15.再会
「おはよう、リーズ」
「う……?」
なんだか目の前がぼやけている。
何度か瞬きをすると、優しい笑い声が聞こえた。
「どうしたの? ママが見える?」
大きな手が私の目の前に迫る。
そっと頬を触られて、くすぐったくて笑った。
「あらあら、ごきげんね、リーズ」
この声、聴いたことがある。……そう、パールたんの声に似てる。でも、目の前の女性は大きくて……? 手を伸ばしたつもりなのに、小さな指先が見えるだけで、女性には手が届かない? 何が起きているのだろう??
「おはよう、パール。おや? うちのお姫様も起きたのかな?」
「おはよう、あなた」
男の人の声も聞き覚えがある。クライブの声に似ている。でも、すこし声が低いような気がする。
「もう、10年か。リーズ嬢が亡くなってから」
「ええ。みんな、リーズ様がいなくなった時は……。思い出すのもつらいわ」
パールたんが俯いた。クライブがその肩を抱きしめる。
「あの時はパールにだいぶ助けてもらったな」
「あなたの落ち込みかたは……見ていられなかったわ」
やっぱり、パールたんで間違いないみたい。でも、私が死んで10年経ったってどういうこと?
「あーあー」
ダメだ。パールたんにたずねたいけど、私はしゃべれないみたい。
「リーズ? どうしたの? 抱っこかしら?」
パールたんが私を抱き上げた。間近で見たその顔は、もう大人の女性らしく少し細い輪郭をしていた。
「だあ」
パールたんに抱えられて、私は何とも言えない気持ちになった。
「リーズ、貴方の名前は私の命の恩人から頂いたのよ」
「ああ。お前は……リーズ嬢の分まで幸せにすると神に誓ったんだ」
そうか。私、また生まれ変わったんだ。
パールたんとクライブの娘に。
「ずっと一緒に幸せに生きていきましょうね」
「そうだな」
これからずっと大好きなパールたんと一緒にいられる。
暖かな気持ちに包まれて、私はとろとろと、まどろみの中にいざなわれた。