チーバノ大学専攻学部
日本語クラス3回目の授業の後、みんなで生協食堂に行き駅弁定食を食べることにしました。
自分の専攻についてが話題となりました。
「ぼくはチーバノ大学で園芸を専攻しているんです。」
ちょこんとイスに座っていた学生がオズオズと控えめに話しはじめました。
日本語クラスのみんなが注目していると、自分のことを「縄文人」と呼んでください、とお願いしました。
「チャットGPTでは、そう出たんです」
「そうなんだ…」
「じゃあ、3回生になったら別のキャンパスになるんだね」
「はい」
「マッドナキャンパスだっけ?」
「そうです」
「どういう研究をしているんだろうね、マッドナキャンパスでは」
「これは一例ですが、マンドラゴラの栽培を研究したりしているそうです」
「マンドラゴラって、なに?」
シュウ君がネット検索をしてみました。
「えっと、古くから薬草として用いられたが、魔術や錬金術の原料としても登場する。根茎が幾枝にも分かれ、個体によっては人型に似る。幻覚、幻聴を伴い時には死に至る神経毒が根に含まれる。」引用:Wikipedia
「そっちじゃないんです。伝説のマンドラゴラの方です」
今度は、幻ではなく伝説ですか。幻の生協の駅弁(定食)を食べながら、みんなそう思いました。
縄文人が検索して画面を見ながら読み上げました。
「人のように動き、引き抜くと悲鳴を上げて、まともに聞いた人間は発狂して死んでしまうという伝説がある。こちらの方です」引用:Wikipedia
「これを栽培してどうするの?」
「ボクにも分かりません。高付加価値作物じゃないから企業とコラボレーションして商品化ができないって嘆いていました」
「商品化されても誰も買わないからでしょ?」
「そうだと思います。まず、秘境にあるとされるマンドラゴラの苗を発見するのに10年かかったそうです。伝説のマンドラゴラを発見し栽培することにこぎつけたのに高い研究性があるのでしょう。
ただ、誰もマンドラゴラを引き抜く勇気がないため、成分分析や標本作成もできず論文作成のネックとなっているそうです」
誰も何も言えませんでした。
「駅弁定食、美味しいね」
「うん」
シュウ君が縄文人に訊ねました。
「他に、何を研究しているんだろう?」
縄文人はすこし考える風にして言いました。
「食虫植物につかまって虫が溶けて液体になった部分を飲料として販売しようと企画しているんですよ」
みんなが再び黙り込みました。
「密林を探検中に道に迷い、食料が尽きて食虫植物の中の液体を飲んで生還した人がいるそうです。
研究室の教授がその話を聞いて、これだっ!と思ったそうです」
「具体的にどうやってつくるの?」
「食虫植物のウツボカズラの袋の部分に、ゴキブリ・ナメクジ・クモ・ムカデ・ハエの赤ちゃん・ミミズなどを入れて数日待つだけ」
「どんな味がするんだろうか?」
「さあ…」
「さぁ、って?」
「だれも試飲したことがないそうです。だから、わからないんです」
「まぁ、確かにまったくの別物になっていても原材料を知っていればそうなるよね」
ウツボカズラ飲料の原材料名は、ゴキブリ・ナメクジ・クモ・ムカデ・ハエの赤ちゃん・ミミズ。製法は食虫植物ウツボカズラによる溶解となるのでしょうか。となるのでしょうか。
「ジャンケンで試飲する人を決めるとか」
「あみだクジとか」
「そういう案も出たんですけど、自分が試飲しなければならなくなる可能性も高くなるじゃないですか」
「結局、そのウツボカズラ飲料はどうしたの?廃棄かな?」
「ううん。ちゃんと冷蔵庫にビン詰めで貯蔵してあるって。災害時に付近の住民のみなさまに支援物資として提供するつもりなんだって」
「確かに、原材料名を知らなかったら…。栄養価高そうな飲料だし…」
マッドナキャンパスは、madなキャンパスでした。
「支援物資で配るなら、お金がもらえないじゃない。大丈夫なの?」
「万年赤字収支なんだそうです。研究室のガラスのホールピペットが買えなくて割れたものを使い手を切っているそうです」
縄文人は自分が地球に留学しようとした理由を話してくれました。
「ボクらは、国民一人ひとりに惑星が与えられているんだ。大気や草や花が無いのが特徴。地球は水と大気があって、色とりどりの花が咲きたくさんの緑があるって聞いたの。それを聞いて、ボクの星もそうなったらいいなって」
「なんか、星の王子様のイラストでそういうのがあったよね」
スター・メシヤが嬉しそうに口をはさみました。
「知ってるよー。あの重力を無視した絵でしょ?」
王子様と星の大きさからすると、王子様がジャンプするとどっか行っちゃうハズ」
どうやら、スター・メシヤは物理学専攻みたいですね。