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episode37 サイレント・トレジャー



--from 宰相ユミル side---



「なんと。エルフの剣士ルール殿と魔術師ルカ殿がレンジャーワンを撃退したと。」


私は報告を聞いて喜びました。


帝王様の方を見ると、口角を上げております。


喜んでおられます。


「帝都はどうなったのですかな? 奪還できたのでしょうか?」


報告者に確認をとるとどうも、エルフの剣士ルール殿とルカ殿は帝都に近い広間でとどまっているようです。




そうでしょう。そうでしょう。




敵は私たちに何度も苦杯を与えたレンジャーワンです。


植物の精霊使いスミスも倒されたと聞いております。


無理攻めせず、一旦は傷を癒し。まずは目の前に橋頭保を気づいたというところでしょうか。




「今のところ四天王に最も近いところにいる二人ということですな。」


私は残る十人衆の二人に視線をむけます。




竜人ミズカミ殿とプロミネンス殿です。


競争意識が働いて積極的になってくれればよいのですが。




「・・・・。」


「重畳ですな。」


うーん。反応が薄いですなぁ。




プロミネンス殿はタイタン様の副官であった自分がタイタン様が勝てなかった相手に勝てるわけがないというスタンスでしたので、消極的なのは分るのですが、竜人ミズカミ殿の意向がわかりません。プロミネンス殿は私が無理やりスカウトしたので、その気持ちもわからなくないですが、竜人ミズカミ殿は自ら十人衆に志願したのです。志願しておきながら出撃に消極的とは・・・




まあ、いいでしょう。


エルフの剣士ルール殿と魔術師ルカ殿が四天王ですら勝てなかったレンジャーワンを撃退したのです。


ここは変に動かず、様子をみることにしましょう。




--from 山吹 side---



突然ですが皆さんゲームやりますでしょうか?


僕はやります。


特にRPGが好きです。




で、RPGでたくさんのアイテムが出てくるのですが、貧乏性というかなんというか僕は消費系のアイテムを勿体なくて結局、使わないままで終わっちゃうタイプなんです。


本当は使った方が攻略が楽なんでしょうけど。




なんか、ここで使ったらあとで大変になりそうだから、もうちょっと我慢しようと考えてしまい・・・結局使わないで終わっちゃうのです。




何を言っているかというと・・


前回、エルフの剣士ルールという方との戦闘になったとき、撤退することになりました。


その戦闘で僕の主力がことごとく通じませんでした。




スキーズは砲撃を反射されて撃沈。


薄々感じてましたが、あの砲撃って魔法の類だったのですね。


そのため簡単に反射されました。




スキル「錬金」と炎の剣、レーヴァティンでの組み合わせでつくるバイク軍団は敵のスキルで防がれて自爆しました。




こうなると僕の勝ち筋は薄くなります。


レーヴァティンという剣がありますが僕は剣技は素人です。


せいぜい「パラライズ」というスキルで動きを止める程度でしょうか。




ただ、あの時一つだけやれることがありました。


やれることがあったのですが、ここで使ったらあとでやり直しも利かなそうだし、大変になりそうだから、もうちょっと我慢しようと考えてしまい・・・結局使わないで変身のタイムリミットを迎えてしまったのです。




「はーっ。」


自己嫌悪です。


やれることがあったのに。やらなかったという事ですから。




不意に肩を叩かれました。


見るとライトです。どうしたのでしょう?


「・・・。」


「・・・。あのう、何か?」


何も言わないのでおそるおそる訪ねてみました。


「・・・大丈夫か?」


えーっと、これは僕の心配をしてくれているのでしょうか?


「大丈夫ですよ!」


僕はにこっと笑い返します。


「・・・そうか。」


そういってライトは動きません。


何か考え込んでいるようです。


「・・・剣を学んではどうだ?」


「え?」


「・・・せっかくレーヴァティンという業物をもっているのだ。それに・・・。」


「それに?」


「・・・こういう時は何も考えず無心に剣を振るう方がよい。さあ行こう。」


「え? え?」


何かよくわかりませんが、兵士たちが訓練している訓練場に連れていかれました。 




え? 何で?



--from 赤石 side---


「おお。赤石殿、そのエルフの剣士は強いのだな。」


「うむ。」


我はライオンマンの問いに頷く。


あの剣士は真の意味で強い。


体捌き、剣技。


決してドラウプニルの性能に頼った強さではない。


「おお! それは素晴らしい。次は俺も行くぞ!」


「おい!」


出陣を希望するライオンマンをとめる。


ライオンマンは謎の体調不良に見舞われている。


ただし、魔石の洞窟を離れ地上にいると問題ない。


そのため地上で静養していたのだが、出陣となると魔石の洞窟内にいることになる。


「大丈夫か?」


「おお! 心配してくれるのか?」


「うむ。」


「ありがたい。しかしな、知ってるかと思うが、俺は強い相手と戦いたいのだ。」


「うむ。」


その希望は知っている。


「赤石殿。お主とも戦いたいし、偉大なるデビルフィッシュ殿とも当然戦う。そのために俺はここにいる。」


「うむ。」


そうだ。この目の前の漢は強いものと戦うという1点で動いている。


そのためには陣営は関係ないという破天荒ぶりである。


「その赤石殿と互角の戦いをしたというエルフの剣士。俺が戦いたいと思うのは必然ではないか。」


そういってライオンマンは快活に笑い、俺の背中を叩く。


うむ。痛いのだが。


「無理はするな。」


「おお!心配してくれるのはありがたい! が無理はするさ。俺の生は闘いのためにある。」


ライオンマンが豪快に笑った。



--from ルカ side---


「なんでここにとどまってるんです?」


僕は天井から生えている逆さの樹木にハンモックをつくってぐーたら寝そべっているエルフの剣士ルールに尋ねる。




エルフの剣士ルールは普段の姿からは想像できない強さを発揮してレンジャーワンを撃退した。




「ええっ? 何でって? 逆に何で?」


エルフの剣士ルールが質問に対して質問で返してくる。


言葉足らずな彼女の言葉を補足するなら「なんでとどまっちゃいけないの?」という意味だろう。


「帝都を攻めないのですか?」


僕たちの目的は帝都奪還だ。目的地の目の前でとどまっている理由がわからない。


「えーっ。ちょっ。本気で言ってる? 帝都に行けばあのレンジャーワンて化け物待ち構えてるんだよ。勝てるわけないじゃん。」


「え? それ本気で言ってます? そのレンジャーワンを撃退したのは誰ですか?」


「あーっ。あれ? あれはー。 勝てる条件が揃ったからー勝てた。帝都じゃ勝てる条件が揃わないじゃん。」


「え? どういうことですか?」


「え? そんなこともワカンナイ?」


なんか微妙に会話がかみ合いません。


えーっと、話を整理する必要がありますね。


「ルールさんの考えるレンジャーワンに勝てる条件ってなんですか?」


「んーっ。勝てる条件っていうよりはー。あれかな? ありとあらゆるものをつかって本当の全力を出せる条件? みたいな?」


「その条件を教えてください。」


「んーいいよー。そんな大したことじゃないしー。」


彼女のいう条件はいくつかあったがまとめるとこうなるのかな?


■エルフの得意戦場である森であること。(=ゲリラ戦が行える環境)


■神樹の森であればバフがかかる。木々からシルフを生み出せるので尚よいということ


(=今回はスミスがスキル緑の世界及び自身が巨木化することで偶然、神樹の森に近い状況になったらしい。)


■レンジャーワンと同等の装備があること(=そのために帝王にドラウプニルをねだったらしい。


「ということは。この森にいると勝てるけど、この森以外だと勝てないということですか?」


「はーい。正解。だって、あれは化け物よ。この森にいてようやく互角。一歩でも出たらころされちゃう。だからここにいるのが正解―。」


「なるほど。」


僕は思案します。


確かにここにいれば彼女なら勝てそうです。


ですが・・・状況がそれを許すでしょうか?


帝王様は早期のレンジャーワンを撃破しての帝都奪回を望むでしょう。


レンジャーワン側もやられっぱなしではないと思います。




このまま居続ける。




難しいように思えるのは僕だけでしょうか?






