episode39 モスの一族
---from ??? side---
「マブシイ。アオイ、アオイナ。」
「ソウデスネ。コレガ 楽園「地上」?」
「アソコニ巨大ナ都市ガアル。」
「 ミロ、タベモノガタクサンアル。」
我々は偉大な種族、モスの一族。
我々は地底国家の一つを棲み処にしていた。
元々はニンゲンという種族の国であったらしいが、我々が奪った。
ニンゲンは数多く、剣と魔法を使うが、そもそも武器を使わなければ何もできぬ脆弱な種族。
魔法だけは気を付けなければならないが、それも数多くのニンゲンが使えるわけではない。
我々のような偉大な種族に勝てるわけがない。
ニンゲンの言う地底国家の一つを攻め滅ぼし、そこにいたニンゲンを我らが食料とした。
ニンゲンは国家だの帝国だの地底を我が物顔で支配した気分になっている。不遜な生物であるが、唯一のメリットは脂がのって美味い。数もいる。
家畜としてスバラシイ。
これは認める。
ウマイ。
家畜の分際で我々を差し置いて地底の支配者気取りはいただけないが。
そのうち、真実を理解する時がくるであろう。
何でもそのニンゲン共の伝承に楽園「地上」というのがあるらしい。
この地底のはるか天上に楽園があるという。
下等なニンゲンらしい空想物語だ。と思っていた。
ある時、あまりにも上層が騒がしい時があった。
地震のような振動が発生し、天上からはその振動によりがれきが落ちてくる。
我々は偉大な種族であるが、その分、個体数が少ない。
下等なニンゲンに地底の覇権を許しているのも、その個体数に起因している。
その少ない個体数がさらにこの振動による被害で減るのはさけねばならぬ。
我々は勇を決して上層の異変を調査すべく数年ぶりにこの占拠したニンゲンの国を離れることを決意した。
この地底にはこの偉大なる我々からみても厄介な存在がいる。
モンスター?
そんなものは問題にもならない。
ドラゴンとかになると別だがな。
その存在は守護者だ。
洞窟が壊れると出てくる。
まるで洞窟を守るかのように出現するため守護者と呼ばれている。
この守護者。
木偶の棒であるが厄介だ。
魔法は吸収する。人も吸収する。それに貴賤はない。
我々も吸収されてしまう。
ジョーカーのような存在。
それが守護者。
我々の個体数が少ない原因でもある。守護者に喰われたのだ。
この天井からがれきが落ちてくるような異変を見て、我々は思った。
洞窟がこれだけ破損しているのであれば守護者が出てくるのではないかと。
慌ててこの国を去った。
実際に我々が住むこの国の天井も崩れている。
同時に原因を知りたくもある。
この振動の原因は何かと
去るにしても逃げるのではない、原因調査のために進むのだ。
我々は上層へ向かった。
上層へむかった我々の目の前に広がるのは想像もしてなかった光景だった。
青い空、見たことのない人造の建築物。そして旨そうなニンゲン
これが楽園「地上」だと我々は知った。
天上の果てにこのような場所があるとはな!
このような「楽園」の支配者は我々こそがふさわしい。
---from 山吹 side---
僕はライオンマンさんの最後の言葉を思い出しています。
ライオンマンさんは死の間際、守護者の呪縛を脱して自分の意識を取り戻していました。
「おお! 強い。強いな。俺は満足だ。このような戦士と戦えたことを誇りに思う。
一つだけ、一つだけ、気になることはどうやってその強さを手に入れたか。興味はあるがいまさら詮無きことか。リサ教授を救え。お前の願いを叶えろ。」
これがライオンマンさんの言葉です。
最後の言葉は赤石クンにむけての言葉でした。
僕が気になるのが「どうやってその強さを手に入れたか興味がある。」というセリフです。
僕はライオンマンさんが赤石クンに興味を持ち、他の高校生も赤石クンと同等の戦力をもっているのか確認しにいっているのを知っています。
当然ですが、赤石クンのような戦闘力を持つ高校性なんて存在しません。
ライオンマンさんが興味を持つのは当然でしょう。
僕も今、興味があります。
何か、何かひっかかるのです。
あの一切の「無駄」を省いた闘い方。
本当に人ができるのでしょうか?
