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episode48  暴食Ⅰ

本作も残り3話となりました。

今までお読みいただいた方、ありがとうございます。


赤石、アオイ、山吹の戦いを最後まで見届けていただけると嬉しいです。

---from 赤石 side---


ぬう。


何がおこったのだ。


帝王を倒し、あとはリサ姉の理性たる碑石を回収するだけであったはずだ。

だが・・・


目の前のこいつは何だ?


時は少し遡る。


我は帝王を斬った。

異変が起きたのはその直後である。


帝王が洞窟に喰われたのだ。

その光景を見たとき洞窟全体が守護者と変じたかと正直、焦った。


異変は続く。


帝王を喰らった洞窟が喋ったのだ。


『ふはははは、美味美味。永らく手間暇をかけた甲斐があった。あった。』


「アンタ。誰?何者?」


我が情けなくも戸惑っている中、アオイがこの状況の変化から立ち直り、気丈にも誰何した。


『ん? 私か? 

・・・様々な呼ばれ方をした。

私はこの世の生物の最も重要な理の一つ・・・「食欲」を司る者。

この表現がわかりやすい? わかりやすいか?』


「食欲?」


『そうさ。私は食欲! 

生きる者が生きるために必要なエネルギーを得ることを司る者。

生きる者が生きるために必要な成長を司るもの。

この世の多々ある理の中で最も重要な理が具現化した者なり。』


食欲という存在だったから帝王を喰ったということか?

だが・・・


「その食欲様がなぜ急に出てきたのです?」

山吹が我が疑問に思ったことを口にする。


『ん? 出てきた? 出てきた??? 

違うな。私は食欲。

生物あるところ常にそこにいる者よ。

ああ、そうか。そうか。

私が人格をもって顕れたから、そなた達には急に出てきたと勘違いしたわけか。

そうか、そうか。』


ぬう。

我には奴が言っていることが半分も理解できぬ。

アオイや山吹は理解できているのであろうか?


「なら、質問を変えるわ? アンタはなぜ急に顕れたの? 帝王を食べたのはアンタ?」

アオイが警戒を解かずに尋ねる。

その警戒は最もである。

相手がどのようなモンスターか知らぬが、その能力次第では我等も喰われる。


『ん? そなたは頭がいいな。いいな。

頭がいい奴は好きだ。旨いからな。

その頭の良さに敬意を表して質問に答えよう。

帝王を食べたのは食欲たる私だ。

そして私が人格をもったのは帝王を食べたからだ。

旨い。 旨かった。

永年待った甲斐があったわ。至高の味であった。』


「帝王を食べると人格を持てるのですか? そこが理解できません。」

山吹が首をひねる。


『ん? そうか。そうか。 

今の私は至高の味を楽しみ機嫌がよい。

質問に答えよう。

帝王がこのような至高の味になったのはそなた等のお陰だ。

功労者には報いなければな。

繰り返すが私は世の理の一つ食欲。 

この私。食欲の理には仮に神でも逆らえぬ。 

神も食わねば飢える。その末に餓死もしよう。』


『ただ私は理。本能のごときもの、対極にある理性ともいうべき人格は本来持てぬ。

しかし、人格を持たねば考えることもできぬ。

今のように話することもできぬ。

だから私は嬉しいのだ。

このように考えて話ができる今を。ふはははははは。』


「今のアンタには人格もある。話もできる。思考もある。本来、そのようなことが出来ないアンタができるようになった何かがあるということ?」


アオイが話の先を促す。

相手が機嫌よく饒舌なうちに引き出せる情報は引き出してしまえという意図であろう。

対する「食欲」とやらはそこまで考えているようには見えぬ。

思うが儘に話を垂れ流している。


『ふははははは。私はある時、気づいたのだ。

理性を得たら考えることが出来る。

話しすることもできる。

これがどれほど喜ばしいことか!


