episode42 怠惰
---from 宰相ユミル side---
「何か言い残すことはありますか? ブルーフェイス殿。」
私は燃え上がる怒気を抑えて目の前で蹲るブルーフェイスに問う。
まったく、とんでもないことをしてくれました。
敵には主力であるレッド殿が不在。
その好機を逃さず帝都奪還のため戦力を進めました。
敵もさすがです。四天王デビルフィッシュ殿がリタイヤしました。
が、我が帝王様が授けてくださいました神器ドラウプニルを持つ戦士二人が健在と勝てる戦いでした。
その勝てる戦いで負けたのが、このブルーフェイス殿の裏切りです。
いや、その表現は正確ではありませんな。
実際にはブルーフェイス殿が雇った冒険者の裏切りですか。
しかも動機が下らなすぎますな。
お宝を得るためだとか。
ふう。
ブルーフェイス殿も青の国を裏切った人物。
裏切った人物の下は裏切者になるのでしょうか?
上司の背中を見るともいいますからな。
はあ
いやはや、どうして勝てる戦いを負けてくるのか。
その呆れ。怒り。そして帝王様に対する申し訳なさが私の中で渦巻いて、私は感情的になっているようですな。
これは宰相としてはいけませぬな。
常に天秤のごとく公平であらねば
「まず一言、私は帝王様のために動いております。この度の戦いでもゴーレム砲撃で帝都への進軍がままならない状態での対策を献策。敵将でありレンジャーワンのレッド不在時に最も危険であろうマイスイートシスター・・・コホン。元四天王アオイ殿を足止めしております。二心があるはずはございませぬ。すべて勝利のためにと作戦立案しておりますた。今回の裏切りは偏にブルータス達の暴走によるものでございます。」
ふうむ。
そういわれると確かにブルーフェイス殿は帝国のために動いてはおりましたなぁ。
それにしても今回の件は図太いブルーフェイス殿もだいぶ恐縮しておる様子。
いつもの飄々とした、人を喰った態度が見当たりませぬなぁ。
ふぅむ。この態度を見せられては怒りも少しは収まるというもの。
「なるほど、此度の敗因はこのもの達暴走によるものとな。」
私はそういうとブルーフェイス殿の前にあるものを投げ出します。
ブルーフェイス殿は悲鳴をあげて後ずさりました。
ふむ、効果あったようですな。
冒険者の生き残りマンタ殿・・・であったものの肉塊です。
文字通り魔術でボール状になっていただいております。
ボール状になったときに骨や肉や皮が破壊され流血が発生し文字通り血だるま状態であります。いえ死んではいませんよ。ほら、うめき声が聞こえるでしょう?
帝国も無慈悲ではないのです。あくまで裏切った罰ですからな。殺すことはありませぬ。
ただ肉塊となって永遠の苦しみを味わってもらうだけですな。
「ブルーフェイス殿。罰は必要です。そうですな。」
私の問いにブルーフェイス殿はコクコクと頷いております。
「直接、盗みを働いたき、我らを敗北させたものの罰は済みました。しかし、組織には監督責任というものがありのはご存じでしょう?」
ブルーフェイス殿の青い顔がさらに青くなっております。
ふむ、その顔を見ると少しは溜飲がさがるものです。
「このコソドロどもを使っていたのはブルーフェイス殿でしたな。」
「っ・・・わ、私は何も聞いていないっ!彼らの独断ですよ。監督責任も何もないでしょうっ!」
「そうはいきませんな。それだけこの度の大敗は重いのです。それはご理解いただけてますかな?」
私は脅しの意味を込めて肉塊となったマンタ殿を拾い上げるとポンポンと手の上でもてあそびます。血が飛び散りますが、脅しという意味では効果的でしょう。
効果が効きすぎましたかな?