少なくとも僕は無理です。
普通の高校生も難しいでしょう。
地底の帝都にいる兵士の中には赤石クンと同年代の子もいましたが、彼らも赤石クンほど強くはありませんからね。
僕が思案の海に沈もうとしているとメンドーサさんから電波による連絡が入りました。
「魔石の洞窟からモンスターが出現しました。」
!
これは初の現象ですね。
確かに魔石の洞窟内にはモンスターがいます。
しかし、その数は少数で密度も少ないです。
そのため魔石の洞窟の出入口からモンスターが出てくるというのはありませんでした。
いずれにせよ。
モンスターが地上を徘徊するとなると大変です。
急ぎましょう!
---from アオイ side---
「うげっ、あいつ等かよ。」
私はメンドーサの緊急連絡を受けて魔石の洞窟入り口に赤石、山吹とともに急行した。
そこにいたのはモスと呼ばれるモンスターの大軍。
昆虫のような頭にファーのような大量の毛で首周りを覆い。マントのような翅をもつ。
もっともこの翅は飾り。飛べはしない その他、体は人間と同じく手足がある。
そしてモンスターにしては珍しくコミュニケーションがとれる。
言葉も片言ながら話ができる。
厄介なのは、このモンスターが好んで人を捕食することと、ニンゲンを食料とみなし見下しているその性格だ。自分たちを偉大な種族とかってイタイ事言ってるし。
強さは・・・まあ強いって言えば強いけどご覧の通りかな。
魔石の洞窟や直通直下トンネルの出入り口には多数の警官・自衛官
そして、臆病って言ってもいいくらい超~慎重な伊藤女史の強力な要望で「石の国」から交易で手に入れたゴーレム部隊を配備している。
そのゴーレム部隊に好き放題やられてますなぁ。
まあ、剣も通じない防御力に光魔法を応用した砲撃を出来るゴーレム軍団相手じゃモスの一族も厳しいだろう。
さて、こいつ等は人を捕食する危険なモンスターだ。
地上の人間に危害が加えられる前にやりますか。
「いくよ。赤石、山吹」
私はドラウプニルを起動させる。
同時に「An armor changes Wodan」の機械音が鳴り響く。
私の体が青い全身スーツに覆われる。マントのような青藍のパーカーとフレアスカート。鍔の広いとんがり帽子に杖を装着。
「Completion! The magicians・blue」
機械音と共に青を基調とした魔法使いに変身する。
山吹もドラウプニルを起動させる
「An armor changes Frey」の機械音が鳴り響く。
山吹の体がド派手な黄色の全身スーツと軽鎧に覆われる。
フルマスクのようなヘルメットに頭部が全て隠され、その容姿はフル装備のモトクロス選手にも見える。腰に大剣、背にはマントを装備している。
「Completion! The Commander・yellow」
機械音と共に山吹も黄色を基調とした神の戦士に変身した。
・・・今回、山吹が変身したのはCommanderかー。
前回、揶揄いすぎたかな?
赤石もドラウプニルを起動させる
「An armor changes Tor」の機械音が鳴り響く。
彼の体が派手な真紅の西洋甲冑のようなものに覆われる。
腰回りは大きなスカート装甲。肩の倍はある巨大な肩当に、膝から下もフレア装甲。右腕には二回りも大きな円筒形の腕あて。左手には腕には炎をデザインしたようなシールドが装着される。
「Completion! The Fighter ・RED」
機械音と共に赤石も真紅の重装戦士に変身する。
さあ、いこう。
帝国との戦いが待っているのに、こんな空気読まないモンスターに構ってられない。
---from 赤石 side---
「ぬう。」
地上に突如現れたモスというモンスター。
どれほどかと思いきや、拍子抜けではある。
「コノ下等生物ガッ!」「食料ノ分際デ!」
など罵詈雑言は多いが実力が伴わぬ。
少々頑丈な程度であろうか?