私はある時、気づいたのだ。

あるものを食べた時に理性を得られたことに。』


あるものを食べた? だと。

我はその発言に得も知れぬ怖気を感じた。


『食べた時はよかった。よかった。しかし、しばらくすると元に戻った。それでもたまに食事後に理性の光が灯るときがあった。』


『私は、考えた。考えた。理性の光を手に入れた時にしか考えることは私には許させなかった。しかし、しかし諦めずに考えた。そして理解した、理性有るものを食べた時、私は理性を得るのだと。』


理性あるもの

まさに人間のことではないか。

こいつは人食いモンスターか


我は臨戦態勢をとる。


『最初は失敗した。理に殉じ、理性あるものを喰った。喰った。

思考は。言葉は。理性は。喰うだけ得ることができた。

うまかった。うまかった。

特に神と呼ばれる理性有るものは!

しかし、失敗した。失敗した。

理性有るものは数が少ない。

有限だとは知らなかった。

食べたらなくなってしまった。ああああ、あんなにおいしいのに。』


洞窟全体が振動する。心情を表すかのように。


『私は元に戻った。戻った。

知性も何もない食欲という世の理に。

それからいくつの月日が流れたかわからない。

また、理性を得るときがあった。そこで私は再び覚醒した。

見ると一度はいなくなった理性有るものが再びいた。

私は喜んだ。喜んだ。』


これは・・・一度、人を滅ぼしたと解してよいのだろうか?


『私は、私は、この好機を逃してはならぬと考えた。考えた。

ただ、ただ、食べたのではなくなってしまう。

無くならないために、永久に食べるためにどうしたらよいか?

考えた。考えた。

そこで私は気が付いた。

理性有るものがやっていたことを真似るところから初めてみようと。』


嫌な予感がする。


『牧場という。生簀という。

理性有るものがそのようにして食料を確保しているのを知っていた。

私は真似た。

理性有るものを私の体内で飼うことにした。』


むう。

奴の

体内で

飼う?

理性有るものを?


我は思い当たる事がある。

この我がいる魔石の洞窟が奴の

「食欲の理」とかいう奴の体内であるとしたら、

帝国も地底国家群も

・・・奴の牧場かっ!


そこで必死に生きた者たちも

ヘドリアも

ライオンマンも

メンドーサも

タイタンも

帝王も


そしてアオイも


奴の家畜だったと言いたいのかっ!


この理不尽!

我の中に怒りが充満する。


我の拳に別な手が添えられる。

我は横を見る。


アオイの姿がそこにあった。

我の拳に触れるアオイの手が震えていた。


ただ、眼が我に訴えていた。

何もするなと。


つまりはこのまま黙って喋らせておけという判断か。


『私は真似ることで、理性有るものを永続的に食べる事に成功した! 

素晴らしい。知恵というモノは 理性というモノは素晴らしきことかな。 

やがて私は同じ理性有るものでも味が違う事に気づいた。

どうせ食べるならより美味しいものを食べたいではないか! 

私は再び真似た! 

理性有るものは更なる美食のために調理とやらをしているではないか。

それを真似た!』


再び、嫌な予感がする。


『試した! 試した! 

喰った! 喰った! 

ふはははははは。うまかった。うまかった。

試した結果、わかったのは危機が旨くなるスパイスであるということ。

危機が知恵を使わせる! 

理性を試される! 

それを乗り越えた者の美味なる事よ!』


ぬう。

理屈はわかる。


考えなければ生き残れぬ状況となれば、生き残るために知恵知識を総動員することになろう。「食欲の理」とやらが理性を欲し、理性を旨い感じるのであれば、その危機を乗り越えた叡智はさぞ美味なのであろう。


考えたくもないが

『私は調理のため、理性ある者に試練を与えた。

モンスターもそうだ!

ドラゴンもそうだ!

守護者もそうだ!