ブルーフェイス殿は悲鳴を上げるだけですな。
まあ、あまり脅しすぎて壊れてもらっても困りますが。
それだけ私の怒りが大きいということは理解していただかないといけませぬ。
「そこまでだよ宰相。あまりいじめるものじゃないよ。」
帝王様の声が響きます。
私は不満ではありましたが他ならぬ帝王様の声です。
引き下がりましょう。
「ブルーフェイス。」
帝王様の声が響きます。
その声にブルーフェイス殿は顔をあげます。震えているのは気のせいだけではないでしょうな。
「助けておくれ。」
ブルーフェイスが目を開いております。帝王様の声に驚いた、キョトンとした顔をしておりますな。
「先の戦いの犠牲は大きくてね。デビルフィッシュ、白井は先の戦闘の負傷ですぐの戦線復帰はむずかしいだろう。エルフの剣士ルールはライトに倒された。戦力的に低下しているんだ。だからね。助けておくれ。」
帝王様はブルーフェイスに優しくお願いされました。
「も、もちろんです。私の智謀にてこの状況を打破してみせましょう。」
ブルーフェイスは慌てて宣誓する。
これで命が助かったとでも思ってるのでしょうか?
その態度。
少々、気に食わないので釘は刺しておきましょうか。
「帝王様の寛大な御心に感謝することですな。失敗は許されませぬぞ。」
そう言って肉塊となったマンタをブルーフェイス殿の目の前に放り投げる。
「も、もちろんです!」
「では、帝都奪還期待してますぞ。」
私は恐縮するブルーフェイス殿に念を押した。
・・・・・
・・・・・
・・・・・
「フフっ。宰相も意地が悪い。」
ブルーフェイス殿が去ったあと、帝王様がいと面白そうに笑みをこぼされました。
それに対して私は仏頂面で返します。
「帝王様。今回の敗戦は私も腹が煮えくりかえっております。まったく、勝てる戦でしたのに。あのレンジャーワンを倒せる好機でしたのに。」
「確かにね。僕も少し残念だよ。宰相。 レンジャーワンが倒れたら、レンジャーワンのドラウプニルを回収し、諸兄とまたお会いすることができたのに。」
「おっしゃる通りです。ですから、その予定を壊した彼らによき感情は持てそうもありませぬな。」
「フフっ。そこまで感情を表に出した宰相は初めて見たよ。それが今回の唯一の成果かな。」
「お戯れを。」
「それよりブルーフェイスはこれからどうするだろうね? さんざん、宰相に脅かされていたからね。」
「そうですな。逃亡するということも考えられますなぁ。」
「その可能性を知っていて。あれだけ脅かしたの? 宰相。それはひどくない?」
「あの男がいてもいなくても影響はないでしょう。むしろ裏切りを気にしなくてはならないという点では。ただただ邪魔ですな。」
「ひどいなぁ。でも僕の意見は違うんだよ。宰相。」
「ほう、あの口だけで何もしない。脳内の理想だけを語る。怠け者の裏切り者が戦力になると。」
「宰相。本当にブルーフェイスが嫌いなんだね・・・。まあ、いいよ。彼は口だけで実行力の乏しい怠け者だけど、一つだけ成したことがあるんだ。」
「青の国ですな。」
「そう、青の国を裏切り、青の国とアオイという四天王と成れる最高の戦力を帝国にもたらした。僕はそのことを忘れてはないんだよ。」
「ほう、確かにそうでしたな。」
「今回、宰相がブルーフェイスの尻をこれでもかと叩いたからね。あの口だけでなかなか動かない怠け者もさすがに動くんじゃないかと思ってね。」
「ほう、帝王様はずいぶん彼の男を買っているようですな。」
「そうだね。希望的なものかもしれないけど、相性的にどうもアオイにはいいらしい。これでアオイを倒すまではいかなくても戦闘不能にしてくれたら、レンジャーワンは崩壊したも同然だからね。」
「ふむ、そうですな。現在、倒れているレッド。そしてアオイと倒れたならありがたい話ですな。」
「だからね。宰相、彼には期待したいんだよ。希望的なものなのかもしれないけどね。」
---from 山吹 side---
「すごいです。興味深いです。」