とはいえゴーレムほどの耐久力もない。
残念である。
粗方、掃討し終えたか。と思った時、モスの一人が断末魔の最後に
「我々ヲ倒したカラトイッテ図ニ乗ルナ。下等ナ ニンゲンメ。我ガ クイーンハ既ニ貴様達ノ市井ニイル。」と告げた。
!
ぬう。
アオイが言うにはこのモスというモンスター人を喰うという。
そんなのが町に逃げ込んだというのは一大事である
我らは顔をあわせる。
「即連絡!」
アオイが叫んだ。
※※※※※
モスというモンスターが逃げ出したというのは速やかにニュースとな非常警戒宣言が出された。
これだけ速やかだったのは、伊藤女史の力というか個性の所為であろうというのがアオイの弁である。我にはよくわからぬ。
ふと、目の前を親と下校する小学生が横切る。
非常警戒宣言が出されたため、急遽、親が子供を迎えにきたのであろう。
こういった子供が巻き添えにならねばよいが。
---from モス クイーン side---
なんだ。なんなのだ。
地上の奴らは。
ゴーレムのような魔物を使役するなど聞いてはおらぬぞ。
仲間と一緒に棲み処を出て、ニンゲンが楽園と呼ぶ場所にたどり着いた。
ここにはエサであるニンゲンが豊富おるではないか。
ふむ、「楽園」とは言いえて妙じゃ。
それはよい。
それよりも何なのだ「楽園」の戦力は。
ゴーレムなどという上位のモンスターがいるではないか。
それを使役し、我らの侵入を防ぐ「楽園」のニンゲンども
我々は偉大な種族だが、さすがに石くれのごときゴーレムと戦うことはできぬ。
石を叩いても意味はないからのう。
無駄だ。
この石くれと戦う愚を悟った私は同朋を残し、この場を去ることにした。
私は偉大なるモスの一族の中でも更に偉大なクイーンの座につくものだ。
私には繁殖のスキルがある。
私一匹生き残ればいくらでもモスの一族は繁殖で増やし、繁栄させることができる。
私は必死に逃げだ・・・ゴホン。 愚なる戦いを避けるべくその場を去った。
いくら歩いたであろうか?
最初、スバラシイと感じていた青空であるが、どうもその青空の中心にある光り輝く球体から差し込む光を受けると体力を消耗してしまう。自然、私は日の刺さぬ森の中へ逃げ・・・ゴホン。移動することにした。
森はそれほど大きくない。
それでも木陰にいると厳しい日の光が柔らかなものに転じ、疲れた体をいやした。
現金なもので安心すると腹が減る。喉が渇くのは自然の理であろう。
そこでニンゲンに出会った。
背丈方見るに幼体であろう生後5、6年というところか。
幼体は柔らかくウマイ。
それが5体
この疲れた体にちょうどよい。
これは頑張っている私へのご褒美だな。
そうだよね。
私は捕食のために舌を伸ばす。
---from 山吹 side---
「ちょっと、それは大変じゃないですか。」
僕はアオイちゃんから聞いたモスの一族の習性を聞いて恐怖した。
全てのモスの一族はクイーンと呼ばれる個体から生まれるらしいです。
そしてクイーンはモスの一族を大量に生む前に大量の人間を食べるらしいのです。
そして巨大な繭をつくり、そこから巨大な空飛ぶモンスターに変態し、
空を飛びながら人食いのモスの一族をばらまき、都市を国を喰いつくすということです。
なんというか。
恐ろしい地獄絵図のような想像しか浮かびません。
早めにそのモス・クイーンを探し出したいところです。
今、警察は当然ですが、アオイちゃんも「失せもの探し」の魔法で捜索してますし、メンドーサさんも雷獣を市中に走らせ捜索してますが見当たらないようです。
なんとか手遅れになる前に見つけ出さないと。
仮に、仮にです。
モス・クイーンが巨大な空飛ぶモンスターに変態したとしてもヴァン・アース状態で対応はできると思います。
ですが、その時には多数の犠牲者がでたあとなのです。そうなってから対応しても後悔し残らないでしょう。
ここで僕はふと閃きます。
僕の新タイプ“álfr”
全能力を把握している訳ではないですが、前回は歌による衝撃波で戦況をひっくり返しました。
どうも歌に関係のあるタイプのようです。
それならソナーに似たようなことはできないでしょうか?