--from シライ side---



なんだ? こいつぁ。何を言っている?


「もう一度いいます。ご提案です。今が戦いの潮目かと思います。エルフの剣士ルール殿と一緒に帝都を攻めるのはいかがでしょう?」


この提案をしているのはプロミネンスだ。


俺はこのプロミネンスに対して警戒している。俺が地底帝国についてから、いろいろ面倒を見てくれたミスクロウに対して危害をくわえようとしたからな。




プロミネンスの提案先は四天王デビルフィッシュ


帝国最高武力と言われた四天王の最後の一人だ


ただし、その姿は痛々しい。


デビルフィッシュもレンジャーワンと交戦したときに瀕死の重傷を負っている。


さすがは神になろうという野心を抱けるレベルの化け物なだけあって、生きてはいる。


さらに普通に立って歩くところまで回復したが、全力での戦闘は難しく養生している。




そのデビルフィッシュの陣営に俺は属しているためミスクロウと一緒にプロミネンスの提案を聞いている。




「ふぉふぉふぉ。潮目か。」


デビルフィッシュは黙ってプロミネンスの提案を受けている。




「ええ、勝ち目が見えています。遠からずレンジャーワンはエルフの剣士ルールが陣取っている場所に攻めてくるでしょう。もちろん攻めてくるからには相応の準備をしてきます。レンジャーワンだけでなく、最強の剣士ライト、元副官ライオンマン、元副官メンドーサ。ゴーレム兵も来ると思われます。そうなると、さすがにエルフの剣士ルール殿だけでは厳しいでしょう。しかしながら、ここでデビルフィッシュ様または、エルフの剣士ルール殿と同じくドラウプニルを持つ白井様が戦場に立てば状況はかわります。」




プロミネンスがちらりと俺を見てくる。


フン、俺に参戦してほしいのか。


デビルフィッシュは本来なら死んでもおかしくない重傷を負っている。


だから俺に白羽の矢が立つのはわかる。




俺もドラウプニルをもっている。


しかもレンジャーワンの3人が持っているのより性能がいい。


Knightという上級職クラスだからだ。


実際に3人と戦ってみた主観だが3倍まではいかずとも2.5倍性能はあるのではないだろうか?


エルフの剣士ルールもドラウプニルをもっている。


となると単純に2.5倍が2人だから5倍の戦力。あいては単純に3名だから3倍の戦力


十分おつりがくるな。


「ふぉふぉふぉ。だそうだ。どうする白井。」


デビルフィッシュが俺に話をふる。


フン、 デビルフィッシュも相当重症だな。


怪我をする前の奴なら、強者と戦うことを希望とし、俺に話を振らずに自ら戦場に出るはず。


それをせずに俺に話をふるか。


動きたくとも動けないのだろうな。


「フン、行くのは構わないが気に食わないことがある。」


俺はくぃっとメガネのズレを直す。


「ふぉふぉふぉ。なにかな?それは?」


「フン、答えはシンプルだ。なぜ発案者のプロミネンスがいかない。」


俺はプロミネンスを見る。


「ふぅむ。それは道理だな。だ、そうだ。プロミネンス。」


デビルフィッシュはしばらく沈黙した後、


「おっしゃるとおりですな。私行きましょう。」


と言った。


沈黙時に何を考えていたかはわからん。


わからんが、これで俺が不在の間にミスクロウがプロミネンスに危害を加えられることはない。


俺が目を光らせている場所にプロミネンスはいるからな。


ミスクロウは俺が帝国にきてからいろいろ世話をしてくれた、いわば恩人だ。


その恩人に何かあっては悔やむに悔やまれぬ。




そういえばミスクロウはどことなく伊藤女史に似ている。


実力はあるのに運が悪いというか間が悪いというか。


伊藤女史はあの後、うまくやっているだろうか?






--from アオイ side---


『不気味ですね。お姫様。』


スキルと化したカグヤが語り掛けてくる。


こいつは何者だろう?




ドラウプニルの力にて変身し、その状態で敵を倒すと敵のスキルを吸収する。


それはいい。




山吹に聞いたらどうもドラウプニルは三柱の神様から与えられた神具のようなものらしい。


何でも大きな魔石に封じられていた神様を開放したらしく、それでお礼にドラウプニルをもらったらしい。




神様の その権能ならそういうこともできるだろう。


問題は、スキル『胡蝶の舞』を吸収したはずなのにカグヤの人格? 魂?まで吸収しちゃってるってこと。




一番初めに手に入れたスキルが『胡蝶の舞』ということもありはじめはそういうもんだろうなと思ってたが、どうも違う。


他のスキルではそういう現象は起きていない。




もし、そうならダルもスキル『錬金』としてカグヤのように体はなくとも生きていそうなものだが、そんなことにはならなかった。




カグヤ。


こいつは何者だろう?




「私はアンタが不気味だ。」


率直にそう思う。


『あら失礼な。思ってもそういうことはいうものではありませんわ。』


「不気味なもんは不気味だ。ところでアンタのいう不気味なことって何さ?」


『あのエルフの剣士です』


「ん? なんで? 強いとは思ったけど不気味とは思わなかったけど。」


『あら、そんなこともお分かりになりませんの。これだから脳筋姫は』


「ちょッとマテ。変な仇名つけんな。戦術姫と呼ばれたことはあっても脳筋姫と呼ばれたことはない。」


『もうしょうがないですわね。話、脱線ばかりして・・・話を戻しますわ。不気味なのはあのエルフ。あのエルフの剣士がなぜ攻めてこないかということですわ。アンタをほぼ一人で撃退しました。余勢を駆って攻めてくるのが普通では?』


「ああ、そのこと。単純にそれだけあのエルフの剣士が強敵ってことでしょ。」


『あら、珍しい。人を褒めないことで有名なお姫様からそんな言葉がでるなんて。』


「ちょっとマテ。私はそんなことで有名じゃない。」


『知らぬが仏と地上のことわざにありましたわ。』


「おい。」


『そんなことよりも、これからどうするおつもりですか? このままでは赤石様の希望は叶えられません。それどころか帝都との目の前に橋頭保とつくられたようなものですわ。戦術的に危険では?』


「あのエルフの剣士の弱みは人数。援軍が来ないうちにライト、ライオンマン、メンドーサにゴーレム軍団で一気に叩く。」


『電撃作戦ですね。 援軍が来たらどうします?』


「考えたくはないけど、帝都まで引くしかない。」




洞窟の通路で迎撃は不可だ。


あのエルフの剣士は一人で私達と互角以上の戦いをした。


洞窟の通路では少人数の戦いを余儀なくされる。


となるとエルフの剣士がさらに優勢だろう。




ただ、何か違和感がある。


見逃している気がする。


なんだろう?




--from カク side---


「なんだかよくわかりません。」


少年兵バドが俺の横にきて呟く。


「どうした?」


「目の前のアレです。」




帝都にある練兵所。


つまり兵士を鍛える場所だ。




そこに最強の剣士ライト様とレンジャーワンの一角、ヤマブキ様が稽古していた。


いい勝負を期待していたのだが・・・


「へっぽこです。」


「ああ、へっぽこだな。」




ヤマブキ様が稽古用の刃引きの剣をとり、ライト様にむかっていく。


が、素人目にもわかるほど、腰が入っていない。


剣の重量に振り回されて、ふらふらしている。


あれなら目の前の少年兵バドのほうが良い勝負をするのではないか?




当然、ライト様にかなう訳もない。


よいようにあしらわれている。




「あんなへっぽこでも。四天王に勝ったのですよね? ライト様にも勝ったのですよね。」


「ああ、そう聞いてるが・・・。」


事実、レンジャーワンは地上に進攻しようとした地底帝国最高戦力の四天王達を幾度となく退け、逆に帝国が占領した国々を開放。帝都まで奪取している。




「どうやって勝ったのか。なんだかよくわかりません。」


「ああ・・。」


そうだろうな。


申し訳ないが、目の前のヤマブキ様を見れば見るほど、どうやったのか見当もつかない。




「なんだかよくわからないといえば、この前の戦いもよくわかりません。」


「この前の戦い?」


「エルフの剣士が攻めてきた時のことです。」


「ん? どういうことだ?」


「あの時、アオイ様の戦術通り、ゴーレム4体をダンジョン内に待機させました。」


「ああ。」


「その戦術が当たって、エルフの剣士は攻めてきたけど、何もできずに逃げて行ったんです。」


「ああ、そうだな。 あそこまで防衛線が楽になるとは思わなかった。」


「でも、そのエルフの剣士が今度はレンジャーワンを撃退したんです。強さって何ですか?僕にはわからなくなってきました。」




・・・・・。




そんな難しいこと。俺に聞くかぁ?