僕は赤石クンの話を聞き興奮しました。
話の内容は赤石クン復活の事情です
赤石クンは無茶をしました。
ヴァン・アースというレッド・ドラゴンすら一撃で倒す裏ワザがあります。
それは赤石クンの眷属シアルフ。アオイちゃんの眷属である5体の巨大な機械獣。
そして僕の眷属である空飛ぶ船シアルフ
このこれらの権能を無理やり一つの“力”とし、その“力”の奔流をそのまま相手にぶつけるという荒業です。
正規の方法ではないので、このヴァン・アース状態は長く維持できず、せいぜい一撃を入れる程度の時間しか持たないうえに、その後の戦闘が不能になるほどのエネルギーを消費します。
また、赤石クンにはもう一つの戦闘方法があります。
それがタイプeinherjar
赤石クンが言うには、威力がある分、制御が難しく。また消耗が激しく一刀を振り下ろすしかできないそうです。
どちらも一撃で消耗する良い意味でも悪い意味でも一撃必殺の技。
それを立て続けに連続して使用した赤石クンは本当の意味で限界突破し倒れました。
問題はその後です。
ドラウプニルの権能を限界を突破して倒れた赤石クン。
この症例は世界で一人だけです。
つまり倒れた赤石クンを治療する方法が存在しません。
ところがわずかな日数で復活してきました。
僕が興味をひいたのがその復活の理由です。
リサ教授が関係しているというのです。
そして僕が注目したのはその理由です。
守護者に囚われると「願い」に対して奇跡のような超常の権能を使用できる。
というのです。
それでリサ教授は赤石クンにコンタクトをとり、
それでリサ教授は赤石クンを復活させたというのです。
これは魔石研究者として、巨大な三つの魔石から三柱の神様を復活させドラウプニルをもらった時、以来の大発見です。
研究者魂がうずきます。
ちょっと・・・好奇心から、「自分から守護者に囚われてみようかな?」と思ったくらいです。
それにしてもリサ教授は働き者です。
守護者に囚われていても研究しているなんて。
根っからの研究者ですね。
この発見を使ってリサ教授救出に使えそうな予感がしてます。
最近、レンジャーワンのお仕事が忙しくて、研究者としてのお仕事を怠けてましたが、やってみる価値はありそうです。
---from ブルーフェイス side---
なんで、こんなことになったのでしょうか?
私は青の国の王子です。
将来、王となることや約束された者です。
余人とは違うのですよ。
それが今や・・・肉塊になるかならないかと瀬戸際です。
あの肉塊となったマンタ。
あれで生きているんですから悍ましい。
マンタ達もマンタ達です。
触れてはならないものと触れていいものの区別もつかないのでしょうか?
これだから愚民は困るのです。
知恵を働かせることをしないで強欲な事ばかり考えています。
それにしても不思議です。
私の何がよろしくなかったのでしょうか?
帝国が青の国へ攻めてきたとき、勝敗の行方を観察し、勝敗の天秤が帝国に勝ちに傾いたとき。私は帝国につきました。
あのまま徹底抗戦は愚の骨頂です。
高貴な青の国の王家の血は絶やされてしまったでしょう。
私が帝国についたことにより高貴な王家の血は残りました。
マイスイートシスターが生き残り四天王と言う要職についたのも私が帝国に利したからでしょう。そうにきまってます。それでなければ帝国を苦しめ抗戦したマイスイートシスターが帝国に重用される理由がありませんからね。
私が帝国に帰順することを示したことで労することなく、帝国は青の国を手に入れ、青の国は王家の血を絶やさずにすんでいます。
それなのになぜ、青の国は感謝することもなく、帝国は私を「祖国を裏切ったもの」として軟禁しました。
愚民の行う事は理解に苦しみます。
無駄な動きをして無駄に争い無駄に傷付けあうよりも、何もせずに利を得たほうがよいではありませんか? 実際に労せず利をえているではありませんか。
それが理解できないのでしょうか?