どうせこのまま待っていても何も変わりません。
やれると思ったことはやってみるべきでしょう。
デメリットは・・・気にしないでおきましょう。
ええ、気にしないのが一番です。
僕はドラウプニルを起動させます。
「An armor changes Frey」の機械音が鳴り響く。
僕の体がフレアスカート型のドレスアーマーに覆われます。頭には王を示す黄金のティアラが装着されます。
「Completion! The vala・yellow」
機械音と共に僕は黄色を基調とした神の指導者に変身しました。
性別の描写はなしです。
無しったらなしです。
「いやあ、あらためて変身シーン見たけど、男が女に変身するってファンタジーねェ。」
アオイちゃんが妙な感心の仕方をしている。
そこには触れないでください。
さて、この姿になったときの能力は今な未知数ですが、
僕の想像通りなら、このタイプの特性はゲーム的な職種で言うなら指導者。「声」で周囲を支配する。考察するにこの「歌」や「声」こそ「魔法の原型」ではないでしょうか?
かの有名なバビロンの王は数多の悪魔を支配してたと聞きます。その支配が「指導者の声」なら「指示」は「原初の魔法」ではないかというのは飛躍しすぎでしょうか?
いや、考察が過ぎました。
ここは研究室ではないのです。
そのような考察は時間があるときにじっくり研究室で行えばよいのです。
今はいち早く犠牲者が現れる前にモス・クイーンを探すことです。
僕は「歌」います。
このスキルの最適な活用方法はわかりませんので前回の感覚で、手探りで行うしかありません。
ですが、前回の感覚を信じるなら、こうあってほしいという願いを込めて「歌う」のがよいと思います。
僕は「歌」います。
モス・クイーンの居場所を見つかるように祈りを込めて。
僕の歌が周囲に広がります。
その歌の反響を拾います。
「ビンゴ!」
僕の仮説は当たりました。
この「歌」で捜索可能です。
「ん?」
僕の「歌」のソナーにモス・クイーンだけではなく別な反応もありました。
これは・・・
「急ぎましょう! 来てくださいスキーズ!」
僕は空飛ぶ船スキーズを呼び出し、赤石クン、アオイちゃんを乗せるとモス・クイーンの居場所に急行しました。
なぜなら、モス・クイーンの近くに子供5名いることも感知したのです。
急がないと喰われてしまいます。
地上で空飛ぶ船スキーズを呼び出すと大騒ぎになりますが、そんな事いってられません。
・・・なんか、僕の権能。スキーズもそうですが女性化したりとやたら目立つのですが気のせいでしょうか?
---from アオイ side---
私は焦る。
モスの一族はその大風呂敷のわりに一体一体は大したことないが、それでも脅威なのは人を餌とみなして捕食する点だ。
タイミングが悪ければ村や国も最悪滅ぶ。
何度か、他国の救援要請に赴いたことがあるが、酷いという言葉では生ぬるい状態だった。
山吹のソナーでの捜索で逃げ出したモス・クイーンの居場所が判明したのはいいけど、そこに小さい子供が5人いるという。
私も「失せもの探しの魔法」を山吹の感知した方向に向けると、確かに同じ結果が現れた。「失せもの探しの魔法」は広範囲になると時間がかかるのが欠点だと改めて思った。
小さい命を守らなければならない。
前に訪れたモスの被害に一族の被害にあった村の惨状が目に浮かぶ。
移動速度を1秒でも早めるために山吹の呼び出した空飛ぶ船スキーズ移動していたが私はもどかしくなり、途中、機械仕掛けの鳥を呼び出してそれに乗り現地へ急行した。
「は?」
『なんでしょう、これは?』
現地についた私は唖然とする。
カグヤも同様の感想を持ったようだ。
モスがいた。
他のモスとは色合いが違い、赤と白のツートンと派手で、頭にサンタハットと呼ばれる三角帽子を冠のようにかぶっている、これがモス・クイーンだろう。
モス・クイーンは夢中になって食べていた。
子供からもらったお菓子を。
子供たちが「ねえ、おいしい?」と聞いている。
モス・クイーンが「ウマイ、ゼッピン!」と返していた。
なんだこれ?
