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第十九章:ミラーリング

-1-


「またぁ…どうしたんだよ、今日は元気ないなぁ」


「え?なにが?」


放課後、部室に向かう途中廊下を歩いていると

斜め後ろから肩をぽんと叩かれた。


鶴ヶ島と青梅だ。


「射川、今日ため息ついたの何度目だよ?

悩み事なら相談に乗ってやってもいいぜ?」


青梅がめがねのブリッジを指で押し上げながら言う。


「あ…ごめんごめん、無意識。

ダメだね。気をつけないと…」


「それに俺ら置いて一人で部室行こうとするなんて

今日の射川、なんとなく冷たいぞー?」


「え?!ああ…ごめんごめん…ちょっと考え事してて」


「ほらぁ…だろ?なんだよ…なんかあったのか?」


「いや…大したことじゃないんだ…ほんと、ごめん…」


そう言って無理やり笑顔を作ってみせるも頭の中では

昨夜の明人の話しがずっとぐるぐると回っていた。


日曜日に羽鳥先輩に聞けば分ることなんだろうが、

それが今、この時点で分らないからこそ

もやもやしてしまうというか…。


明人は入間の手によってリィーンの記憶を蘇らせた。

手には星座守護神の証である指輪…。


そして僕にも同じく指輪が…。


なんだろう…。

何か大事な事を忘れているような…。


なんだろう…。


なんだろう。




やがて音楽室にたどり着くと

室内からバイオリンの音色があふれ出す。


「あ、射川!!」


僕に気付き入間が手を振る。


それに気付き青梅と鶴ヶ島は軽く会釈した。


入間が隣の椅子に座るように促したので

そこに腰を下ろす。


「どうよ、調子は?」


「うん…まぁまぁかな?」


「なんかあったら遠慮なく俺に相談してくれよ?」


「…うん…。ありがとう。」


「じゃあ、早速。

これクリスマスコンサートの楽譜。

射川はこの曲とこの曲は1st。あとこっちは2ndね?

ボーイングも書いておいたから。」


そう言ってコピーされた楽譜の用紙を手渡される。

「あ、ありがとう」


と、ズボンのポケットの中でスマホがバイブしていることに気付く。


誰からだろう…。


ズボンからスマホを取り出すとディスプレイに“自宅”とある。


お母さん?


こんな時間に何の用だろう…。


なんとなく胸騒ぎがした。


通話しようとして思わず手が止まる。


その様子に気付き入間がこちらを覗き込んだ。


「どうした?」

「あ…あのさ…これ…どうやって電話にでるの?」

「え?!スマホの使い方知らないの?…ああ…そっか…。

ここをこうしてスライドするんだよ。ほら!つながったよ?」


「あ、有難う!」

片手で拝むポーズをして礼を言うと

スマホに耳を当てた。


「もしもし?」


「あ、竹人?ごめんなさいね、授業は終わった?」

「うん大丈夫。今部室にいる所。で何?」

「さっき買い物から帰ってきたら台所に手紙が置いてあってね、」

「え?」

「明人が手紙を置いて行ったの。

お兄ちゃんの所に行くって書いてあって…

それで、そっちに明人が行ってるはずなんだけど…

明人の携帯がつながらなくて…。

悪いんだけどちょっと探してくれないかしら?」

「え!?明人がこっちに来てるの?」

僕の言葉に入間が振り返る。


「…分ったよ。探してみる。

見つかったら連絡するから…うん…じゃあ」


電話を切る。


「明人君が来てるって?」

「…うん…そうみたい。

何考えてるんだろうな…。

ごめん!ちょっと抜けるね。

探してこなくちゃ!」

「分った。先生には上手く言っておくから」

「有難う!!」


そういいながら駆け出すと

勢いよく音楽室を飛び出した。


-2-


革靴に履き替えると

下校していく生徒の間を駆け抜けた。


学園の中に部外者は入れない。

おそらく明人がいるとしたら正門前だ。


真っ直ぐ伸びる桜並木を全力疾走した。


明人のヤツ一体何を考えているんだろう。


もしかして…

蠍座守護神…観月紫苑に会いに来たのだろうか?


そういえば夕べ変な事を言っていた。


あれだけ色々とされたのに、幸せを見届けたい?

なんでだ?

なんで幸せを見届ける必要があるんだろうか。


それが僕には良く分らなかった。


やがて大きな正門が見えてくる。


目を細め生徒たちの中から明人を探し出した。


「明人!!」


正門前のバス停の椅子にちょこんと座る弟の姿を見つけ

叫んだ。


名前を呼ばれたことに気付き明人がこちらを振り返る。



「お兄ちゃん!!」



「明人!!…こんなところで何やってるんだよ!!」


息を切らせながら明人の前に立った。


「お兄ちゃんに急に会いたくなっちゃって…」

「はぁ?何言ってるんだよ…

違うだろ?本当のこと言えよ」

少し言葉が乱暴になる。


すると明人はしゅんとした顔を作って俯く。


「…全く…。紫苑君に会いに来たんだろ?そうだろ?!」


「ごめんなさい…」


「…一人で無茶して…」

ため息をつくと明人の頭をくしゃくしゃとなでた。


その瞬間に明人の表情が明るくなる。


「でも…どうしても会いたかったんだ!!