困ったものです。
まあ、それでも帝都での軟禁生活も悪くはありませんでしたよ。
別に牢屋にいたわけではありませんからね。
普通に衣食住も満たされてましたし、のんびりと英気は養わせていただきましたよ。
フルに働いていると私の至高の頭脳も疲れてしまいますしね。この機会に怠けさせていただきましょう。
当時は不満でしたが今、思うと軟禁というのも名目ではないかとも思わなくもない悪くない待遇でしたね。
帝国で軟禁生活という体で英気を養っていたところ転機が訪れました。
帝国四天王の一人 タイタンがレジスタンスと一緒に反乱を起こしたのです。
後で知った話ですがレジスタンスというのは、帝国によって滅ぼされた王族や貴族の生き残りなど帝国に不満をもった連中が集まっている集団ということです。
帝王様や宰相ユミル様が放置していたのは、そのレジスタンスという集団。
ただの愚痴の言い合い集団だったというのが理由のようです。
集まって会議と称して不平不満を言い合いを繰り返す。
その集団は帝王様や宰相ユミル様から見ると脅威とみなされなかったのでしょうね。
「あの怠け者集団ですか? 不満を言う暇がありましたら実行してほしいものですな。あれでは危険団体にすら値しませんな。」と宰相ユミル様が言い捨てたと聞いてます。
よほど不興だったのでしょう。
そのレジスタンス集団。
愚痴を言い合うだけの不毛な集団だったようですが、腐っても元王侯貴族だったようです。
無駄に行政能力は高かったようで、タイタンと手を組むとその無駄に高い行政能力を行使し在野の戦士になりうる人材。つまり冒険者達を集めタイタンと一緒に反乱を起こしたようです。
もっとも、その冒険者達はどちらかというとタイタンと一緒に帝国とたたかうというよりは私のような帝国に幽閉されている王侯貴族を開放するといった依頼を受けていたようであまりタイタンの役にたったということでもなかったようですが。
まあ、レジスタンスを構成している王侯貴族からするとタイタンよりも幽閉されている王侯貴族の方が大事ということでしょう。
その気持ちはわかります。
貴重な高貴な血を絶やすというのは世の損失でしかなりません。
その流れでA級冒険者のブルータス達と出会いました。彼らもまたレジスタンスから幽閉されている王侯貴族を開放するという依頼を受けて私のところにきたのです。
私は内心喜びました。
私のところにきた冒険者がA級だったからです。
それも相当腕のよい冒険者のようです。
私くらいになると冒険者の腕の良し悪しは装備でわかります。
見栄えのよい装備を装着しているものはそこまでの実力者ではないと断じていいでしょう。
見栄えが良い装備をしているという事は店売りの装備しか入手できないということですから。
この地底には店では入手することができない装備品があります。
その装備品は入手困難ではありますが、強力な効果を持っています。
真に実力のある冒険者というのは、それらの装備品を使用しているものでしょう。
そしてそれらの店売りでは手に入らない強力な装備品のデザインはバラバラです。
つまり見栄えは悪く無いります。むしろファッションセンス皆無の装備となるでしょう。
つまり、ファッションセンス皆無のちぐはぐな装備をしている冒険者が腕の良い冒険者ということになります。
そういう意味ではブルータス達は正に私の見立てでは腕のよい冒険者でした。
彼らを手元に置いておくことで私自身は特に動かずとも有利に進むでしょう。
「私は青の国の王子。青の国の真の所有者です。いつまでも冒険者家業は続けられないでしょう。どうです? 青の国の宰相貴族になりませんか? 」
私はブルータス達に提案しました。
彼らもまたハードな冒険者稼業は体が動く若い内にしかやれないと考え、冒険者引退後のことを考えていたようです。
私の提案は見事に彼らの望みとマッチしました。
私はブルータス達と手を組み、タイタン反乱の戦況を観戦。
予知魔法によりタイタン有利と見るとすかさずタイタン軍へ味方し、タイタンが帝都占拠に成功後、タイタンから将として優遇されました。
私は他の有象無象のレジスタンスのメンバーとは違うということを認めさせることに成功したという事です。
私の頭脳なら当然でしょう。
このままタイタンを唆し、帝国が占拠している青の国を攻め落とし奪還したなら、私は晴れて青の国の救国の英雄です。
その時こそ真に私は王となるでしょう。
ところがここで想定外のことがおこりました。
マイスイートハニーが先に青の国を奪還したというのです。
これは全くの予想外でした。
私の予知魔法でも見えなかった未来です。
おかげでマイスイートシスターが救国の英雄となってしまいました。
それどころか川の国、石の国、地の国・・・次々と帝国に占拠された国々を開放していくではありませんか。
これではマイスイートシスターが英雄です。
それは本来は私が得るはずだったものです。
しかも、皮肉が利いていることに私が当時所属していたタイタンは帝都奪還を目指す帝国と正面衝突していました。つまりタイタンが帝国の主力を抑えて、マイスイートシスターが動きやすくしている=援護射撃しているようなものです。
この状態になることは私の頭脳でも読めませんでした。
今、思うにここが一つのターニングポイントだったのでしょう。
マイスイートシスターより先に青の国を開放していたならば、私は青の国の王となり別な未来を得ていました。
くそっ!