モス・クイーンが子供たちに餌付けされている??
「ぬう。」
「お待たせしましたって・・あれ??」
赤石と山吹も到着したようだが、同じようにこの光景を見て戸惑っている。
ん-どうしようかな?
『お姫様。変に刺激しないようにご注意ください。』
カグヤが珍しく何の揶揄もなく注進してくる。
そだね。
変に刺激して最悪な事態にちゃっちゃいけない。
「ねえ。どうしたの?」
私は変身を解き、それとなく子供たちに話を聞く。
変身したままだと子供たちも警戒するだろうからね。
こういう場合は素顔の方がよい。
もちろん、さりげなく子供とモス・クイーンの間に入り、モス・クイーンと子供との間の斜線を遮ることは忘れない。
これで直接、子供に危害を加えることはできないはず。
「うんとね。えーっとね。サンタさんがおなかすいて動けないみたいだからお菓子をあげてたの。」
サンタさん・・・?
私は改めてモス・クイーンを見る。
モスの一族は首回りが白い毛でおおわれている。そして翅を折りたたんでいるとマントのように見える。通常のモスの翅は黒に近い茶褐色。でも、このモスクイーンの翅は鮮やかな赤。そしてモスの王を示す王冠の代わりの三角帽子も赤。
なるほど? サンタに見える・・・
『アンタ、阿保ですか? あの巨大な複眼見えてますか、どう見てもサンタにみえませんですわ。』
「ちょっ。カグヤこそ、それ酷くね。カグヤ、アンタの声、今の状態だと私にしか聞こえないと思っていってるんでしょうけど、あの子供たち見なさいよ。あのモス。クイーンをサンタだと思ってるよ。間接的にあの子供たちをディスってるからね。」
それはさておき。
子供たちが無事という最悪な事態は避けられた。
良しとしよう。
それはそれとして
「アンタは何をしてるの。」
私はそこでお菓子を目を輝かせて食べているモス・クイーンに問う。
「ミテ、ワカラヌカ下等生物。至高ナル、ミツギモノをイタダイテイルトコロヨ。ソレニシテモ「地上ハ真ナル「楽園」ナリ。コノ餌ノ至高ナル味ヨ。」
そういってモス・クイーンはお菓子をぱくりと食べる。
わかるけどさ、そのチョコ。美味しいよね。
ウエハースだけでも美味しいのに、その上にチョコをかけるなんてサイコーだよ。
ああ、それも美味しいよね。
コーンパフだけでも美味しいのにそれが濃厚なコーンポタージュのフレーバーに!
ああ、コンチクショウ。
なんで私がおいしそうにお菓子を食べるモス・クイーンを見てよだれを垂らしてないといかんのだ。
「ねえ、ねえ。おいしい?」
「モチロンダ。至高ナル餌ダ。」
私がそうしたもんか頭を抱えている間にも好奇心とサンタさんという有名人を助けた満足感を持った子供たちとモス・クイーンのちょっとチグハグで、ちょっと間違うと危険な会話が弾んでいる。
「えーっと。親切心が命を救ったということでしょうか?」
山吹が口を開く。ちなみに山吹と赤石は変身したままだ。
私は子供たちの警戒心を解くために致し方なく変身解除したが、モスの一族は人喰らい。いつ子供たちを襲うかわからない。臨戦態勢は解かない。解けない。
「ん?どういうこと?」
「子供たちはお腹を空かせたサンタさんが可哀そうだと思ってお菓子を上げました。そしてモス・クイーンは子供たちを食べずに、お菓子に夢中になりました。結果的にお菓子をあげた親切心が子供たち自身の命を救ったことになるのではないでしょうか?」
なるほど、親切心が命を救ったか・・・
『何かあれば戦いでという地底の人間にはでき難いことですわね。』
「アンタも含めてな。」
とりあえず棘のあるカグヤの皮肉を皮肉で返しておいてと・・・
どうするかな?これ。
今の状態だと、お菓子に満足しているようだから問題は起きないだろうけど、じゃあ目を離せるかというとそうでもない。目を離した瞬間に子供たちが喰われてしまったなんてなったら後悔しきれない。コイツの種族の本性はニンゲン喰らいだからな。
『何を悩む必要があるのです? 倒してしまえばいいのではなくて?』
