第2章第1話:不在の夜の背徳 〜レオタード越しに胸を弄り、絶頂に沈む女教師〜
地方都市Y市。
私が長期のプロジェクトのために東京へ出張してから、二週間が経過した頃だった。
神代麗子が暮らすマンションの一室は、私がいないことで、かつての冷たく静まり返った「逃げ場所」へと逆戻りしていたという。
私が隣にいてやった日々は、彼女にとって何よりの救いだったはずだ。ゾディアックによって彼女の身体に刻み込まれた、あの忌まわしい「翻訳された快感」の記憶。それを、私の温かい愛撫と全肯定の言葉が、確かに上書きしてやれていた。
けれど、私が不在となったこの二週間で、彼女の心の中には、再び薄暗い「孤独の種」が芽吹き始めていた。
夜、彼女は膝丈のスカートスーツを脱ぐ。
下腹部に密着している白いフルバックのパンティ。その前面には、いつもと変わらず「ブルークリスタル」が固定されている。
しかし、その輝きはどこか不安定だった。以前のような澄んだロイヤルブルーではなく、まるで彼女の不安を映し出すかのように、わずかに明滅を繰り返していたらしい。
(……私は、一人じゃない。健一がいてくれる)
そう自分に言い聞かせても、夜の静寂は容赦なく彼女を追い詰めた。
私がいない夜、ベッドに入っても、彼女はどうしてもあの記憶がフラッシュバックしてしまったのだという。
虚空に吊るされ、自重でレオタードが深く食い込んでいく屈辱。
ニップレスを剥がされ、敵の指先が胸の突起を執拗に弄んだあの感覚。
そして、自分の意思に反して腰を跳ねさせ、裏返ったような喘ぎ声を上げてしまった、あの惨めな絶頂。
(やめて……思い出してはだめ……っ)
彼女はベッドの上で身をよじった。
だが、思い出すまいとすればするほど、身体は正直に反応してしまう。
ブラジャーの奥で、胸の突起がジンジンと熱を持ち、硬く尖っていくのがわかる。そして、誰にも触れられていないはずの「神聖な空間」――純白のパンティの奥が、じんわりと湿り気を帯びていく。
(……健一、助けて……)
彼女は、クローゼットの奥から、セカンドバッグに隠してある「あの装束」を取り出した。
圧縮された、ロイヤルブルーのレオタード。
私がいない夜、彼女はこの窮屈な衣装に身を包まなければ、自分を保てなくなりつつあったのだ。
素肌の上に直接パンティを穿き、その上からパンストを引き上げる。
そして、冷たいレオタードに身体をねじ込み、強靭な裾ゴムを両手で掴んで、脚の付け根へと深く引き下げた。
パチンッ。
鋭い音とともに、ゴムが彼女の柔らかな肉に深く食い込む。
息が詰まるような着圧。この暴力的なまでの拘束感が、かつては彼女を「セイントレディ」という正義の戦士へと矯正してくれていた。
だが、今は違う。
この強烈な密着は、あの夜、ゾディアックの指の動きを快感に翻訳した「増幅回路」そのものだった。
「……あ……っ、く……」
彼女は鏡の前に立ち、自らの手でレオタードの胸元をなぞった。
生地越しに伝わる、尖りきった自分の突起の感触。
私の優しい手ではなく、ゾディアックの冷酷な指先を想像してしまっている自分がいる。
(汚らわしい……っ。私は、まだあの怪人の影に縛られているの……?)
自己嫌悪で涙が滲む。それでも、彼女は自らの指を止めることができなかった。
胸への執拗な刺激が、神経を伝って下腹部へと流れ落ちる。パンスト越しに、自分の「とろとろ」とした汚濁を自覚させられる屈辱。
(健一……ごめんなさい……。私、一人じゃ……だめみたい……)
私の不在という落差が、彼女が必死に蓋をしていた「弱さ」を再び引きずり出していた。
ブルークリスタルの光は、彼女の堕落を責めるように、不規則に明滅を続けていたという。




