永遠を軌らう者、新世界の夜明け
タイム・キーパーから十万年の寿命を喰らい尽くし、シュウの右腕は白銀と漆黒が混ざり合う、神々しいまでの龍の姿へと変貌していた。
辿り着いた最深部。そこには、巨大な宇宙の星々を映し出す「万象の時計塔」が鎮座していた。
「……来たか。システムを食い破り、無限に到達した特異点よ」
時計の針の上に座っていたのは、第零執行者クロノ。
彼女が静かに手を振ると、背後の宇宙から、これまでとは比較にならないほどの「時間の重圧」が降り注ぐ。
「私は世界そのもの。私を殺せば、地上のすべての生命も『時間』という概念を失い、霧散する。……それでも、私を喰らうというのか?」
究極の問い。
シュウが勝てば世界が壊れ、負ければ人類は家畜のまま。
「……いいえ、クロノ。あなたは間違っているわ」
フィオナが、ボロボロになりながらもシュウの隣に立った。
リィネが端末を弾き、エレインが魔力を高め、ミーニャが牙を剥く。
「時間は奪い合う資源じゃない。……私たちが、自分で刻んでいくものよ!」
四人のヒロインが、シュウの背中に手を置く。
その瞬間、シュウの「∞」の紋章が、かつてないほど眩い七色の光を放った。
「……クロノ。あんたを殺しはしない。……あんたの持っている『管理権限』、そのすべてを俺が喰らって、世界に『返して』やるよ!」
【最終奥義:虚無の晩餐——発動】
シュウが跳んだ。
右腕の龍の爪が、クロノの胸元にある「世界時計の核」へと突き刺さる。
「……っ! 私を……管理システムごと、飲み込むというのか!? 人間の器で、そんな膨大な時間を……!」
「一人じゃない。……五人(俺たち)なら、耐えられる!」
シュウ、フィオナ、リィネ、ミーニャ、エレイン。
五人の魂が一つに溶け合い、クロノの中に蓄積されていた「全人類の数億年分の時間」が、シュウの右腕を通じて逆流していく。
バキバキと、世界を縛っていた「寿命の数字」が砕け散る。
「……ああ。そうか。……温かいのね、『流れる時間』というものは」
クロノの瞳に、初めて感情の光が宿る。
爆発的な光と共に、浮遊島「レギオン」が崩壊を始めた。
数日後。
地上の人々が見上げた空から、忌々しい「寿命の数字」は消え去っていた。
誰もが、いつ死ぬか分からない。だが、誰もが、自分の時間をどう使うか選べる世界。
断絶の崖の上。
そこには、右腕の変異が消え、普通の少年に戻ったシュウと、彼を囲む四人の少女、そして……。
「……なによ。私、執行者をクビになっちゃったから、ここで監視してあげるって言ってるのよ」
実体を得て、少しだけ表情が豊かになったクロノがいた。
「いいじゃない、シュウ君! 五人……いえ、六人の新しい生活の始まりよ!」
フィオナが笑い、リィネが呆れ、ミーニャが甘え、エレインが顔を赤らめる。
数字のない、不確定で、最高に自由な「明日」へ向かって、彼らは歩き出した。