はっ! いけません、いけません。
怒りは知恵を曇らせます。
私の知恵が曇っては損失です。
そこからは語るものはあまりありません。
既に未来予測の魔法を使用するまでもなくタイタンは帝都奪還に動く帝国と4か国を開放し地上を味方につけているマイスイートシスターの間に挟まれて滅亡することが見えております。
ですので帝国とタイタンが戦っているときに、一番、帝国にとってありがたいであろう、勝敗を決するタイミングでタイタンから帝国へ寝返りました。私の手足としてブルータスとともにです。もちろん手土産も忘れませんよ。タイタン子飼いの戦士一人を倒しましてです。
まあ、私の頭脳にかかればタイタン子飼いの歴戦の戦士といえども、簡単に倒せます。
まともに汗水たらしてぶつかるのが愚かということです。
その後、しばらくはノンビリ過ごさせてもらいましたよ。
ええ、この私の英知を働かせるには十分な休息が必要です。
ところがブルータスはそれが不満だったようです。何を無駄に焦っていたのでしょうか?
彼らは急遽、帝都奪還の進軍の最中、帝王様が二人の戦士に下賜された装備品、ドラウプニルを強奪しました。
帝王様や宰相ユミル様の怒りが肉塊にされたマンタの姿をみてわかるというものです。
その結果、ブルータス達に親い私に冤罪がかけられているという状態です。
この状況を脱するには尋常の方法では難しいでしょう。
ならば尋常ではない方法をとるだけです。
私の知恵を甘く見ないでいただきたい。
---from アオイ side---
「て、て、て、て帝都が爆発! し、し、しゅ、守護者が現れました!」
メンドーサからの雷獣をつかった電波による急報を受け、アタシ達、レンジャーワンは地上からスクロールを使用し帝都に急行。
爆発? 守護者?
嫌な予感がする。
守護者と呼ばれるアタシたち地底に住む人々やモンスターとは一線を画す存在。
彼らは基本的に破壊してはならないダンジョンの壁・天井・床を破壊すると、ダンジョンを守るかのように出現する。
だから「守護者」と呼ばれている。
もっとも全てのケースで出てくるわけではない。
魔石の採掘所のような場所を掘っても出現しない。
また、運が絡むが過去に地底国家群同士でバイパスをつなごうとダンジョンの壁を破壊したことがあったらしいが、出現したパターンとしなかったパターンがあったようだ。
どうも守護者が守りたい場所とそうでない場所があるらしい。
または守護者の縄張りか?