すべては試練を乗り越えた後の理性ある者を美味しくするため。

おう、そこの娘!』


食欲の理とやらが突如、アオイを指名する。


嫌な予感がする。


「・・・何?」


『私は今、美味なるものを食べてすこぶる機嫌がいい。

ネタ晴らしをしよう! 

娘、そなたは地上で映画を見たであろう!

そこで自らが滅ぶ未来を見たであろう。』


映画?何のことだ。


「! なぜ、それを。」

アオイが震える声で答える。


『そなたが滅ぶ未来を見せたのが私だからだ!』


「! あの映画を見せたのはお前か!」


『そうだ。そうだ。娘! そなたは運命を決める重要な存在だった。』


「どういう意味?」


『私は理性有る者に試練を与え続けた。

食欲のために。

理性有るものを美味しく食べるために。

その試練を与え続ける中で気づいた。

運命の流れを変えるカタリストの存在に。』


カタリスト?


『その存在の行動次第で 分岐次第で運命が変わる。変わる。

私は世の理の一つ。

僅かながら運命の流れを覗き見ることができる。 

平行世界を覗くことができる。

カタリストの行動次第で未来が変わることを知った。知った。』


『そこで考えた。考えた。

私の望む運命にしてもらうためにカタリストに行動してもらえばよい。

そのことに私は気が付いた。

その方がおいしいものを食べることができるということに気づいた。』


『そこで・・・運命の子 カタリストを私の望む運命になるように動いてもらうことにした。娘。そなたのように。』


「は? 何言ってるの私はアンタの言う通りに動いたことはないな。」


『ふはははは。娘。気づいていないだけだ。あの映画を見ただろう。

帝国四天王のままだと死ぬ運命にあるという映画を。

それを見て、帝国から離脱しただろう。

それこそが私が望む運命!』


『おかげで帝王一強で安定しつつあった地底世界が乱れた。

乱れた知恵を必要とする試練の場になった。

結果、私は最高の理性を持つ帝王を食べることができた。

旨かった。美味かった。

娘。そなたのお陰だ。』


「なっ。そんなこと言われて私が喜ぶとでもおもってるの。」


『そんなことは知らん。私は喜んでいる。それに。娘。私は結果的にそなたの命を救った。』


「どういうこと?」


『娘。そなたが見た映画は平行世界のそなた。帝国を裏切らなかったそなた。

裏切ってよかったではないか! 

そなたは死の運命から生き延び、私は帝王を食べることができた。

更に!』


「!」

この話にアオイが固まった。

こやつの言う事が正しいのであればアオイは帝国を裏切らなければ死んでいたことになる。

思考停止するのもわかる。


『理性ある者の多い地上への接点もできた。広がった! 

これからは地上の理性ある者食べ放題だー。』


なっ。

我は絶句する。

こんな化け物野放しにできぬ。


『地上への接点を得た今、牧場は必要なくなった。

我慢していたがもう、食べること我慢はいらない。

さあ全て食べるぞー。』


「ちょ、ちょっと待って!」

アオイが焦った声をあげる。

そうであろう。

今の宣言は地底国家群に住む人々を全て喰らうということである。

その中にはアオイの愛する青の国の人々。父や母もいるのである。

親が喰われると知って平静ではいられぬ。


『ん? ふははははは娘。心配するな。

そなたには恩がある。帝王を食べることができ、理性有るものが多数いる楽園ともいうべき地上への接点も広がり、食べることができるようになった。

そなたのお陰だ。そなたは喰わないでおこう。

その二人もな。

そなたら三人のお陰で私は食欲全開で美味しいものを食べることができる! 

私は恩は守るのだ。ふはははは!』


ぬう。

話がかみ合わぬ。


『ん?んんん? なんだ。なんだ。こちらに美味しそうな理性がいくつもある気配がするぞ。』


その言葉を残し、急速に我らのいる場所から食欲の理とやらの圧力が急激に消える。


「赤石クン。まずいです。」

山吹が我に駆け寄り肩をつかむ。


我は当惑して眉を顰める。

山吹が何に焦っているか見当つかぬ。


「僕たちはリサ教授の碑石を求めてここにきました。つまりこの近くに碑石があるはずです。」


うむ。その通りである。

我らはそれを求めてきたのだ。

あるのが当然である。

何を焦っているのか?


