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第8-6話:カチ、カチという音
触手は、裾ゴムの内側へ滑り込んだ。刃物では切れないロイヤルブルーの生地は、侵入を許したあとも形を崩さない。防壁は破れていない。ただ、防壁の内側が占領されている。正しい順番は、外からレオタード、その下に肌色のパンスト、さらにその奥に純白のフルバックとブルークリスタルだ。ネクサスが選んだのは、第3層と第2層のあいだだった。レオタードの裏とパンストの表。神聖な空間にはまだ届かない位置で、それでも視線も指も届かない場所。生地の下で、何かがもぞもぞと動く。太腿の付け根から下腹へ、円を描くように進むたびに、強着圧のレオタードが内側から押し上げられ、パンストの編み目がきしむ。市販品のフィルターは、魔力で強化された脚力は保てても、この摩擦までは止められない。(私の身体が……敵のプログラムに、書き換えられていく……っ!)先端のカメラが、パンスト越しに白い生地の中央へ吸いつく。ブルークリスタルは見えない。見えないまま、座標だけが正確に拾われる。「カチ、カチ……」陥没ではない。計測だ。最短ルートを探す打撃が、耻丘の上の一点へ繰り返し当たる。拒んでいるのは麗子だけだ。レオタードは圧力を逃がさず、そのまま身体へ渡す。彼女は煙幕を切って闇へ這った。結界はまだ閉じたまま、中だけが解析されていた。




