃いのメイド服を身に纏い、手には手首から腕まで守る手甲を装備し、その手甲を装備した手には自らの身長よりも長大なハルバードを手にしていた。そんな彼女達は、ユウヒを鋭く睨むと大きな声でマニリオーネに下がるよう叫び走り寄って来る。
「ちが―――え?」
今にもユウヒに切り掛かりそうな勢いで走って来るメイド達を、慌てて手で制するマニリオーネであったが、事態は更なる急変を迎える。その急変にはメイド達も思わず足を止め異常が起きる目の前を見上げた。
「せ、世界樹が・・・」
「お? 再起動完了?」
その場に居る者が揃って驚きの表情を浮かべて世界樹を見上げる中、ユウヒだけは落ち着いた表情で背後を振り返り、光り輝く世界樹を見上げ、その光が収束する場所へと青と金の瞳を向ける。
『・・・・・・』
世界樹の幹へと収束した光は次第に人の体の輪郭を伴い、それは実態を持った女性へと変わりその場に居合わせた者達の前、より正確に言うならばユウヒの目の前に舞い降りた。
「・・・あなたは・・・」
ゆっくりと舞い降りた女性は、すっと目を開き深い森の様な深緑の瞳にユウヒを映すと、まだ焦点の定まらない瞳を揺らし小さく呟く。
「え、あぁ・・・初めまして私は「おいしそう」へ?」
見詰められ誰かと問われたユウヒは、幻想的な光景で僅かに手放していた気を張り直すと、自己紹介を口にしようとするが、その言葉は女性の場違いな言葉で遮られてしまう。
「お腹、すいたっ」
「むぐ!? うむぅぅ!?」
思わぬ言葉にユウヒが気を抜いた瞬間、深緑の瞳にギラリとした野生の火を灯らせた女性は、短く強い声を伴ってユウヒに飛び掛かり、気を抜いていたユウヒの唇に自らの唇を重ねると、両手でユウヒの頭を掴み力強く自らの唇に引き寄せる。
「うな!? は、破廉恥な!」
目の前で突然起こった、男女の熱い接吻に思わず声を荒げるマニリオーネと頬を赤らめるメイド達。
「うむぅ―――!?」
しかし状況はそんな色気のあるものでは無かったようで、慌てて女性を引き剥がそうとしたユウヒは、自らの体に感じる異常を認識するも時すでに遅く、遠のく意識の中必死に助けを呼ぶように叫ぶ。
「ちょっと!?」
マニリオーネが様子の可笑しさに気がついた頃には、すでにユウヒは意識を失っており、女性の唇がユウヒの唇から離れると同時に彼は地面に崩れ落ち、マニリオーネは慌ててユウヒの頭を抱え込む様に抱き留める。
「おいしかった・・・・・・ぁ」
「ちょっとあなた、ってこれ魔力喪失!?」
ユウヒから唇を放した女性が、宙に浮き満足気な声を上げた後表情を引きつらせる下では、ユウヒの体を支え切れなかったマニリオーネがユウヒの頭を抱え座り込んでおり、彼女はユウヒの顔を宝石の様に赤い瞳で見詰めると驚愕に目を見開く。
「やっちゃったぁ・・・」
気まずそうな表情で二人を見下ろしていた女性は、マニリオーネの上げた悲鳴のような声を耳にすると、両手で頭を抱え宙で背中を丸め、蒼い顔で目をきつく瞑り呟くとすぐに体勢を整え、泣きそうな表情のマニリオーネに介抱されるユウヒの顔色を覗き込む。
「ユウヒ、聞こえてるユウヒ? ・・・だめ、冷たくなってきてる」
「・・・・・・」
宙に浮いた女性の見詰める先にはユウヒが真っ蒼な顔で目を閉じており、その姿は明らかに彼の身の危険を感じさせるものであった。
「二人ともすぐに治療の準備を!」
「え? あの」
「その者は?」
そんなユウヒを救うべく、マニリオーネは声を張ってメイド達に指示を出すのだがその反応は非常に悪い。なにせ見たこともない男が城に、ましてや禁裏の最奥で自らの仕える主と共に居るのだ。しかもその足元には武器が落ちていると言う状況には、いくら城仕えの優れたメイドであっても戸惑うと言うものである。
「魔族の救世主なの! 世界樹を復活させてくれたの! 早く急いで!」
「「は、はい!」」
しかし、マニリオーネの確認した魔力喪失とは、この世界において治療の遅れにより死の可能性もある症状であり、急いで治療しなければいけないものである。しかも相手は世界樹の封印を解いた恩人である事もあり、普段は大きな声を上げる事の少ないマニリオーネは、喉を潰しそうな大声で怒りを露わにしメイドを急かす。
「この子が・・・あら?」
マニリオーネの見せた怒りの形相に驚いたメイド達が、武器を手放し慌ててユウヒを抱え運ぶ中、その様子を消沈した表情で見下ろしていた女性は、宙に浮いたまま自らを封印から解き放ってくれたと言うユウヒの顔を申し訳なさそうに見詰める。しかしその顔に何か気が付いたのか僅かに目を見開くと、不思議そうに首を傾げるのであった。
ゆるゆるとした意識が次第に形を取り戻すような感覚に、俺は息苦しさから大きく息を吸い込む。