「碑石は奪われたリサ教授の理性です。そしてあの敵は理性を好んで食べるようです。このままだとリサ教授の理性が喰われてしまいます。」


なんと!

何故それを早く言わぬ。


我は疲労する体に鞭打ち駆けた!



我は駆ける。

やがて一つの部屋にたどり着いた。


そこは不思議な部屋であった。


祭壇と表現したらよいか? あるいは書庫か

そこに複数の石が大層に並べられていた。


我は直感する。


あれが碑石に違いない。

そしてあの碑石! あれがリサ姉の碑石 失われた理性である!


我が碑石にむかい駆けだそうとしたとき、洞窟が鳴動した。


『ん? なぜ、そなたらがここにいる』


「知れたこと。我が目的はここである。」

我は駆ける。

奴に我がリサ姉の理性を奪われるわけにはいかぬ。


先ほどの帝王との戦いで我は通常の赤い重戦士ではなく、直剣をもつ死神に変身した。

その変身は非常に燃費が悪く、一振りで動けなくなるが、この場面、そうは言ってられぬ。


うむ。 まだ足は動く。

動く!

ここまできたのだ。

リサ姉の理性を取り戻し、そしてリサ姉を救出し、元の生活に戻るのだ。

そのために動けいぃ。我が体よっ!


『ん? そたらの狙いもこれであったか。ふうむ。ふむ。そなたらは私の食欲を満たす功労者。恩人。その願いは尊重したい。』


我は安堵する。

見逃してくれるか・・・。


『しかーし。 私は食欲の理! このような高級食材を目の前にして食べないという選択は理に反するっ!』


奴の言葉に合わせて洞窟全体がまるで消化器官のように蠢く。

ぬう。先ほどの恩人という言葉が意味をなさぬではないか。

何と理不尽なことかっ!



碑石の収まっている棚が洞窟の床に沈んでいゆく。

棚ごと食べる気か!


ぬう。

動けっ!

我が脚。我が体よ。

ここでリサ姉の碑石を喰われてしまえば後悔しきれぬ。


「スキーズの出番です!」

『イエス。マスター!』

山吹が空飛ぶ船スキーズをこの場に呼び出す。


ぬう。

呼び出す場所が上手い!

さすが山吹。


ちょうど碑石が並べている棚の下にスキーズを呼び出した。

棚は破壊されるも、碑石がスキーズの甲板に転がる。


ありがたい!

山吹の機転で碑石は回収できた。

後は脱出するだけである。

「おいで! ムニちゃん。フギフギ!」

アオイが機械仕掛けの鳥を2体召喚。


「ぬおっ!」

思わず声が出る。

一体はアオイ自体が乗り、もう一体が我を回収した


見るとアオイも山吹も燃費の悪い変身形態ではなく、通常の変身形態に戻っていた。

なるほど。

変身形態の使い分けが重要であるな。

この二人は機転が利く。

我はまだまだであるな。


我も元の変身形態に戻る。


「わわわわっ!ちょっ、ちょっと待てください。」

見ると碑石回収のために地上付近にいた山吹が召喚した空飛ぶ船スキーズに守護者たちが群がっている。


一人、下にに残った山吹にも守護者が殺到していた。

守護者は食欲の理の先兵ということか!