俺だって知りてぇよ。




俺にわかることは、世の中理不尽だらけってことだけだ。


あのレンジャーワンの赤石様もよく言ってるよ。


「なんと理不尽なことか!」ってな。




--from ルカ side---


「げ、来たようですよ。」


僕はダンジョンをこちらに向かってくる敵勢を魔力関知で感知し、エルフの剣士ルールに伝える。


「うげーっ、ほっといてくれればいのにーっ。」


エルフの剣士ルールは元スミスさんであって巨木に生った果実をもしゃもしゃ食べながら答えた。


・・・よく、そんなの食べますね。元スミスさんから生った果実ですよね。


まあ、それでもほっといてというのは同感、同感。




攻める気どころか、ここから動く気は全くないですから。

あの駄エルフは。


「ねえ。どうしよう。」


エルフの剣士ルールが全く緊張感のない声で聞いてきます。




どうしようって・・・


レンジャーワンの猛者を退けた人のセリフですか?


「もう一度、撃退すればいいじゃないですか?」


「はぁ? 馬鹿なの?」


「ちょっ、なんなんですか馬鹿って!」


「だって馬鹿じゃん。攻めてきたってことは対策してきたってこと。そんなのもわからない?」


む・・・すんげームカつきますが、この駄エルフの言っていることは正論です。


勝ち目があるから攻めてきているのです。




「・・・逃げよう。この森は惜しいけど。あーあ、せっかく自分の“森”が手に入ったと思ったのに。」


言うが早いかエルフの剣士ルールは逃げの体制だ。




「ちょっとお待ちください。レンジャーワンを撃退した英雄が戦場を離れられるのはいかがなものかと思われます。我らが来ましたご安心ください。」


不意に声がした。


その声の主は同じ十人衆の一人プロミネンスでした。


その背後にはエルフの剣士ルールと同じく神の力ともいうべきドラウプニルを操る白井


デビルフィッシュ様の副官 ミスクロウ


そして負傷療養中のはずの四天王デビルフィッシュ様までいた。




援軍・・・ですか。




僕は苦い顔をした。


逃げようとした矢先なのだ。


これでは逃げれない。




エルフの剣士ルール殿も同じ気持ちなのかなんといも言えない表情です。




「ふぉ、ふぉ、ふぉ。楽しいお祭りの始まりですぞ。十人衆の諸君。そして・・・。元四天王アオイ殿、いやレンジャーワン!」


デビルフィッシュ様が話した先にはレンジャーワンの軍勢がいました。




これは全面戦争です。




逃げられそうにありません。



--from アオイ side---


最悪のパターンだ。


先ほど、カグヤとのディスカッションで敵の援軍が来たらどうするか?という話をしたが、逃げるしか手がなかった。


レンジャーワン3人とあのエルフの剣士は互角に戦える。


なら、援軍が来た時点で厳しい。




だからライオンマン、ライト、メンドーサ、ゴーレム軍団と現在持てる戦力を結集して援軍が来る前に勝負しようと考えたが、一歩遅かった。


『どうします? 当初の予定通り撤退します?』


カグヤが珍しく緊張感を伴う声をあげた。


カグヤもここが危機であると知っているのだ。




だが、私は首を振る。


逃げるにしても潰走だけはダメだ。


敵に痛撃を与えなければならない。




そのためには・・・逃げるためには・・・一度戦う必要がある。


「いくよ!」


私の短い言葉に赤石と山吹が頷く。




私はドラウプニルを起動し空間に出現したタッチパネルを操作する


「An armor changes Wodan」の機械音が鳴り響く。


私のからだが青い全身スーツにつつまれる。そしてマントのような青藍のパーカーとフレアスカート。鍔の広いとんがり帽子を被り。杖を持った。魔法使い然とした姿と変わる。


「Completion! The magicians・blue」


変身完了の音声がなる。




山吹もドラウプニルを操作する。


「An armor changes Frey」の機械音が鳴り響く。


山吹の体がド派手な黄色の全身スーツと軽鎧に覆われる。


フルマスクのようなヘルメットに頭部が全て隠される。腰に大剣、背にはマントを装備している。


「Completion! The Commander・yellow」


機械音と共に山吹は黄色を基調とした戦士に変身した。




赤石もドラウプニルを操作する。


「An armor changes Tor」の機械音が鳴り響く。




赤石の体が真紅の西洋甲冑のようなものに覆われる。


腰回りは大きなスカート装甲。肩の倍はある巨大な肩当に、膝から下もフレア装甲。右腕には二回りも大きな円筒形の腕あて。左手には腕には炎をデザインしたようなシールドが装着される。


「Completion! The Fighter ・RED」


機械音と共に赤石は真紅の重装戦士に変身した。




「レンジャーワン!いくぞ!っ」




私達は、レンジャーワン。ライオンマン。ライト。とともに駆けた。






対する敵陣。


「フン。その力。もはやお前たちだけのお家芸ではないぜ。」


白井はメガネの位置をくぃっと調整した後、手にもつドラウプニルを操作する。




「An armor changes Lóðurr」の機械音が鳴り響く。




白井の体が白いのフルアーマーにに覆わます。


両手には幅広で身長の倍もあるバスタードソードを持ち


同時に出現した白澤という神獣にまたがります。


「Completion! The Knight ・WHITE」


機械音と共に伊藤は白い騎兵に変身する。




「もーしょうがないなー。」


エルフの剣士ルールもドラウプニルを操作する。




「An armor changes Lóðurr」の機械音が鳴り響く。


エルフに剣士の体が白いマントに覆われる。


大型の白い肩当。


頭部にはティアラを模した冑


軽装だった服は優雅な白銀のドレスアーマーに変化


体一つ覆う巨大な白銀のシールド


「Completion! The Lord ・WHITE」


機械音と共にエルフの剣士は白銀のドレスアーマーに身を包んだ女王様のような戦士に変身した。




図らずもこの奇妙な逆さ森の広間が決戦の戦場と化した。






--from メンドーサ side---


「お願い雷獣達。」


私は戦場に雷獣達を張り巡らせる。


私の役目は3つ。


戦況をレンジャーワンに伝える


戦況を地上の伊藤女史に伝える。


そして背後のゴーレム軍団を操る兵士たちにその戦況にあわせて砲撃指示を出す。




今回、ゴーレム軍団を操るのは兵士たちだけではない石の国からゴーレム職人のシン少年、キュウといった専門家も来てもらいました。




さらには軍団指揮のとれる人材として青の国のカイ将軍も参戦しています。


万が一、この戦いでレンジャーワンが敗れ、帝都が再度帝国のものになると地上も含めた他の国も危うい。そういう危機感からみんなが集まりました。


私はその皆に正確な戦場の情報を伝える。それが私の戦い方です。


「おい。あの白いの二人に魔法は効かねぇんだな。」


ゴーレム軍団を指揮することになったカイ将軍が尋ねます。


「はい、そう聞いています。あと、あの魔法使いも魔法を反射すると聞いてます。」


「厄介なことですなぁ。このゴーレム自慢の砲撃もベースは魔法です。通じんってことやあらしまへんかぁ。」ゴーレム技術者のキュウが渋面をつくる。


「そんな事ないですよ。魔法じゃなきゃいいのですよね。」


同じく技術者のシン少年が意地の悪い笑みを浮かべた。


「どういうことだ。」


シン少年の話を聞いたカイ将軍はシン少年と同じく悪い笑みを浮かべた。


「よし、それでいこう。兵力は一転集中が基本だ。まずは魔法使いを狙う。前回の戦いではアオイがあの魔法使いと戦っていたと聞く、魔法使いが外れるとアオイが動きやすくなるからな。メンドーサ殿、あの魔法使いの位置情報をゴーレムに渡してくれ、シン殿とキュウ殿は兵士達を指示してその位置情報をもとに砲撃開始だ。できるな?」


「はい!」 


私たちは頷く。



--from ルカ side---



うおっと。


突撃してくるレンジャーワンに意識をむけていたら出入り口付近でとどまっているゴーレムが砲撃してきました。


幸い、ここは逆さ森になっています。樹木が盾になり、ゴーレムの砲撃もなかなか届きません。樹木はことごとくなぎ倒されていますけどね。


ただし、反射の魔法の準備はしたほうがよいかな。


あの砲撃は魔法準拠です。反射の魔法で防げます。




僕はどう動きましょうか?