「・・・ぅう? ここは」
目を開けると視界は霞んでおり、ここがどこなのか把握することが出来ない。しかし、体に感じる周囲の柔らかさとある程度の摩擦を感じる感触から、まともな布団に寝かされていることがわかる。
「うぅおぉう・・・めっちゃくらくらする」
いまいち意識がはっきりとしないが、最悪の事態ではない状況にほっとしながらも、本能によるものなのか状況を確認するため無意識に体を起こす。だがその瞬間えも言えぬ気持ち悪さに襲われ、吐くことこそなかったが、遊園地のコーヒーカップで悪ふざけしすぎた後のように頭が揺れる。
「しまった。知らない天井って言い忘れた」
そのまましばらくの間、座ったまま何もできずに妙な気持ち悪さを堪えていた俺は、少しずつ明瞭になってくる脳裏にお約束のフレーズがよぎり、男の子なら一度と言わず何度でも呟いてみたい名台詞を言えなかったことに肩を落とす。
「目が覚めたのね、よかったわ」
「ぅえ? あーっと、世界樹の精霊・・・ですか?」
周囲を見回す限りどうやらベッドに寝かされていたようで、視界も良好になってきたこともあって確認できていなかった天井を拝むため顔を上げていると、突然横合いから女性の声が聞こえ、驚いた俺は思わず変な声を漏らしてしまう。
つい先ほどまで誰もいなかったはずのベッドの脇には、たわわな二つ実りを、いくつもの緑を重ねたような色合いのドレスで包むも、とても隠しきれてはいない女性が立っており、彼女は腰をかがめながら俺の顔を心配そうに覗き込んでいた。
「はい初めまして。私は始まりの世界樹が長女、ウルスと言います。あなたわぁ・・・末の妹達の知り合いなのかしら?」
なんとなく雰囲気が母樹に似ていたので精霊だと思ったのだが、どうやら俺の勘もしっかり目を覚ましてくれていたようだ。彼女こそが今回魔王領に来た目的である世界最古の世界樹、その精霊であるウルスと言うらしい。さすが最古だけあってデカイ、何がでかいとか不敬な気がして言わないけどデカイ、たぶん末の妹と言うのは母樹のことであろう。
「あぁ、母樹と言う名に覚えはないか? 森の方に生えてる世界樹の精霊なんだが」
「あぁあの子ね、もちろん知ってるわよ。最後まで私の事心配してくれていたみたいだし」
どうやら当たりのようで、俺の話を聞いたウルスさんは嬉しそうに目を細めると、柔らかそうな頬を細く長い指で押さえながら口元に笑みを浮かべるが、気のせいかその笑みには不満そうな感情も籠っているように見える。
「俺はその母樹から頼まれてウルスさん? の様子を見に来たんだ。封印解けそうなら解こうと思って」
「と言う事は、最初から私を助ける為に?」
「まぁ・・・そういう事になるかな」
そんな彼女の笑みに首をかしげながらも、俺はここを訪れた理由を話し続けた。説明を終えた俺を目を見開き見詰める彼女の問いには、確かにその通りではあるのだが、改めて聞かれるとなんとなく恥ずかしさを感じてしまう。
「・・・あなたなんて良い子なのかしら! お姉さんキュンキュンしちゃう! しかもこの状態で見て話して触れるなんて」
妙な恥ずかしさか俺は視線をさまよわせていたのだが、そんな言動が彼女の琴線に触れてしまったのか、急にはしゃぐような声を上げ始めたウルスさんは、横合いから抱き着いてくると嬉しそうな声とともに頬を擦り付け、抱きしめたまま体中をぺたぺたと触り始める。たとえるなら犬好きな人が突然現れた大型犬を撫でまわすような状況に似ているだろうか。
「あぁまぁいろいろあって・・・離れませんか?」
正直背中や肩に当たるたわわな感触はうれしくもあるのだが、このままでは俺の理性がマッハでピンチで暴走してしまいそうなので勘弁してもらいたい。俺は悲鳴を上げる理性と手を取り合い、赤くなった顔を背けながら絞り出すように声を出す。
「いやなの? しょうがないわね・・・懐かしい香りだったのに」
「え? 「しつれいしま・・・」お?」
俺の言葉はちゃんと彼女に伝わったらしく、体を撫でまわしていた手をピタリと止めると、ひどく残念そうな声を漏らしながら首をかしげる。そんな彼女に無言で俯きながら頷いた俺は、彼女が離れる間際につぶやいた言葉が気になり問いかけようと顔を上げたのだが、その問いかけは部屋の中に入ってきたメイドさんの声でかき消されてしまう。
「・・・!? すぐに医者を御呼びしますのでそのまま動かずお待ちください」
見回せば結構広いことが分かるが、ベッド以外の調度品が極めて少ない部屋に入ってきたメイドさんは、俺と目が合った瞬間言葉を止めて目を見開き、小さく声を漏らした俺を確認すると、肌と同じ透き通るような白い両手を揃えお辞儀するや否や、踵を返して部屋の外へと駆け出す。
