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■エピローグ

■20XX年X月XX日(後日談)


●殺し屋

その後もお嬢様との主従関係は続いており、充実した日々を重ねている。


●図書館の少年

図書館を出たその後、家族や転校生と会えたかどうかは不明。

ただし、図書館を出た時、それまでには持ったこともない強い意志で時代を生きるという気持ちをみなぎらせていた。


●連続殺人犯の女

その後、男の作業を手伝い続けている。

快楽殺人の癖がおさまったのかどうかはわからないが、いまのところは平穏な日々を送っている。


●新興宗教の教祖

Cは死に、道端にごみと一緒に捨てられた。

が、いまの教祖がそのCに成り代わったDなのかどうかは誰にもわからない。


●詐欺師の男

バスに乗れたのかどうかは不明。

どこかで手品を披露して、誰かを楽しませているのかもしれない。


そして、月日は流れた……。


■20??年?月?日 日本・東京 ある日の午後


「#$%&!」


一人の老人が意味の分からない言葉を騒がしくわめき散らしながら走って行った。


いまは昼下がり。


老人は決まって昼を過ぎたあたりで、意味不明なセリフをわめきながら町中を走って回る。

だから、いまは大体昼過ぎくらいだろうとわかる。


「お昼ね」


老婆は言った。


「ああ」


と老人は返す。


「そろそろかしら」


その言葉に呼応して、椅子から腰を浮かし返事をする老人。


「そうだな。そろそろ行くとするか」


そうして家を出ると二人、車に乗り込んだ。

行く先は、孫娘の家。

産婆によると、今日の夕方あたりに出産するらしいと聞いていた。


そう、この二人は孝と梢である。


二人が再開してから、ずいぶんと時間が経った。

すでにカレンダーは不要となり、季節の変わり目だけを頼りとし、消滅した時間のかわりに、朝昼晩だけが残された。


そんな時代。


水道も電気も使えなくなり、ガソリンも底をついたら終わり。

文明の残骸を残した原始へと立ち返ったのだ。


当然、孝と梢も年をとった。

喧嘩したり、仲直りしたり、愛し合ったりして、結果5人の子宝に恵まれた。

ただし、うち長男は失踪、次女は自殺という悲しい出来事もあった。

やはり、同じ顔であることに耐えられなかったのだろうか。


理由はわからないが、生き残るものは残り、死ぬものは死ぬ。

それはこの、奇病の発症直後からなんら変わらないこととして、依然続いている。


しかし、とはいえそんな悲しいことばかりではない。

今日は待ちに待った長女の娘、すなわち孫娘が出産する日なのだ。


車を走らせること数十分。

町はずれにある、廃屋と化したマンションの最上階で孫娘たちは暮らしていた。

いくらでもある空き家に住まずに、わざわざ不便なマンションの最上階に暮らしているのだ。エレベーターも使えなくなった現在にも関わらず。


いかんせん、今を生きる人々は変わり者が多い。

状況がそうさせるのかどうかわからないが、まともな神経ではやっていけないのもまた、奇病以来変わらぬことの一つだ。


車を降りて階段を上り、部屋に着くと声をかけた。

すると、変わり者の孫娘の連れ合いが迎え入れてくれた。


「お上がりください。ちょうどいま生まれそうなところなんですよ」


「そうか。間に合ってよかった」


居間に入ると、家族の者たちが集まっていた。


「みんな元気にしていたか?」


挨拶を交わしあい、談笑する。


その時、産婆が会話に割って入ってきた。


「もう産まれるよ! 来るなら早く来な!」


言葉は汚いが、腕は確かな産婆が声をかけた。


「そうか、それじゃあ見に行こうか」


一同、産婆の後に続く。

入った部屋では孫娘がつらそうな顔をしていきんでいる。


「もう少しだよ! ここが我慢のしどろこだよ!」


乱暴な言葉遣いながら、気の優しい声をかける産婆。


「はあはあ……」


つらそうな表情の孫娘を見ていると、孝は気が気ではなくなってきた。

これまで何度も出産には立ち会ってきたが、その気持ちだけは変わることはない。


「そうれ! 出てきたよ! 男の子だね。あれ? この子……」


いぶかしがる産婆の声に、不安を覚えた孝。


「どうしました?」


「顔を見てごらん」


産婆に言われるままに生まれた赤ちゃんの顔を見る孝。

すると、すぐに産婆の言いたいことがわかった。


「わあ、この子、僕たちと違う!」


子供たちも気がついたようで、口々に話しあっている。

そう、産まれてきた子供には、我々にはないところにホクロがあったのだ。

顔は全く同じだが、この異変、といっていいのかはわからないが、その違いはみなに大きな衝撃を与えた。


このちょっとした、それでいて大きな変化。

どうとらえていいのかは今は分からない。

しかし、なんとなくもうこのままかと思っていた人類の未来に、明るいものを孝は感じだ。


まるで呪いが解けたかのように。


人類の未来は変わる。


いや、きっと変わるに違いない。


孝はそう思った。


【終わり】

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