そして多大な犠牲の結果、長年の研究で守護者が出現する場所、しない場所というのが帝国を含めた地底国家群を中心に判明している。逆に地底国家群から離れたエリアは不明だ。
余談だが、どうも「地上」付近は守護者の縄張り外のような気がする。
レンジャーワンが結成初期にダンジョンの天井・壁を破壊したが守護者は現れなかったし、伊藤女史の発案で垂直トンネルをつくったときも守護者は現れなかった。
「守護者の数は? 場所は?」
アタシは移動しつつも端的にメンドーサに確認する。
いつまでも驚いていられない。
事態は刻一刻変化する。
相手が守護者ならなおさら。
「しゅ、守護者は3名。しゅ 出現位置は帝国側ダンジョン出口です。」
よし、アタシ達は急ぎメンドーサの指定したエリアへ向かう。
なんだかんだいってメンドーサは優秀だ。
あのへドリアが一番の股肱であると評するだけはある。
彼女の雷獣を使った広域感知と通信能力があるからこそアタシ達レンジャーワンは3名でもなんとかやっていけている。
「むう。」
「ちょっとぉ。」
「これはひどいです。」
現地についたアタシ達は唖然とした。
壁が大きくえぐれている。
誰かがダンジョンの壁を破壊したのだ。
しかもこの場所は壁を破壊すると守護者が出るとわかっている場所だ。
明らかに守護者を出現させるために故意にダンジョンの壁を破壊したとしか思えない。
守護者は生命も魔力も喰らう、ダンジョン内に巣食うモンスターとは別次元の化け物だ。
殴りかかったら喰われるし、魔法を放っても魔法が喰われる。
そんな化け物を呼び出すためにダンジョンの壁を破壊するなんて正気とは思えない。
「まっていたよ。マイスイートシスター。」
うげっ。正気じゃない奴の声が聞こえたよ。幻聴だよね。
『まあ、何をおっしゃいますの。幻聴ではなく現実ですわ。大事なお兄様の声をお忘れになって。』
カグヤの揶揄う声が聞こえる。
ちぇ、少し現実逃避したかたのに。
しゃーない。
現実に戻ろうか。
で帝国に寝返ったはずのアホ兄ィがなぜここに。
いや、爆発された壁と出現した守護者を見れば、何してたかは推測できる。
このアホ兄は本当にアホなことをした。
「・・・自ら守護者を呼び出した・・のね。」
アタシ自身が内心、驚くほど底冷えのする声がでた。
アタシは怒っているらしい。
「・・・何故?」
アタシはアタシの聞きたいことを端的に目の前のアホ兄に聞く。
もう、予測はついているけど、改めてアホ兄の口から理由をききたい。
「私はね。青の国の王子、王になる宿命を負うものです。つまり王にならなければならない。」
「で?」
そのロジックは聞き飽きた。
「ところがです。王になるどころかこの高貴な血が宿るこの身が危険にさらされています。実に嘆かわしいことです。」
「で?」
高貴な血? そんなものあるものか。
「この危機を乗り越えるためには実績が必要です。それこそ四天王・十人衆を破ってきたレンジャーワンを倒すくらいの実績がです。」
「で?」
「そのために守護者を出現させました。四天王・十人衆を破ったレンジャーワンも守護者相手では難しいでしょう。我が愛する妹がこのような目に合うのは大変忍びないのですが、僕のために死んでもらえますか?」
ものすごいエゴ。まあ今更それはいい。このアホ兄はそういう人だ。
それよりも。
「ハァ・・・最後まで自分は何もしないんだね。」
「え?」
「basta!」
「え?」
アタシは捕縛の呪文でブルーフェイスを動けなくする。
そのブルーフェイスに近づき。
「飛んでけ。Skufa!」
衝撃波の呪文でブルーフェイスを吹き飛ばす。
その吹き飛ばした先には守護者がいる。
「ぎゃああああああっ!」
ブルーフェイスの悲鳴が響く。
吹き飛ばしたブレ―フェイスの体が守護者に当たり・・・そして喰われた。
喰われたのは右足を中心とした一部
頭などの重要器官は無事なので生きているが、目の前に守護者がいる状況だ。
守護者に食われるだろう。
守護者達、守っていたダンジョンを破壊したのはそのアホ兄だ。
存分に成敗して。
と思っていたら守護者は右足が無くなり動けないブルーフェイスを放置して、こちらにむかってきた。
衝撃波でブルーフェイスを飛ばしたから、こちらを敵とみなしたのか?