できればエルフの剣士ルールの近くにいて援護という形がいいのでしょうけど、前回はアオイ様が僕の相手になって分断されましたからね。




でも、今回はプロミネンス様やデビルフィッシュ様の一団もいるのでアオイ様はそちらの対応になるのでしょうか?となると僕も動きやすくなるかな?




と考えてたら目の前を高速で何かが通り過ぎました。


えっ。


と驚いて前をむくと、目の前に大量の樹木が砲弾のように僕に迫ってきてます。


あ!


これは反射の魔法で跳ね返せません。


僕はそのまま大量の樹木の砲弾を受け・・・・






--from ルール side---


「ルカぁ!」


魔法使いルカが大量の樹木に圧し潰されちゃったよー。


敵のゴーレム兵。樹木に阻まれるのに無駄に砲撃してるなー。阿保だなぁと思っていたら、そのなぎ倒した樹木を拾って投げつけてきやがった。


あれじゃぁ。対魔法じゃぁ防げない。


単純に樹木という砲弾を大量に受けルカがその樹木に埋もれちゃいました。




「すんげー、速攻。さすが戦術姫の部隊ってことね。」


こちらも戦うにしろ逃げるにしろのんびりしてらんない。


地面に手をかざす。地面から背中にトンボの羽が生えた女剣士=シルフが何十名と現れる。


逆さ森の樹木からもシルフが現れる。


「さらに倍っ! af-kárr adj. atbeini n。」


増殖させる魔法を唱えシルフを増やす。


「さあ、いくっ! いくわよー。やっちゃってー。」


といってもシルフは前には出さない。


ドラウプニルで変身し、新たに得たスキル『王の法、王の盾』は背後にいる部下を守る結界陣。前にいたら効果はないという結構条件がメンドイ、スキル。


ついでに部下を守るという条件だから、例えばデビルフィッシュは部下じゃないからスキルは発動しない。と思う。試してはないけどねっ。


ついでに部下がいない、一人の時でも発動しない。残念。




だからスキル『王の法、王の盾』をいつでも発動できるようにシルフは後ろに下がってもらう。それでー。シルフには風の魔法で遠距離攻撃してもらう。


そういう陣形をとれば『王の法、王の盾』をいつでも発動できるし、攻撃可能もできる。




「おお! 風魔法かっ! 勝負の甲斐があるな。ならばこれはどうだっ!サイクロンクローっ!」




えーっと、迫ってきたのは素っ裸の男。


顔が特徴的な獅子だから、あれが一部で有名なライオンマンかな。


なんでも強いものと戦うことにしか興味がなくて、


デビルフィッシュの副官で


そんで強いものと戦うって興味から、強いものと戦うチャンスの多いレンジャーワン側にいる変態。




うわっ。サイクロンクローなんてなんかダッセーっ名前言ってるけど、竜巻魔法じゃん。そのダッセーネーミングの魔法がシルフ達の風魔法と衝突して相殺されちゃった。


数多くのシルフの風魔法を一人の竜巻魔法で防ぐなんてどんだけなのさ。




ん? 別方向から殺気?? いや剣の気配?


素直に剣の気配した方向に剣を向ける。


生き伸びるコツは素直さだよね。変に脳を働かせるとその分、機会を逃す。




その向けた剣に剣がぶつかる。


衝撃が来るが、それをまともに受けると2撃目、3撃目で遅れる。


慣れた手さばきで剣の衝撃をふわりと逃す。




相手は・・・げ、最強の剣士 ライトじゃん。




ちょ、ちょっとまってよ。


素っ裸の変態戦闘狂と最強の剣士二人がかりは無理だってー。



--from ライオンマン side---


「おお、ライト殿。それは殺生な。」


俺はエルフの剣士と交戦を開始したライト殿に軽く抗議を行う。


今回の戦いの楽しみの一つにレンジャーワンを撃退した、エルフの剣士との闘いがある。


その楽しみを奪われるのは困る。




「・・・俺も一介の剣士として、彼女と戦ってみたいと思っていた、ここは譲れ。」


おお、その気持ちはわからないではないが




ライト殿の剣技はすばらしい。


それが強みでもあり弱点でもある。


剣のみ、一対一というルールであれば最強だろう。


だが実戦は剣のみということはありえない。


魔法もあるスキルもある。剣以外の戦闘方法もあるだろう。


対人戦のみとも限らない。一対一とも限らない。


そこが彼の弱点である。




単純に戦闘力を考えると最強と言われる剣技はライト殿の方が上回るかも知れぬ。


しかしながらあのエルフの剣士もゴーレム2体を倒す実力がある。さらにはシルフを使役し、スキルも使う、ドラウプニルによりレンジャーワンと同等の鎧もある。




総合力ではエルフの剣士に軍配があがるのではないか?




うむ。俺が戦った方がよいとは思うのだが。




お。なんだ?


意識が・・・


体を見ると黒い炎とも魔力の波動とも怨念ともいいがたい黒い怨念のようなものが俺の体を包み込んでいる。


「これは! プロミネンス殿の!」


これは俺達用につくられた魔法だ。まずい意識が落ちる。


俺が「願い」にのっとられるっ!


俺は片膝をつく。


落ちかけている意識の中でふと見上げるとナイフを振り上げるプロミネンス殿の姿があった。


「裏切者は死ぬがよい。」


プロミネンス殿のナイフが振り下ろされる。


くっ、あの地上で見た映画の場面がフラッシュバックされる。




戦う事も許されず、計略にはまり、魔術によって緩やかに弱体化されたあげくに、裏切り者としての不名誉な死を受ける。あの映画だ。




偉大なるデビルフィッシュ様とともに現れた刺客に殺される。


まさに同じ場面ではないかっ!




このままっ。このままっ映画と同じように、戦うこともできずに殺されるのかっ!




---from 赤石 side---


「ふぉふぉふぉ。吾輩と戦うのはお主か。」


目の前にデビルフィッシュがいる。


「うむ。」


我は頷く。


考えれば姉が遭難した時、敵としてであったのがこの目の前のタコ男である。


あの時から幾度となく戦った。


因縁の相手といえるであろう。


我の体が動く。


ハイキックを放つ。


タコ男は素早く屈み、水面蹴りを放つ。


このパターンは既に知っている。




軽く跳び、ニードロップを落とし、顔面を殴った後、離れる。


本来であればニードロップの後、関節技を仕掛けたいのだが、奴の頭には八つのタコの足がある。あの足が厄介で、槍のようにこちらを穿つ。鞭のように打撃を与えるなどの攻撃をしかけてくる。


普通の人間相手だと考えると痛い目にあう。


一撃を与えたら素早く離脱しなけれならぬ。




「ふぉふぉふぉ。吾輩の技を研究しておる。」


デビルフィッシュは素早く起き上がる。そこまでダメージは無いようだ。


「そんな余裕を構えている暇があるのか?」


我はスキル「幻獣の角」を発現させる。


このスキルは空中で2段跳躍するためのスキルだが、副次的な効果で額にアルミラージの角が現れる。この角、長さが自在に変化し長槍のような長さにもなる。それも瞬時にだ。


これを利用すると一瞬で敵を貫くこともできる。


我が幻獣の角がタコ男の頭を貫く。


と思った瞬間。


デビルフィッシュが幻獣の角をフロント・ヘッド・ロックの要領で片脇にとらえる。


そのまま幻獣の角をホールドし体重を乗せて後方に倒れこむ。


ぬう、DDTか!