カグヤ・・・それはアンタの言う何でも戦いで解決しようとする地底に人間の考えだ。
うーん、とりあえず元の場所に戻ってもらえればいい。
「とりあえず、それ食ったら元の場所に帰れよ。」
私はモス・クイーンに言う。
「ナゼ、コノ至高ナル餌ノアル「楽園」ヲサラネバナラン?」
「アンタがモスの一族だからだ。アンタらはマンイーターだ。 この子達を食べさせるわけにはいかない。」
「ソノヨウナ恩知ラズナコト。偉大ナルモスノ一族ハセヌ。」
「では食べないと?」
「トウゼン。」
ここで地鳴りがおきた。
うぉっとーっ。
これは立てない。
慌てて子供たちをっと思ったが、既に赤石や山吹が身を挺して庇っていた。
やるなこのデキル男どもめ。
「ぬう。」
「なんですかこれ?」
そのデキル男どもが驚きの声をあげる。
私もその方向を見る。
「これはっ・・・。」
私がレンジャーワンに加入するきっかけとなった「映画館」が目の前にあった。
「うそ・・・。」
こんな建物はこの場所に無かったはずだ。
それが、今までここに存在してましたよと言わんばかりに当り前に目の前にあった。
そしてその映画館に上映中としてPRされているポスターには「大魔モスの一族」と書かれているのが目をひいた。
私が戦術家を名乗るにはありえないくらい混乱している中で、さらに混乱する事態がおきる。
『お客様にお知らせいたします。現在、演者の放棄により上映が一時中断しております。復旧の目途が立ち次第、改めてご案内いたします。ご迷惑をおかけしておりますことをお詫び申し上げます。引き続きスタッフが対応しておりますので、何卒ご理解とご協力をお願い申し上げます。』
映画館から謎のアナウンスが流れる。
そして映画館から現れたのは映画館スタッフではなくー。
「ぬう。」
「なんで守護者が!」
そう映画館から出てきたのは守護者だ。
私は混乱する頭をガシガシ叩いて、気持ちを無理やり戦闘モードへ切り替えるとドラウプニルを起動し、変身する。
守護者相手にするなら少しでも生存確率はあげておきたい。
その守護者達は私達のところに来るわけでも、子供たちや周囲の人たちに襲い掛かるわけでもなくモス・クイーンのところに集まる。
「ナ、ナニヲ。偉大ナルモスの一族ト知ッテカ!」
モス・クイーンも混乱しているらしい。逃げるとも戦うともアクションをとらずに取り囲む守護者に対してオロオロしている。
『『『偉大な理由は?』』』
守護者が声をそろえる。
「偉大ナ理由? ナニヲワケノワカラヌ事ヲ。偉大ナモノハ偉大ダ。」
『『『違う』』』
「チガウダト?? ワケノワカラヌ」
『『『偉大な存在の行動の顕現。』』』
「?? ダカラ、ワケノワカラヌ・・・。」
『『『演じれぬなら演じるように。』』』
そう言って守護者はモス・クイーンを取り囲む。
「アアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア。」
モス・クイーンと守護者達は混ざり合い。
巨大な一つのモンスターとなった。
---from 山吹 side---
「まずいですね。」
僕は巨大化したモス・クイーンを「歌」で走査した結果をみて眉を顰めます。
守護者の性質を持っています。つまり魔法の類は吸収されてしまうという事です。
これは今まで一撃必殺を誇っていたヴァン・アースの一撃が通用しないことを意味しています。
もう一つ厄介なことがあります。
モス・クイーンの性質も持っています。
つまり、大量のモスの一族を生み出すことが出来るようです。
良いのか悪いのかわかりませんが僕の「歌」での走査は優秀で概ね、どのくらいでモスの一族を生み出せるかまでわかるようになってます。
その残り時間が60分らしいのです。
60分以内にヴァンアース以外の方法で倒さないといけません。
このことを赤石クンとアオイちゃんに伝えます。
この二人は行動が早いです。
どちらも考えてから動くよりは動きながら考える思考法のようです。
うらやましいです。僕はどうしても考えてから動くので一手遅れます。