行動原理がまだ理解できてない。
「レッド! イエロー!」
アタシは二人に声をかける。
「うむ。」
「任せてください!」
二人から打てば響くように返事が来る。
守護者は近づいたら喰われる。
そして魔法も喰われる。
それなら遠距離で魔法じゃない攻撃をするだけ。
そしてその攻撃手段をアタシ達全員持っている。
「melta diki!」
アタシは魔法で目の前に溶岩を出現させる。
「Járnsverð!」
その溶岩から魔法で鉄を抽出。大量の剣の形にして射出する。
「レールガンM2!」
赤石が同じくスキルで弾丸を飛ばす。
「錬金!」
山吹がスキルでバイクを生成。そのまま守護者にむけて突撃させる。
三体の守護者は大量の剣で串刺しになり、胴体に風穴を開けられ、バイクに突撃を受け。
そして倒れた。
「な! な! な! しゅ しゅ 守護者がこんな簡単にっ! そんな、そんなありえない!」
ブルーフェイスが狼狽している。
ありえなくない。
ずっと誰かの陰にいたアンタと違って、アタシ達は何度も何度も修羅場をくぐってきた。
その分、何度も何度も成長してきた。
口や理論だけを述べて、自分の都合だけを述べて何もしてこなかったアンタとは違う。
「うわぁぁぁああ! dökkálfr geisa seiðr!」
腐っても魔法国家 青の国の王子か。窮地に魔法を唱えた。
目の前に巨大な魔獣が出現した。
だけどね。その魔法はもう種がわれてるんだ。
アタシはスキル胡蝶の舞を発動させる。
幻の巨大モンスターは消滅した。
「うわぁぁぁああ! heita heita heita geta sigr!」
ん?
今度の魔法は幻じゃない。
この魔法は・・・アホ兄ぃ。またなんて魔法を発動させるんだ。
アホ兄の目の前に魔法陣が出現。
その魔法陣から骨格だけでできた巨大ドラゴンが現れる。
その骨でできた巨大ドラゴンは出現と同時にブルーフェイスをその咢で喰った。
だから、なんで制御不能なモンスターを呼ぶかな?
アタシはため息をつきつつも眷属である機械仕掛けの騎馬を呼び出す。
「行け! スレイブ!」
機械仕掛けの騎馬は骨だけのドラゴンに突貫。粉砕した。
---from ブルーフェイス side---
「はぁ、はぁ、はぁ。この私を舐めないでいただきたい。」
私は先ほどの戦いで失った四肢で逃走困難な状況を克服すべく回復魔法にて応急措置を取り浮遊魔法にて移動しています。
先ほどの窮地から脱するために短距離転移の魔法を使用したために残り魔力は少ないですが仕方がありません。
それにしてもマイスイートシスター達は私が死んだと思っているでしょう。
転移で逃げようとしても、転移の魔法は個人では難しく魔法陣か魔法陣に代わるスクロールがないと実行できないというのが一般常識です。
私が短距離とはいえ、何の触媒もなく転移の魔法を使えるように開発していたというのは思いもしないでしょう。
もっとも、これは帝国にいってからマッドサイエンティスト、ホノカ様の研究所内の研究資料を発見し改変したので、完全なる私のオリジナル魔法という訳ではありませんがね。
今思えば予知魔法の予知に従っていて正解でした。
今使用している「(触媒を使用しない)短距離転移魔法」も「浮遊魔法」も予知魔法の予知で「ホノカ様の研究書類を調査する」という結果に従った結果、身に着けた魔法です。
この世界で私しか使用できない魔法です。
この予知魔法たまに「王となることではなく補佐をめざす。」という訳のわからない予知をすることはありますが役に立ちます。
このような私にしかできない魔法を生み出す、英知を私は持っているのです。
この英知がこの世からなくなるのは、この世の損失なのです。
そしてこのような英知を持つものこそが王になるべきなのです。
なぜ、世の中の人々はそれが理解できないのか。
私が生まれたときは天才と呼ばれたものです。
青の国は魔法の国でもあります。
私は生まれたときから魔法の適性がありました。
親である王も臣民もこれぞ魔法の国の王 魔王であると喜んでくれたものです。
妹が生まれました。
それは愛くるしい女の子でした。
当然ですが私ほどの魔法適正はありません。
「どれしょうがない。魔法適正の高い私が守ってあげなければ。」
と思っていたものです。
妹は私ほど魔法適正はありません。すなわち魔法の国である青の国の王になるには不適格です。
しかし彼女は彼女でユニークな魔法の研鑽をしていました。
魔法を連発してみたり。地形を利用してみたり。複数の低威力の魔法を組み合わせた戦術を考えてみたりと。
本来魔法の研究というものは呪文や魔法陣といったワードを研究し、その効果を研究するものなのですが、妹の研鑽は魔法運用の方へ向かっているようです。
「これも才能がないためでしょうね。」
私は妹のために憐れみました。
威力がないから連発してみたり、地形や他の魔法を利用しだまし討ちのようなことをしたりするのでしょう。
ところが周囲の評価は違いました。
彼女を努力家と評し、戦術家と評し、褒めたたえるではありませんか。
あれは才能のないものが、無駄なことをしているだけのものであるというのに。
さらには帝国が青の国に攻めてきた時、徹底抗戦という無駄な努力をしていた妹を見方も敵である帝国も褒めたたえました。そして帝国四天王という重職を妹に与えたのです。
何故でしょう?