このままでは幻獣の角が折れると直感し、我は流れに逆らわず一回転して受け身をとり、ホールドされた幻獣の角を外す。




ぬう、さすがはタコ男。


一瞬で決めにくるとは。


「ふぉ ふぉ ふぉ これは躱すか。楽しいのぉ。」


タコ男の赤い顔が黒く変化した。



---from アオイ side---


私は山吹と一緒に有翼の女性の敵に向かう。


ライオンマンから仕入れた情報によるとミスクロウという名前らしい。




速攻で彼女を倒す。


そうしないと魔法無効の技を持つ白井という厄介な敵とミスクロウ同時に相手しないといけない。それは悪手だ。


現在、白井には山吹に頼んでバイク軍団を召喚してもらい、その相手をしてもらっている。


魔法無効の技を持ち、乗騎にまたがる戦闘スタイルの白井。


だから魔法ではなくバイクの突撃という物理攻撃、そして数で機動力を奪う。




その間にミスクロウを倒す。


「gandr! gandr!」


私は射程距離に入ったミスクロウに対してマジックミサイルを乱射。


弾幕をはる。


ミスクロウは飛翔して逃れる。


あの飛翔能力はシンプルだが厄介だ。


今も飛翔能力さえなければ逃れられない弾幕を飛翔することで軽く逃れている。


「パラライズ!」


山吹がスキルを使う。巨大スライムが奥の手にしていた麻痺の邪眼スキルだ。


これも軽やかに飛んで躱された。


視界に入らなければ邪眼も発動しないということを知っているのだろう。




「お命頂戴。」


空中にいたミスクロウが手に持つ槍のような長い得物をこちらに向け、スィーっと急降下する。


狙いは山吹かっ! ミスクロウは山吹のパラライズの視線を躱すために、いわば死角にいる。


「イエローっ。上っ!」


山吹は私の注意を受けてレーヴァティンを盾にしながら避けた。


躱されたミスクロウはスィーっと再び飛翔する。




「地味に厄介ね。ライオンマンと並んでデビルフィッシュの副官なだけはあるってことか。イエロー大丈夫?」


「はい! 一応、大丈夫です。このレーヴァティンやらドラウプニルがないと、今のでやられてましたけど!」


私は念のため山吹を確認したが目視でダメージを受けている様子はない。


『前線向きではない山吹様が最前線は配置ミスではないでしょうか?』


カグヤが珍しく心配した声をあげる。


それはともかくカグヤの指摘は正しい。


山吹の能力は後方支援で光る。直接、剣を舞わすよりもバイク軍団を呼び出したり、眷属である空飛ぶ船スキーズに搭載された大砲での砲撃で活躍してきた。


今のミスクロウ戦のように 直接戦闘には向かない。


しかし、ドラウプニルという強固な防御力がないと戦いのステージにすら立てない。


そういう意味ではゴーレム軍団や青の国のカイ将軍では難しく、私と山吹で倒すしかない。


ミスクロウの武器は飛翔能力と機動力。どうにか動きを止めたい。




そのミスクロウを遠距離からいくつもの光の砲撃が襲う。


ミスクロウがひらりと躱す。




砲撃のあった方を確認する


ゴーレム軍団とそれを率いるカイ将軍の姿があった。




レンジャーワンが撤退を余儀なくされた、この状態に危惧し、一気に勝敗を決めるため青の国のカイ将軍に相談したところ、参戦を希望した。


ちょうどゴーレム兵を指揮する人材に不足を感じていた私は渡りに船とお願いした。


そのお願いは正しかったようだ。


攻めあぐねているこちらの戦況を見て、ミスクロウに対して援護射撃をしてくれたらしい。



「それにしてもミスクロウの回避能力はずば抜けてる」


『ええ、そうですわね。さすがはデビルフィッシュ様の副官に選ばれる実力ありますわ。』


カグヤが私の意見に珍しく同意する。




ミスクロウは私のマジックミサイルの乱射もゴーレムの砲撃も全部躱しきっている。


地味だが恐ろしい回避能力だ。




「お命頂戴。」


空中にいたミスクロウが手に持つ槍のような長い得物をこちらに向け、スィーっと急降下する。


また、山吹を狙って急降下した。


徹底的に山吹狙いらしい。それは戦術的に正しい。


このミスクロウ戦では攻撃手段もなく、案山子状態だが一方で山吹がレーヴァティンとスキル錬金で組み合わせて呼び出したバイク軍団による突貫で白井を攻撃。その結果、白井は身動きできない状態となっている。山吹を倒すと、スキルで生み出されたバイク軍団が消えその身動きできない白井の援軍が見込めるのだから、そのミスクロウの狙いは正しい。




だからこそ動きが読める。


「basta!」


私は捕縛の魔法を唱える。


「!」


ミスクロウが空中での制御を失い落下する。


真下にいた山吹がレーヴァティンで炎を生み出し、その炎で絵を描く。


〇にSTOPの文字が描かれた炎の盾が生み出された。


その炎の盾にミスクロウが落下しダメージを受けた。


山吹がレーヴァティンという魔法の剣を持ちながら斬らなかったのは単純に腕がないからだと容易に想像がつく。落下する相手を重量のある剣でタイミングよく斬りつけるのは簡単なようでそれなりの技量がいる。その技量がないため、罠を設置する感覚で炎の盾を設置したのだろう。これならタイミングは無関係。


山吹の狙い通りミスクロウに炎の盾がクリーンヒットした。


「念には念をいれます! パラライズっ!」


山吹が麻痺のスキルを発動させる。


私眉を顰める。


ミスクロウは既に捕縛の魔法にとらわれている。山吹がさらに麻痺のスキルをつかったのは、戦術や効率というよりも空中をひらりひらりと飛び回るミスクロウの回避能力を嫌ったという感情だからだ。


まあいい。いずれにせよ。これでミスクロウは無力化した。と自分を納得させようとしたとき、戦況に変化が発生した。




白井がバイク軍団の包囲を突破して乗騎とともに突破してきたのだ。


カイ将軍が指揮するゴーレム軍団の遠距離砲撃が間を置かず発射される。


こういったレスポンスの早い判断はさすがカイ将軍。




「フン! この程度で俺が止まるか! 斬魔剣!」


白井が巨大な剣をふるう。


その剣がゴーレムの砲撃を防ぐ。


ゴーレムの砲撃は光魔法の応用でできている


白井の剣は文字通り魔法の類を斬る。


白井にはゴーレムの砲撃が通用しないのだ。




「厄介。」


『同感ですわ。』


私とカグヤは同じ感想をもった。


だってそうじゃん。




魔法が通用しないってことは私は何の役にも立たないってこと。


それは魔法無効かという強力なスキルを持つカグヤにも言える。そもそも魔法を使わない相手に魔法無効化は意味がない。


『せめて赤石様がもう一人いたら違うのでしょうが。』


珍しくカグヤが愚痴を言う。


「へん、そんなことを言って未来が変わるなら。何度でもいうわ。それよりもカグヤ。アンタを倒すために磨いた術を試すわ。 「melta diki」!」


私は呪文を唱え地面を杖でたたく。




白井と私の間に巨大な穴が発生する。


その穴の中身は溶岩だ。


火と土の複合魔法。この魔法の利点は発動は魔法だが、それで生み出された溶岩は魔法ではない本物だということだ。カグヤのスキル『胡蝶の舞』では打ち消せないのは実証済みだ。




白井を溶岩の海に落とすため、その穴を広範囲に設定する。


「ちょっと、きついか?」


私は眉を顰める。


広範囲に設定したとたん魔力の消費量が増える。




私は魔法使い魔法を使うと魔力が減る。


そのため魔力マネジメントが非常に重要になる。


私が消費量の少ないマジックミサイルを多用するのも、魔力マネジメントの一環だ。


それを気にしなくていいのならもっと大きな魔法を頻繁に使っている


そのマネジメント上、予想外に魔力を持ってかれた。


体感にして1/4だろうか?




