とろろ姫、見参
下級武士のオレは、紆余曲折があり城仕えが決まった。
しかも姫様の護衛係としての召し抱え。頑張るしかない。
姫様の面前で額を畳に擦り付けながら、オレは出世への闘志を燃やしていた。
「面をあげい」
顔を上げよと家老の声だ。いよいよ姫様との対面。どのようなお姿なんだ。
意を決して顔を上げる。
そこには数え十二歳だという幼さが残る面差し。抜けるような白いお顔。紅を差した赤い唇。
そして手には……とろろ飯?
「あいよ、よく来たな」
いやいや、なんでこの姫様とろろ食ってるの? 家老なんで平然としてるの?
「そちは〜もぐもぐもぐ〜で〜もぐもぐもぐあれ〜」
いやいや、とろろ食いすぎて何言ってんだかよくわかんねーよ
困ったオレは家老のハヤシさんをちらりと見る。ゆっくりと頷くハヤシさん。
そうだよな! この状況困るよな!
「姫様、醤油が足りませんでしたか?」
ちげーよ! なんで醤油だと思ったんだよ! 今のアイコンタクト何だったんだよ!
「醤油は足りておる。麦飯おかわり」
まだ食うのかよ! 食べ盛りかよ!
「そち、名はなんと申す?」
突然水をむけられる。
「は! 今日から姫様の護衛係となりましたイシダと申します!」
「もぐもぐもぐ……か。よろしゅう」
名前言えてねーよ。姫様。
かくして、俺ととろろ好きな姫様のおかしな日常が始まった。