「来るが良い我が眷属、シアルフ!」
赤石クンは既に赤い巨人シアルフを呼びだしています。
完全なフルアーマーであるシアルフで殴っても守護者に吸収されないのは実証済みです。
守護者の特性をもつ今回の巨大化したモス・クイーンも同じく対応できるでしょう。
アオイちゃんはもっと行動が早いです。
「おいでフレキ!」
機械仕掛けの狼を召喚。
その機械仕掛けの狼は更に無数の巨大な鎖を召喚し、巨大なモス・クイーンを拘束します。
「いけっ! スレイブっ」
続けて機械仕掛けの騎馬を召喚。
巨大なモス・クイーンに突撃させます。
巨大な機械仕掛けの騎馬の突撃で周囲の土砂が煙幕のように巻き上がります。
周囲にまで影響を及ぼす突撃攻撃ですが、タイムリミットの事があるのでアオイちゃんもなりふりかまってられないのでしょう。
対するモス・クイーンはいたるところから糸を射出しました。
それで機械仕掛けの騎馬の突進をからめとり防ごうとしてます。
自分の前にも5重の糸の盾を展開しました。
「いっけーっ!」
アオイちゃんの号令の下。突進力で突き進もうとした機械仕掛けの騎馬ですが、射出された糸に絡められ勢いを殺され、体当たりでぶつかっただけになっちゃいました。
まさか、こんな方法で機械仕掛けの騎馬の突進を破るとは思いもしませんでした。
見ると赤石クンが同化した赤い巨人シアルフも糸にからめとられています。
この間にもタイムリミットは迫っています。
タイムリミットを過ぎたらモスの一族という名のマンイーターがこの地上を覆いつくし、先ほどの子供たちも捕食されてしまうでしょう。
こうなったら空飛ぶ船スキーズの体当たりで・・・いやダメです。あの機械仕掛けの騎馬の突貫も防がれたのです。
それより遅いスキーズの体当たりだと簡単に防がれるでしょう。
かといってスキーズの主武装は砲撃です。
その砲撃は実弾ではなく魔法の類です。
吸収されてしまいます。
僕は勝利のシミュレーションをあれこれ思案していると赤石クンが珍しく叫びます。
「イエロー。うぬが新たなタイプになった方法を教えろ!」
---from 赤石 side---
ぬう。
完全に攻撃力不足である。
我らの中で最大の攻撃力を持つヴァン・ア-ス状態での一撃が使えぬだけでこの体たらく。
いかにヴァン・アース状態での一撃に頼っていたかがわかる。
これが試合であれば我が一個の生命で終わる話である。
諦めもつくがそうは言ってられぬ。
ここで我等が倒れるならば、モスの一族という人食いが蔓延する地獄と化すであろう。
りさ姉も救えぬ。
何か方法はないかと考えたときに前回の戦いでの山吹の変身を思い出した。
山吹はあの変身で不利な局面をひっくり返した。
我も同じドラウプニルを持つ。
ならば山吹と同じことが我にでもできるのではないかと考えた。
無論。
このような手法は不本意である。
我が考える強さとは一夕一朝でなるものではない。
長い基礎鍛錬と失敗を繰り返しての改善であると考える。
が、この局面でそうもいってられぬ。
これは一種の賭けだ。
山吹と同様のことができたとしても、この局面を超える権能は手に入らぬかもしれぬ。
しかし!
何もせねば、何も成せぬ。
「ステータスからタイプを選んでください! レベル50を超えていれば出来るはずです!」
山吹から答えが返ってくる。
うむ。ステータスとな。
あまりドラウプニルの操作は慣れぬがそうは言ってられぬ。
我は不器用ながらもドラウプニルを操作した。
■Fighter
■Tank
■Ranger
■knight
■Monk
■berserk
■einherjar
なるほど。山吹のいう通りタイプ一覧が出てきた。
この中から選べばよいのであろう。
・・・・
・・・・・
・・・・・
わからぬ。
今、足りぬのは攻撃力である。
あの機械仕掛けの騎馬の突撃をも防いだ。モス・クイーンの守りを突破する攻撃力が欲しいのである。そしてそれは守護者に吸収される魔法の類のものであってはならぬ。
どれを選択したならば奴を倒せるのであろうか?