もっとも出し惜しみして魔力は残っていたけど死にましたじゃ意味がない。


「イエローっ!」


私は山吹に合図する。


山吹はバイク軍団を再び展開。溶岩の穴の左右から白井を攻めてもらう。


「フン! この程度で俺を止めたつもりか!」


白井が乗った乗騎白澤が大きく跳躍する。


バイク軍団を嫌い、溶岩の穴を超えようという意図。




この溶岩の穴を超えられたら私はあの大剣の餌食になるだろう。


緊張で汗ばむ。


「Járnsverð! Járnsverð! Járnsverð!」


私は呪文をとなえる。




同時に溶岩の穴から剣が射出される。


それも一振りじゃない。弾幕のように溶岩の穴を飛び越えようとした白井を刺突せんと襲い掛かる。


溶岩も射出された剣も魔法じゃない。斬魔剣では防げない。


どーよ。私自身を囮にした作戦。




「フン。さすがだ! だが、甘い!」


白井が乗騎にしていた白澤を踏み台に跳躍する。


白澤は無数の剣に貫かれ落下したが、白井自身はこちらに向かって剣を振るう。


「斬魔剣っ!」


私は死を覚悟した。


---from ライト side---


「・・・魔法剣士か。」


俺はこれで何度目かになる斬撃をエルフの剣士に放つ。


このエルフの剣士は強い。


剣技もさることながら魔法を上手に剣士として最適な形で使う。


屈折で幻視で姿を晦ます。空気振動を剣にまとい剣に触れたものを破壊しようとする。


ベースは風魔法のようだが、それを魔法使いのように直接攻撃に使用せず、自らの剣技の向上に魔法を使うその姿勢に俺は好感を覚える。


だが、剣技というステージで戦うのであれば俺は負けられない。


実際に、なんどかエルフの剣士を斬りつけている。


剣の試合であれば、そこで終了だ。


今、終了とならないのはあの白銀の鎧の所為だ。


あればレンジャーワンと同じドラウプニルとかいう神の御業でつくられたスーツだという。


ああ、もっともだ。


なんども通常なら致命の一撃を与えているのだが、あのスーツのお陰でダメージはあたえているものの倒せずにいる。


クソッタレっ。レンジャーワンといい俺はどうもあのドラウプニルの装着者とは相性が悪いらしい。


あの時もレンジャーワンに対して技量では勝っていた。だが、ドラウプニルという装備に負けた一面もある。


こちらも氷の魔剣という新装備を手に入れたというのに突破できずにいる。


「・・・試してみるか?」


この、氷の魔剣。せっかく手に入れたのだから使ってみるか。この膠着状態を打破できるかもしれない。敵のエルフの剣士も剣技だけでなく風魔法を組み合わせて戦っている。こちらも剣技だけでなく、ほかのエッセンスを組み入れるのは悪くはないだろう。




こちらがコンパクトに刺突を繰り返す。


エルフの剣士がおそらく風魔法を組み合わせているのであろう、通常では難しい動きでひらりひらりと躱す。


俺の手が刺突のモーションで伸び切った隙を見て、俺の腕にダメージを与えようとエルフの剣士が剣を繰り出す。


相変わらず中々の剣筋だ。


だがわずかに俺には及ばない。


繰り出された剣を巻き上げて、わずかな隙をあらわにしたエルフの剣士の剣を持つ腕を狙う。


剣を当てることに成功はしたが、まただドラウプニルの防御に阻まれて斬ることができない。ここまでは今までと同じ。


ここで氷の魔剣を発動させる。氷の魔剣の権能は単純だ。触れたものを凍らせる。


「!」


エルフの剣士の腕を斬ることは叶わなかったが、凍らせることは成功した。


剣士にとって腕を自在に震えないというのは致命的だろう。


炎の魔法を使って凍結解除されることが懸念ではあったがどうやらエルフの剣士は風魔法のみを使用するようだ。タイタン様のように炎の魔法を使用するような雰囲気もない。




敵の腕は封じた。


ここで一気に決める。




俺は一気に間合いを詰める。


『王の法、王の盾!』


「何っ!」


俺の目の前に巨大な盾のような魔法陣が出現する。


俺はその魔法陣に衝突し吹き飛ばされた。


しまった! まだ、こんなスキルを残していたのかっ!


地べたに転がる俺に逆さに生えた樹木から無数の蔦が伸び、俺を補足する。


「あっぶなーっ。さすがは最強の剣士。でも、これで形勢逆転ね。」


エルフの剣士がにこりと笑った。


---from 山吹 side---


それはとっさの出来事でした。


アオイちゃんが危ないと思った時には飛び出していました。


目の前には白井さんの斬魔剣。


僕はアオイちゃんを斬魔剣から逃すために突き飛ばして・・・そこで意識が途切れました。




気が付くと真っ白な空間でした。


ああ、これが有名な異世界転生ですね。異世界転生物のノベルではトラックに轢かれて死亡して、過労死して神のいる空間に行き、別なファンタジーな世界に転生するのが定番です。


ここはその場所を彷彿させるような場所です。


ということは僕は白井の斬魔剣に斬られ死亡したのでしょうか?




光り輝く人影が現れました。


おそらく神でしょう。


ついに異世界転生を体験することになるのでしょうか?




「何を現実逃避してるんです? それにお会いしてましたよね。」


光り輝く金色の神が話しかけてきました。若干、呆れた声が混じっているのは機にせいじゃないでしょうね(苦笑)。そして僕のドラウプニルを指さします。


やはり、そうですか。


現れた光り輝く金色の神は僕にドラウプニルを渡してくれた神のようです。


「いやあ。遂に死んで異世界転生するのかなと思い。」


「何を言ってるのです? まだ死んでませんよ。」


「え? どうしてですか? 僕は白井に斬られたはずです。」


「斬られてませんよ。まだ、その手前です。」


「え? どういうことです?」


「見た方が早いでしょう。」


そういうと光り輝く金色の髪が手をかざす。何もないところに映像が現れました。


例えるなら空中にモニタ画面だけ出力された感じです。




そのモニタには僕に向かって斬魔剣を振り上げている白井の姿が見えました。


自分を俯瞰してみる。それも数秒後に死ぬ自分の姿をです。


何か変な気持ちです。




「どういう原理でこのようになっているかわからないですけど、これって1秒もしない間に斬られちゃいますよね。」


「ええ、仰る通りです。そこで質問です。それでよろしいのですか?」


それでよろしいかと言われるとよろしくない。斬られるのも死ぬのも嫌です。しかし僕の理性的な部分がもうどうしようもない。と訴えてます。




実際、僕には無理だったのです。


魔石の研究中に三柱の神と出会い、ドラウプニルを渡され半ばゲーム感覚で参加していたところは正直あります。


もちろん、尊敬するリサ教授を救出するにあたって 便利な力を手に入れたという気持ちも正直ありました。


また、正直、打算もあります。


リサ教授を救わなければ、リサ教授がいなければナレッジや資金面を含めた人脈面でも僕の研究を進めるのが困難になる。だからこそドラウプニルという神の力を活用してでも救出するぞという打算。


ドラウプニル自体、魔石の研究成果です。その研究成果を試せるという打算。


でも。


思い返すに先に述べたゲーム感覚というのが一番、僕の心情にあったいるように思えます。


なにせ、致命傷の攻撃を受けても痛い程度で済む。眷属を召喚し、多様なスキルを使うことができる超人になれるのですから。




でも。




結果的に僕には荷が重すぎたようです。


最初から分かっていたことではあります。


僕は赤石クンのように武術の心得もなく、アオイちゃんのような戦術家でもないのですから。


普通に運動部でスポーツをやってましたが、別に大会に出るほどの腕前でもないですし、大学にもいけましたが、別にそれほど頭が良いというわけでもないです。


ただ、ただ、ゲームと並んで興味のあった最新の魔石の研究を好きなだけやれたという幸運はちょっとだけ他の人と違うところがあるかも知れませんが、言ってみればそれだけです。