ぬう。まずい。このままでは山吹も守護者に食われてしまう。

「我は地上に戻る。山吹の近くに下してもらえぬか?」

我を乗せて空を飛ぶ機械仕掛けの鳥にお願いする。


そこに山吹が待ったをかける。

「まっ。待ってください。赤石クンは帝王との戦闘で疲労困憊です。アオイちゃんも同様でしょう。下手に降りると脱出のが難しくなります。ここは僕に任せてください。少しは先輩らしいところ見せたいですしね! スキル『錬金』!」

山吹がスキルを発動させると多数のバイクが出現する。

「行ってください! 突撃!」


山吹が出現したバイク軍団をスキーズにとりついている守護者達に突撃させる。

いつものようにレーヴァティンでつくった人を模した炎をバイクに載せないのは、魔法の類は守護者に効かぬどころか、喰われてエネルギーにされてしまうからであろう。


「まずい。焼け石に水。」

アオイが苦い顔をし、魔法を練る。

「melta diki!」

「Járnsverð !」


うむ。アオイが得意とするマジックミサイルではない。

守護者どもに通常の魔法では喰われてしまうからであろう。

溶岩の海を土魔法と火魔法でつくり。

その溶岩の海から投擲武器のようなものを射出している。

なるほど、あの溶岩の海は鍛冶場の炉の役目を果たしているのであろう。

その炉の中で武器を生成し、魔法で射出する。

投擲武器自体は魔法ではないから守護者にくわれることはない。


見事な工夫である。


だが、見た感じ、手間の割に威力は鉛玉程度でしかなく、アオイが好んで使っているマジックミサイルの威力はない。


それでも守護者に喰われぬ攻撃という意味では効果を成しているが、いつもの威力がないためか押されている。


・・・・

うむ。アオイのいう通り戦況は悪い。

守護者の出現速度と山吹のバイクの出現速度及びバイクの突撃で倒す速度が釣り合っていない。アオイの投擲武器射出もそれほど効果実績をあげれていないようだ。

このままでは数で押される。


聡明な山吹やアオイのことである。

そのことは我よりも理解しているであろう。


しかし手がないのだ。


守護者は生物と魔力を食らう。


我らを幾度も有利に導いた不可思議な力である魔法は使えぬし、スキルも魔法に準じたものは使えぬ。


かろうじて石や金属などの無機質は食わぬということは知っているのでそれで攻撃するしかない。山吹が行っているバイクアタックのように。アオイの工夫のように。

守護者の厄介なのは攻め手が限られることである。


ふーっ。


我は深呼吸する。


これはリサ姉を救出するための作戦である。

冷たい言い方になるかもしれぬが我とリサ姉の問題である。


山吹やアオイが命を賭ける必要はない。


気合を入れろ。


さきほど帝王を倒したときにエネルギーはかなり消費している。


だからどうした。


確かに疲労している。


だからどうした。


それはリサ姉の理性を諦める理由にはならぬ。


アオイや山吹を死地に追いやる理由にはならぬ。


リサ姉を救うのはほかの誰でもない!

我である!


「ぬううううううん! 来るがよい。我が眷属 シアルフ!」

我の足元に巨大な魔法陣が展開される。

その魔法陣からせりあげるのは巨大な真紅のフルアーマー。背にも2基の推進器。両肩には山羊頭を意匠した肩当をもつ巨大戦士。


ふと、我の意識が一瞬途絶える。


我はこの巨大な真紅のフルアーマー。つまり我が眷属 シアルフと同化を果たした。


「ぬううううん。ゆくぞぉ!」

我は空飛ぶ船スキーズに群がる守護者を蹴飛ばし、踏みつぶした。

何しろサイズが違う。


さらにこの深紅の巨大な鎧は金属である。喰われることもない。


「山吹。アオイ。今の内に逃げよ!」

我は叫ぶ。


山吹の操るスキーズの甲板にリサ姉の碑石がある。

このままスキーズに逃げ切ってもらわねばならぬ。


『そなたら! 私は食欲の理! そなたらとはいえ私の食事の邪魔は許さぬ!』

洞窟が鳴動する。


「我もリサ姉の碑石を食われるのは看過できぬ。許さぬなら。守護者をけしかけてないでかかってくるがよい。一対一で勝負をつけよう。」


『ん? んんん? そなたらいくつか勘違いしておるようだな。』


「勘違いだと?」


『一つ、守護者はけしかけているのではない。私の体に侵入し、私の体を傷つけるものを排除しようと動いているだけだ。』


「なんだと?」


『んー。なんと言ったかな? ああ、そうそう。そなたらの体にも白血球という体を害するものを捕食する機能があったはず。それと同じよ。そなたらは白血球に指示できるのか? できまい。私も同じだ。』


