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空の向こう側  作者: 双鶴


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第4話 図書館の午後

翌日の昼休み、優翔は弁当を食べながら、そっとスマホを開いた。

机の下でこっそり画面を見る。

友達には見られたくなかった。


――再生数「42」

――コメント「2」


胸が少し跳ねた。


新しいコメントがついていた。


「前に重さを寄せるのは正解。次は翼の左右バランスも見てみて」


もう一つ。


「折り目が甘いと失速しやすいよ」


誰かが、確かに見てくれている。

しかも、ちゃんとアドバイスをくれている。


優翔は、胸の奥がじんわりと温かくなるのを感じた。


「藤枝、何見てんの?」


友達が覗き込もうとする。

優翔は慌ててスマホを伏せた。


「いや、なんでもない」


笑ってごまかす。

本当は言いたかった。

でも、言えなかった。


放課後、優翔は家に帰らず、学校の近くの図書館へ向かった。

紙飛行機の折り方だけでは足りない気がした。

もっと知りたかった。


図書館の自動ドアが開くと、ひんやりとした空気が流れ込んだ。

静けさが心地いい。

優翔は自然と深呼吸した。


航空・科学の棚を探す。

分厚い本が並んでいる。

その中に、模型飛行機の入門書があった。


ページをめくると、


• 重心

• 揚力

• 迎角

• ねじり下げ



知らない言葉が並んでいた。

でも、昨日のコメントと繋がる部分もある。


「……こういうことか」


図を見ながら、優翔はノートにメモを取った。

理解できないところも多い。

でも、ページをめくる手は止まらなかった。


気づけば一時間以上経っていた。


家に帰ると、両親はまだいなかった。

いつもの静けさ。

でも今日は、その静けさが少しだけ味方に思えた。


机の上に紙飛行機を並べる。

図書館で見た図を思い出しながら、翼の左右を慎重に揃える。

折り目を爪でしっかり押さえる。

先端の重さを微調整する。


「……よし」


部屋の中で投げる。


ひゅっ。


紙飛行機は、昨日よりもさらにまっすぐ飛んだ。

壁に当たる直前まで、ふわりと滑っていく。


「……すげぇ」


声が漏れた。

たった数メートル。

でも、確かに“成長している”。


優翔はスマホを手に取り、録画を始めた。

今日も声は入れない。

代わりに、冒頭に手書きのメモを映す。


「アドバイスありがとう。図書館で調べてみました」


文字は少し震えていた。

でも、それが優翔の“本気”だった。


紙飛行機を投げる。

昨日よりも飛ぶ。

その様子を淡々と撮る。


タイトルはこうした。


「【初心者】鳥人間を目指す高校生の紙飛行機日記 #3」


投稿ボタンを押すと、胸の奥がまた少し熱くなった。


窓の外では、夜風が静かに吹いていた。

優翔はその音を聞きながら、机の上の紙飛行機を見つめた。


「……もっと飛ばしたい」


その言葉は、昨日よりもずっと強かった。


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