予知魔法で帝国には勝てないと解答はでていました。
それならば無駄な戦いは避けるべきでしょう。
戦いを避けた私の評価がさがり、妹の評価があがる。
実に実に理解しがたいです。
「・・・待て。」
「ぎゃああああああっ」
ハァ ハァ ハァ
目の前に帝都からの出口が見えた。その時に浮遊移動している無抵抗でけが人の私を斬りつけた無粋な奴がいます。
確か、あいつは・・・元タイタンの部下で今はレンジャーワンの下にいるライトとかいう男ですね。
剣しか使えないため最強剣士と揶揄されている男です。
「・・・アオイ殿のいう通りだったな。ここにいるとファイアの仇がとれると。」
な!
この男はアオイの指示でこの場所で待ち伏せしていたというのですか!
「ええい! どいつもこいつもアオイ。アオイと! 魔法の才なく魔法そのものの研究ではなく魔法の運用を工夫するといった無駄な努力をし、帝国に勝てるわけもないのに無駄な抵抗をしつづけた。アオイの方が評価がよいと! ライト! あなたも見ていたでしょう。私がタイタンの下にいたときにタイタンへどれだけ献策していたかを。そのような真の功労を評価せず、無駄な努力を繰り返す者の方が評価されるとでもいうのですか!あのような無能なものは無駄な努力をせず。能力ある者の庇護に入っていればいいのです!守られていればいいのです! それを変に努力して! 無駄な時間を使って1」
「・・・お前が何に怒っているかは正直わからない。お前とアオイ殿の間に何があったかも知らぬ。だが、少なくともタイタン様のところにいたお前は献策という名の評論を繰り返し何も成さなかった怠惰な評論家だった。」
「な! 私の献策を愚にもつかぬ評論だと。」
「・・・どうとるかは人それぞれだ。批評していると仕事している気分になるしな。それに・・・」
「それに?」
「・・・それにな俺は剣士だ。剣ってのは一日にしてならない。コツコツ努力を積み上げた先にある。無駄な努力も、無駄な時間もない。それを馬鹿にするやつは好きにはなれんな。」
「別にお前に好かれようとしてやっているわけではないっ! お前もお前だ! この魔法の世界で剣という無駄な努力をし続けてっ。結局、剣の腕前は上がったかもしれないが勝利を得たことは無いではないか!」
「・・・それは私の錬磨が足りぬだけのこと。そして無駄な努力はない。少なくとも今、私はファイアの仇を討てるっ!」
「私は・・・っ。」
私は・・・何度も、何度もマイスイートシスター・・・アオイを庇護しようと・・・
どす黒い王の責務も、闇深い魔法の深淵も 危険な戦闘も
何も必死にやらなくていいんだよと・・・
目の前にライトの剣が通り過ぎた。
---from ライト side---
剣を鞘に納める。
目の前にはブルーフェイスの胴から離れた首がある。
「・・・・タイタン様! ファイア! 仇はとったぞ!」
俺の叫びが帝都に響いた。。
【次回予告】
ファイアの仇を討ったライト。
ライトと同じくタイタンの元でともに戦ったプロネミンスはその一報を聞き、昏い焦燥に包まれた。
次週、episode43 嫉妬
毎週 日曜日 9時30分 更新
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【お知らせ】
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