なんと、守護者は食欲の理の白血球だと。うむ、我らは食欲の理を害するばい菌か。


『二つ、そなたらは私の体内にいる。体内にいるものとどのように一対一の戦いをするというのだ。体内にいるのであれば、ただ、ただ消化するのみ。』


ぬう。この魔石の洞窟は奴の体内か。

合点がいくこともある。


魔石の洞窟を破壊していたが守護者が出るところと出ないところがあった。

守護者も洞窟と一緒に破壊したからと考えたが、どうやら奴の体内とそうでない部分があるらしい。


いずれにせよ。


そういうことであればやることは一つである。


「ぬうううううん!」


我は地道に守護者を握りつぶし。踏みつけ続けた。


何? 気合の割にやっていることが地道?

地道に行うことこそ重要である。


それに下手に洞窟を壊すと、無限に守護者が湧き出るであろう。

我らの目的は理を破壊することではない。

リサ姉を救うことである。


リサ姉の碑石をもって脱出できればそれでよい。


既に空飛ぶ船スキーズから守護者どもはすべて剥がした。

スキーズは守護者の脅威からの脱出に成功しておる。


後は我が殿を務めるのみ。


気のゆるみか

一瞬、目の前が回る。

無理をしている自覚はある。

だが、今無理せずして、いつするというのだ。


『ふはははははっ。愚かなことを。言ったはずだ。ここは私の体内だと。帝王を食べることができた礼に見逃そうと思ったが、その美味しそうな碑石を持っていくなら話は別よな。このまま食らってくれる。』


食欲の理がそういうと洞窟が急に縮小されてきた。

ぬう。

洞窟がしぼむ。

アオイと山吹の悲鳴が聞こえる。

我らごと。食べる気か

ここまで、ここまできて何と理不尽なことかーつ!



・・・・・・・・・

・・・・・・・・・

・・・・・・・・・

・・・・・・・・・




「おーい。」

ぬ。何だ?


「おーい。」

我を呼ぶことが聞こえる。


うううむ。


我はどうなった?


そうである。

我はリサ姉の理性たる碑石を求め帝王を倒した。


その後に食欲の理とかいう奴に喰われて・・・

ぬう。ならばここにいる我は一体?


「おい!」

頭に痛撃を受ける。


「ぬおっ!」

我は跳ね起きる。


見ると目の前に姉のリサ姉の姿があった。

我は文字通り思考停止する。


これは夢か?


「おい! まだ寝てるのか? もう一度、蹴ってやろうか?」

リサ姉がローキックの体制で構える。


リサ姉は研究のためとはいえモンスター蔓延る魔石の洞窟内に研究所を設ける発想を持つ。

胆力もそうだが、腕に覚えがあるからでもある。

具体的に言えば総合格闘も高校時代にやっていた。


そのリサ姉に蹴られてはたまらない。

折角目覚めたのに、また失神KOしては・・・理不尽極まる。


我は跳ね起きた。

【次回予告】

”食欲”の理が目覚める。”理性”を狙い暴食を開始する。

”理性”あるものはすべて食べ尽くされてしまうのか?


そして赤石とリサの運命は?


次週、episode49 暴食Ⅱ

毎週 日曜日 9時30分 更新

よろしくお願いします


【お知らせ】

別な作品の紹介です。よろしければ見ていただけると嬉しいです

■剣と魔法の義経記 https://ncode.syosetu.com/n1604mi/

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