光り輝く金色の神は中空のモニタを一つ増やしました。


そこにはアオイちゃんが映っていました。


「彼女は仮に君が斬られたなら、その次に斬られて命を落とすでしょう。」


僕は内心眉を顰める。


あの時はとっさに行動したけど、冷静になって考えればその通りです。


認めたくはないですが、僕のとった行動はアオイちゃんの命を刹那の時間延ばしただけ。


犬死です。




光り輝く金色の神は中空のモニタを一つ増やしました。


そこにはライオンマンさんが映っていました。


プロミネンスの放った呪文に苦しみ、動けず背後からナイフを持ったプロミネンスに襲われようとしてます。


「彼はこのまま闘う事も許されず。喉をナイフで斬り割かれ命を落とすでしょう。」


僕は内心眉を顰める。


ライオンマンさんが不調になった原因は二つと聞いてます。一つはプロミネンスの魔法。もう一つは地上にある映画館での出来事と聞いてます。


そのうちの一つ、プロミネンスの魔法が再度、ライオンマンさんを襲ったようです。


認めたくはないですが、冷静に考えると、このままでは光り輝く金色の神のおっしゃるとおりになるでしょう。




光り輝く金色の神は中空のモニタを一つ増やしました。


そこにはライトさんが映っていました。


短い期間でしたが僕に悩む僕に剣の稽古をつけてくれたライトさんです。


そのライトさんはこの空間に無数に存在する逆さの木から伸びている無数の触手に手足をとられ身動きが出来ない状況になっています。


そこにエルフの剣士が抜き身の剣を振るいながら迫っています。


「彼はこのままエルフの剣士に斬られ、最強の剣士としては剣に斬られるという屈辱的な最期をとげるでしょう。」


僕は内心眉を顰める。


その通りです。




光り輝く金色の神は中空のモニタを2つ増やしました。


一方には敵の四天王デビルフィッシュと相対する赤石クン


一方にはゴーレム軍団などで後方支援をしているカイ将軍、ゴーレム技術者である石の国のシン少年やキュウさん。そして情報支援をしているメンドーサさんに実際にゴールム運用してくれている兵士の皆さん。


が映っています。




「彼らは君が倒れた後、連鎖的に倒されるでしょう。」


僕は眉を顰めます。


その通りです。


おそらく僕やアオイちゃんを倒した白井さんやミスクロウさん。プロミネンスにエルフの剣士は赤石クンに殺到するでしょう。


そうなるとさすがの赤石クンでも無理です。倒されるのは必然です。


その後に、後方支援部隊が攻撃を受けるのは火を見るより明らかです。




光り輝く金色の神は中空のモニタを一気に複数増やしました。


そこには僕達が開放してきた「青の国」「川の国」「石の国」「地の国」そして「地上」が映し出されています。


「その後、これらの国は戦禍を被るでしょう。」




その通りです。僕の冷静な部分がそう言ってます。


こんなものを見せてどうするんですか! どうしようもない! 僕の感情の部分がそう言ってます。




・・・・


・・・・


・・・・






深呼吸します。


ここで感情的になったら、たぶんですがダメなんです。


ダメなんです。




何か意味があるはずなんです。


光り輝く金色の神が単身現れ、僕にこの映像を見せている意味があるはずなんです。




僕の今を俯瞰します。


見下ろし型のゲームのように。


自分視点ではなく俯瞰した視点で考えるんです。




・・・・


・・・・


・・・・




「これは僕が死ぬとダメになるパターンですね。」


これは因果関係を示しているビジョンです。


その出発点は僕の死です。


それをこの光り輝く金色の神が示しているんです。




「その通りです。もう一度、お伺いします。それでよろしいのですか?」


光り輝く金色の神が再び問います。




そんなわけないじゃないか。でも、どうしようもないじゃないか!


という感情が湧き出てきます。




・・・・


・・・・


・・・・




いやいた、その感情を出すのは悪手です。


落ち着くのです。


今自分の身に起こっていることを俯瞰するのです。


何のために光り輝く金色の神がきたのでしょう?




おそらく打開策がある。


あるのです。


でないと光り輝く金色の神がきた意味がありません。




「あ。」


僕はここで一つ思いつきます。




前回の戦いのことです。


撤退することになった戦いで一つだけやれることがありました。


やれることがあったのですが、ここで使ったらあとでやり直しも利かなそうだし、大変になりそうだから、もうちょっと我慢しようと考えてしまい・・・結局使わないで変身のタイムリミットを迎えてしまいました。




そのことを悔いてました。


もし、その一つだけやれることをやっていたら・・・




僕はステータスを開きます。


そして、そこに書かれている文字を、もう一度読み返します。


その末尾にはこのように描かれています。




Congratulations:レベル50を超えたため一度だけタイプの選び直しが可能です。


これが僕がやってなかったことです。




僕はタイプ一覧を出します。


■Fighter


■Magician


■Healer


■Tank


■Sniper


■Ranger


■Commander


■Summoner


■Alchemist




■knight


■Sage


■Assassin


■Load


■Monk


■berserk




この中からタイプを選ぶというのが僕がやっていなかったことです。


再度検討です。


赤石クンがFighter アオイちゃんがMagician 僕がCommanderです。


そして敵側の白井さんがknight エルフの剣士がLoadのようです。


これは変身時のアナウンスからの予測です。




となると最低でも彼らを上回るためには同じ上級職である。


■knight ■Sage ■Assassin ■Load ■Monk ■berserk


からの選択になるでしょうか?


この中では■Sageでしょうか? その他のタイプは直接戦闘が前提のようです。僕にはむかないでしょう。


いわゆる「賢者」ですね。ゲームでは魔法のエキスパートで攻撃・回復あらゆる魔法を使用できる。


うーん、どちらかと言えば僕よりも魔法使いであるアオイちゃんにふさわしいタイプのような・・・




・・・・


・・・・


・・・・




いけない、いけないです。


これだとまた決められない。


また、同じことを繰り返します。




考えるんです。何かあるはずなんです。


今の思考で駄目なら。一段高い視点で俯瞰して考えるんです。




・・・・


・・・・


・・・・


・・・・




僕が選べないのは、ここに現状を打破するタイプが無いということです。


ここは逆に考えます。


「ここにないタイプも「選ぶ」ことはできるのでしょうか?」


僕はまっすぐに光り輝く金色の神をみて尋ねます。


「たどり着きましたか。」


光り輝く金色の神は平たんな声でいいます。表情も光り輝いているのでよくわかりません。


ただ、「気づきましたか?」ではなく「たどり着きましたか?」と尋ねてきました。


おそらく、僕がした今の質問こそが今の窮状を破るための「解」なのでしょう。。


「君は白兵戦にはむかない。それよりもゲームのように全体を俯瞰し、最良の一手を打つのが君の本領であり仕事だよ。これ・・・」


そう言って光り輝く金色の神は一つのモニタを指さす。


そこには今にも白井さんに斬られそうな僕が映っている。


「こんなのは君の本領じゃないんだ。今から君の本領を発揮する最上級クラスを提案しよう。もう一度、クラス一覧を見てごらん。」


僕は言われるがままにクラス一覧を見ます。


そこには今までになかったクラスが記載されていました。




これが僕の本領を発揮できるクラス。




「白井とか言ったっけ。彼のクラスが上級クラスならそれは最強級クラスだ。ただし、デメリットもある。今まで見せなかったのも、そのデメリットがあるからさ。大きな力には必ず反転があるからね。それでも選択するかい?」


光り輝く金色の神は僕を試すかのように尋ねる。


この質問には思考はいらない。


「この現状を打破することができるなら。僕が死を回避することでみんなの不幸な未来を変えることができるなら、どんなデメリットも受けいれます。」


僕は迷わずそのクラスを選択しました。


その瞬間、この白い空間も目の前にいる光り輝く金色の神も徐々に消失していきます。


最後に光り輝く金色の神が言いました。


「君の本領は前線に出ることじゃぁない。勝つための布石を作ることだよ。それこそゲームのように全体を俯瞰してね。人には役割がある。役割を演じるのがロールプレイングだよ。それを忘れないでくれよ。」