「誰か姫様を呼んで! お医者様もすぐに! お目覚めになりました―――」
「おお?」
「ふふふ、賑やかね」
彼女が駆け出して行った後、部屋の外からは耳に心地よくも慌ただし気な声が聞こえてくる。部屋の外が急激に騒がしくなるのを感じながら、俺は何が何だかわからず首を傾げ、そんな周囲の様子をウルスさんは楽しんでいるのかコロコロと笑い声を漏らす。
「それでウルスさんは体大丈夫なのか?」
考えても分からない事はとりあえず保留にし、先ずは確認可能なところからまとめて行こうと思う。と言うわけで、離れてはくれたものの微妙に距離の近いウルスさんの状況から確認するべく声をかける。
最後に世界樹を確認したときの状況から考えても、悪い方には行っていないと思う、何せ俺が倒れる理由を作ったのは彼女であろうからだ。俺は酒を飲んで酔いつぶれたとしても、直前までの記憶が残るタイプである、関係あるかどうかわからないが、今回も倒れる直前の記憶が残っている。
「ウルスでいいわよ? さん付けはなんだか寂しいわ」
「あぁうん・・・わかった。それで? 世界樹で魔力の活性化は出来そう?」
あの時の感触は彼女がアレして俺があーなって、結果いろいろと吸われて倒れたのであろう。彼女のどこか無邪気さを感じる口角の上がった笑みに、あの時唇に感じた感触を思い出してしまった俺は自然と顔が赤くなる。赤くなる顔を隠す為に顔を彼女から背けると、思わずぶっきらぼうになってしまう声で返事を返し、聞きたかった事について質問を続ける。
「んーそうねぇ今すぐには無理だけど、今日中には出来そうよ? 侵食防止処置のシャットダウン中にシステムダウンがいくつか出ただけで、損傷はしてないもの」
「どこまでもシステマチックだな」
今のところ一番知りたい事は、彼女達世界樹の主たる役割である魔力の活性化が可能かどうかであった。返答を聞く限り問題は無さそうであるが、彼女の話す内容はどこまでもコンピュータの様なシステマチックさを感じるものがある。
「・・・あなたに解りやすく言えば『充電切れ』かしら?」
「なるほど」
と言うかなぜそんな言葉を知っているのか、この世界に来た時から付与されている翻訳機能がそうさせているのか、それとも最初から同じような言葉なのか分からない。しかし彼女の口ぶりやあの世界樹を調べた時に見た文字列から考えるに、後者の可能性が高い気がする。
「ねぇねぇ、あなたの事教えてくれない? あなたこの世界の子じゃないでしょ」
「・・・」
そんなことを考えながらだいぶ熱の引いた顔を上げると、突然俺の顔を覗き込み始めたウルスから驚きの言葉を耳にした。俺は彼女に異世界人であることを話していない、風の精霊から聞いた可能性もあるが、どうも彼女の表情からはそういった情報源を元にして聞いている気がしない。
「問い質してるんじゃないのよ、興味があるだけ。私が寝てる間にだいぶおかしなことになっているみたいだし」
急な問いに俺は訝しげな表情でも浮かべていたのか、どこか慌てた様に体を引いたウルスは、困った様な笑みを浮かべ小首を傾げると、寝てる間に世界がおかしくなったと話しながら好奇心に満ちた表情を見せる。
「まぁいいか、どこかの風の精霊みたいにおしゃべりじゃないよな?」
どうやら純粋に興味があるだけの様だが、まぁどこぞの風の精霊みたいにおしゃべりな感じはしないので、母樹にも話しているから特に教えて問題も無い気がするのだが。一応は念を押しておこうと思う。
「ふふ、だいじょうぶよ」
「そうか、まぁいいか実は―――」
風の精霊を引き合いに出した俺の念押しに、ウルスはくすくすと笑みを浮かべ大丈夫だと目を細める。その表情や仕草は、例えるなら頼れるお隣のお姉さんと言った感じであろうか、正直俺の周りにこのタイプは少ないので少し照れくさくなる。一番近いのはメロンさんあたりだが、あの人は人妻感が半端ない時があるのでそう考えると初めてのタイプかもしれない。
そんなあほらしい事を考えながら、俺は母樹にも話した内容を掻い摘んで話すのであった。いや、やっぱ中身は精霊だな、ものすごくキラキラした好奇心丸出しの目で見詰めてくる、それはいいのだがだんだん距離が近づいてませんか? だれか、早く誰か来てくれ・・・。
いかがでしたでしょうか?
不意打ちから強制的に魔力を奪われて、抵抗する事も出来ず初めての魔力喪失による失神を味わったユウヒでした。おかしいな? 世界樹の精霊を書いたつもりなのにこれではまるでサキュ、うわなにをすr・・・。
それではこの辺で、またここでお会いしましょう。さようならー