その時。
我の目の前が白く光る。
ぬう。
何だこの空間は。
前も後ろも横も天も地も白ではないか。
目の前に偉丈夫がいる。
燃えるような赤い髪が特徴の偉丈夫が。
(・・・強い。)
一切の隙が見えぬ。
この偉丈夫がこの奇妙な空間を生み出したのであろうか?
偉丈夫が指を指す。
そこ指した先には空間に映し出されたタイプ一覧があった。
その指はその一つのタイプを指していた。
「我にこれを選べと?」
偉丈夫は我が問いに頷く。
・・・・
うむ。どのみち選ばねばならぬ。
我で判断ができぬ。
判断ができるものに素直に従うのはありであろう。
我は赤毛の偉丈夫が進めたタイプを選択する。
「死んではならぬぞ。」
赤毛の偉丈夫はそう言うとこの白い空間とともに消えた。
「ぬう。」
気が付くと元通りの場所にいた。
つまりシアルフと同化した状態で糸に囚われいた。
我は街の時計を見る。
ぬう。
考える時間はない。
我はドラウプニルを操作する。
「An armor changes Tor」の機械音が鳴り響く。
「Completion! The einherjar・RED」
機械音が鳴ると同時に我はシアルフから押し出される。
ぬう。
強制的にシアルフとの同化が解除されたようである。
同時にもう一つの巨人が目の前に現れる。
シアルフと似ているが違う。
黒と赤のカラーリング。
巨大両手持ちの直剣。
そして骸骨のようなフルフェイス
「死」を想像させるデザインである。
まあ、デザインはどうでもよい。
デザインで戦うわけでもない。
それよりもあの両手持ちの剣。あれこそが赤毛の偉丈夫が勧めた理由であろう。
我はシアルフと同じように骸骨顔の巨人と同化する。
ぬう。
おれは・・・!
とんだじゃじゃ馬だ。
力が漲る反面、制御が難しい。
そしてなんというか力が吸われる。一気に疲労感に襲われる。
これは!・・・長期戦に向かぬ。
即座にそう判断した我はモス・クイーンに対して踏み込み、上段から一気に斬り下ろす。
小細工無しである。シアルフとは違い、この骸骨顔はそれしかできぬ。
モス・クイーンは糸を伸ばし絡めとり、それでもって威力を減殺し防ごうとする。
が、この骸骨顔はお構いなしである。
そのまま糸が存在しなかったかのような勢いで剣を振り下ろし両断。
モス・クイーンを倒した。
後日ではあるが・・・
その後、モス・クイーンにお菓子をあげていた子供達に出会ったとき
「あーっ。サンタを倒した悪い奴だ。」
と言われて逃げられた。
むう。
子供たちの中で我はヒーローのサンタを倒した悪の怪人扱いのようである。
なんと理不尽なことか!
【次回予告】
最後の十人衆 龍人ミズカミがついに動く。
その真の実力は?
そして、新たな戦闘タイプを獲得した赤石との激闘の行方は
次週、episode40 傲慢
毎週 日曜日 9時30分 更新
ブックマークよろしくお願いします
【お知らせ】
別な作品の紹介です。よろしければ見ていただけると嬉しいです
■剣と魔法の義経記 https://ncode.syosetu.com/n1604mi/
【あとがき】
本作は全50話を想定して書いてます。次回で40話。
つまり、残り10話となりました。
ゴー〇スターエースとエン〇ー専用メ〇ゾードεのバトルに憧れて書き始めた、本作をここまで読んでいただき感謝です。
ちなみに本話は戦隊シリーズが終盤戦に近くなると、挿入されるクリスマス回を意識して書いてみました。
書いてみて思いましたが、シャケのインパクトって偉大だと思います。
あと、真夏のクリスマス回という季節感ゼロの展開でスイマセン