・・・・


・・・・


「An armor changes Frey」の機械音が鳴り響きます。


「Completion! The vala・yellow」


機械音と共に僕は変身した。


・・・・


・・・・




気が付くと目の前に白井と斬魔剣の白刃が迫ってました。


僕は「詠い」ます。


その詩は威力を伴う衝撃破となり白井さんを白刃ごと吹き飛ばします。


その威力は白井さんを吹き飛ばすにとどまりません。




このフィールドを埋め尽くす逆さの森も、ライトさんを縛っていた蔦も、そのライトさんを倒そうと白刃を構えたエルフの剣士も、その周辺にいたシルフも、ライオンマンさんを倒そうとしていたプロミネンスさんも全部、吹き飛ばしてしまいました。




いわばオールリセットです。




「好機! 『Sigrún!』」


アオイちゃんがすかさず体制を崩した白井に全力の魔法を叩きつけます。


白井さんの手元には剣がありません。


先程の僕の詩で吹き飛ばしましましたから


つまり魔法を斬り割いて防ぐ、いつもの行動がとれません。


「!」


まともにアオイちゃんの全力の魔法を叩きつけられ白井さんが吹き飛びます。




「きゃーっ。」


悲鳴がこの空間に鳴り響きます。


見るとエルフの剣士がライトさんに斬られています。


先程の僕の詩で蔦の呪縛から解き放たれたライトさんが反撃にでたようです。


ドラウプニルの加護を受けているエルフの剣士を斬りつけるとは、最強剣士の名は伊達ではなかったようです。




「おおっ! ここが踏ん張りどころぉ!Fimbul!Jǫtunn!Fimbul!draca!Fimbul!Óscópnir!sœkja!  fé!」


プロミネンスの魔法を受け倒れていたライオンマンさんが立ち上がり呪文を唱えます。


プロミネンスが僕の詩で吹き飛ばされたので魔法の呪縛から解き放たれたようです。




唱えた魔法は人化魔法解除の魔法。


ライオンマンさんが本来の巨大な姿を現します。




同時に巨大な竜巻が発生。ライオンマンさん得意の風魔法です!


僕の「詩」であらかた吹き飛んでいた。逆さ樹木や敵ですが、これでダメ押しですね。


文字通り全部吹き飛ばしました。



---from 赤石 side---


「ふぉ、ふぉ、ふぉ。ライオンマンめ。中々やりおるわ。」


タコ男が巨大化したライオンマンを見て目を細めている。




周囲はライオンマンが風魔法で発生させたであろう暴風。


このドラウプニルの加護を受けた我らと違い、生身でこの暴風の中吹き飛ばされずに泰然としているのはさすがである。


「よいのか?」


我は尋ねる。


ライオンマンはこのタコ男の部下であったはずだ。その元部下がタコ男の味方を吹き飛ばしている。尋常であれば上司であるタコ男は怒ってもよい場面である。


それなのにどちらかと言えば喜んでいるように思える。


「ふぉ、ふぉ、ふぉ。奴は強さを願った。闘いを願った。そのためより強者と戦うことを願った。その願い通りの生き様を貫こうとしておる。羨ましいことよ。」




ふむ、タコ男の答えは我が尋ねた主旨とはズレた内容ではあったものの理解はできる。


組織人としてはどうかとは思うが格闘家としては純粋に己より強いものと闘いたいという欲求はある。このタコ男は部下であるライオンマンのその欲求を最大限認めているということはわかった。




「しかし、ここでお主と戦い、その後、ライオンマンとの闘いに興じてもいいが、ここでは狭すぎる。 」


タコ男は誰に問うのではなく言葉を続ける。




うむ。今いるこの広間は元々、広くはない。


例えば我の眷属、巨人シアルフを呼びだしたら、スペースオーバーである。


同じサイズのものは入らぬ。




ライオンマンが本来の巨大な姿を現した。


タコ男もライオンマンと闘うとなると巨大な姿で闘いたいのであろうが、この広間ではスペースが許さぬ。ということであろう。


巨人が二人、闘うスペースはない。




「この場は吾輩が尊敬するライオンマンに譲ろう。」


そう言ってタコ男は背を向け歩き出す。


「のう地上の勇者よ。」


タコ男が背を向け、歩みを止めず我に話しかける。


「ライオンマンは強者と闘うという願いのために命を燃やそうとしている。」


「うむ。」


「願わくばその願い聞き届けてくれい。」


そう言ってタコ男は去っていった。




そのタコ男の撤収とともに敵もこの撤退した。




---from 山吹 side---


「ちょっとアンタ誰?」


「ぬう。何者だ。」


「だ、だ、だ、だれですか。」


「・・・何者だ。」




ええーっ。


皆から、誰だ扱いされてます。


え、何でですか?


僕がみんなわからなくなったのですか?




あ!




もしかして




あの金色の神の言葉を思い出します。




『最強級クラスだ。ただし、デメリットもある。今まで見せなかったのも、そのデメリットがあるからさ。大きな力には必ず反転があるからね。それでも選択するかい?」




僕の今のクラス。


最強級のクラスだけどデメリットがあるので、選択肢に表しなかったと言っているわけですね。




これはそのデメリットの所為でしょうか。


皆から忘れ去られてしまうという「忘却」というデメリットがあるということでしょうか?


だとしたら恐ろしいデメリットです。




「おお、ご婦人が困っているではないか。戦局を180度ひっくり返し、我らに勝利をもたらしてくれた、言わば勝利の女神だ。彼女を困らせるのはどうかと思うぞ。」


ん? ライオンマンさんがフォローに回ってくれたが、その言い回しが気になる。


ご婦人? 女神? 彼女?




嫌な予感がする。




「えーっと。鏡は無いですよね。」


僕は恐る恐る尋ねる。




「これでいい? 『spegill』」


アオイちゃんが呪文を唱えると目の前に巨大な姿見が現れました。




そこに写った僕の姿は・・・




輝く黄金のティアラに 黄金の下がフレアスカートでデザインされているドレスアーマー 


その上に荘厳な黄金の魔法使いが身に着けるような肩掛けをつけている。


そして、その胸部はどうみても・・・どうみても男性のものではなないです。


顔も今まではフルフェイスマスクだったので、中身見えませんでしたが、今の変身後の姿はティアラが頭にっているだけなので顔が丸見えです。


どうみても女性の顔です。




ちょ、ちょっと、ちょーっと待ってください。


僕、女性になってるんですけど。


ど、ど、どういうことですか?




そりゃ、みんな「誰?」ってなりますよ。


ちょ、ちょっと、ちょーっと待ってください。


デメリットってこういうことですか?




性別転換ですか!




僕は慌てて変身を解除します。




「あれ? 山吹じゃん。」


「ぬう。」


「ど ど ど どうなってるんですぅ?」


「・・・なんだ。」




アオイちゃん達の反応を見ると、どうやら元の僕に戻ったようです。


性別転換するのは変身後だけのようです。


焦りました。




「おお、勝利の女神は山吹殿であったか。はっはっは、中々、奇妙な力を手に入れられたようで、お似合いでしたぞ。」


と快活に笑うライオンマンさん。




いや、そんな笑わないでも。


本気で焦ったのですから。




そのライオンマンさんがぐらりと倒れた。


「ライオンマンさんっ!」


僕達は慌てて駆け寄る。


見ると体中のあちこちから汗が噴き出ている。




そうです。


そうですよ。


かなり無理しているはずです。




本当は魔石の洞窟内に入るのがNGの体調だったはずです。


その体調NGのきっかけとなったプロミネンスの魔法を受けて、前後不覚寸前にまでなってたのです。


そして、残った力を振り絞って、僕の「詩」とあわせるように竜巻呪文で敵勢を吹き飛ばしまくりました。




無理していないわけではないのです。




「ライオンマンさんっ!」


僕達の問いかけにライオンマンさんは答えませんでした。




【次回予告】

体を蝕む異変を前に、ライオンマンはある行動に出る。

その願いの先に待つものとは――


次週、episode38 誇り高き獅子

毎週 日曜日 9時30分 更新

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別な作品の紹介です。よろしければ見ていただけると嬉しいです

■剣と魔法の義経記 https://ncode.syosetu.com/n1604mi/

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