できれば一日でも早い方がいいと思って!!」


「だからってなんで急にこんな事するんだよ?

途中で具合悪くなったら大変だろ?!」


「大丈夫!ちゃんと吸入器持ってきたから!!」


「あのね…そういう問題じゃないだろ…

それにお母さんが凄く心配してたぞ?

ダメじゃないか。お母さんにまで心配かけて…。

あ、そうだ電話しなくちゃ…」

そう言ってズボンのポケットから先ほどのスマホを取り出す。



「…………」


スマホを持ったまま固まっている僕を見て

明人が小首をかしげる。


「?どうしたの」


「…あのさ…これ、どうやって電話かけるの?」

「あ…お兄ちゃんスマホ使った事ないんだっけ?

そっか…これイネ=ノ先生のだもんね。

ちょっと貸して!」


明人の口からさらりと“イネ=ノ”という単語が出して

思わずドキッとしている自分がいた。


明人はそんな僕をお構いなしに

スマホのディスプレイを器用に指で滑らせ操作し

それを耳に当てた。


「…あ、もしもし、お母さん?

うん、明人だよ。

……大丈夫だよ…

今ね、お兄ちゃんに会えたから…。

うん…あ、じゃあお兄ちゃんに代わるね」


そう言ってスマホを差し出されたので

受取る。


「あ、もしもし、お母さん?

明人見つけたよ。学園の正門前に居たから…。

分った…。これから一緒に帰るよ。

うん。じゃあ」


えっと…電源を切るのはたしか、ここをタッチして…っと。


「よし、じゃあ明人…?」

ズボンにスマホをしまいながら明人を見ると

明人は正門のほうを真っ直ぐに見つめたまま固まっていた。


ぴくりとも動かない。


「どうしたの、明人?」

明人の視線の先を見る。


!!


思わず心臓が止まりそうになる。


勿論相手もそうだっただろう。


正門前で男子生徒が僕らを真っ直ぐに見つめながら

固まっていた。



そう…

…観月紫苑…。



暫く3人そろって固まったままだった。


「え?!なにあれ…」

「あれ?うそ!!双子?!」

「双子、かわいい!!」


正門から次々と流れてくる生徒たちが

その様子に気付き、

明人と紫苑君を交互に見つめながら囁いて通り過ぎていく。


「あ…あのさ、紫苑君…紹介するよ。

僕の弟の明人」


「え?…あ…ああ…明人君?

はじめまして、観月紫苑です…。

えっと…なんて言ったらいいのか…。」


しかし明人は依然紫苑君を真っ直ぐ見つめたまま

固まって動かない。


よほどショックだったのだろうか?


「明人…大丈夫?」

僕がそっと優しく肩をなでると

はっとしたように僕を見つめた。


「…明人?」

「……あ…あの!!」

紫苑君の方を向き直る。


「あの…あなたとどうしても話しがしたくて…!!」


かなり興奮しているのかいつも以上に大きな声になっていることに

明人は気付いているのだろうか?


「え、話し?かまわないよ」

紫苑は無邪気ににこりと微笑んだ。


相変らず愛想がいい。


「え?!紫苑君…って双子だったの?!」

突然後ろから声がする。


振り向くと正門前に女子生徒が一人立っていた。


待雪椿。


クラスメイトの女子だ。


「ううん。親戚だよ。よく双子って間違えられるけどね」

紫苑君はニコリと微笑みながらさらりと嘘をついた。


「そう…」


僕らの空気を察したのか

待雪さんは、じゃあ…といって

駅に続く道へと歩いていった。


「ここじゃちょっと目立つしゆっくり話しも出来ないね…」

僕が言うと

「あ…じゃあすぐそこの神社の裏手はどう?

あそこなら人もほとんどこないし」

「そうだね…

あ…あのさ…僕荷物取ってくるから

二人でそこで待っててくれるかな?」


「え?お兄ちゃん?!」

明人がすぐさま悲しげな表情を作ってみせる。


「大丈夫だよ。すぐ戻ってくるから。

じゃあ、紫苑君悪いんだけど」


「うん、任せて。じゃあ明人君行こうか?

すぐそこだよ」


そう言って紫苑君はそっと優しく明人の肩に手を掛けて

道を案内した。


その様子を見届けなんとなく安心すると

すぐさま正門の中へと引き返した。



-3-

「お、射川!大丈夫か?」


「え?…ああ、すみません」


音楽室に戻ると今まさに合奏演奏が行われようとしていたところだった。


遠慮気味にドアをゆっくり開けて入ってきた僕をみつけ

顧問が声をかけた。


「随分長かったな。トイレ。具合悪いのか?」


「は?」


条件反射的に入間を見ると入間はニヤニヤしながらウィンクして見せた。


どうやら僕はトイレに行っているという事になっているらしい…


全く…。


「あの…先生…

急用が出来たので部活を早退したいのですが」

「急用?なんだ」


「…弟が近くまで来ていて…

体が弱くて一人じゃ返せないので付き添いたいんです」


「…そうか…それじゃ仕方がないな…。

明日はちゃんと顔出せよ?」


「はい。失礼します。」


かばんとバイオリンケースを手に取る。


「大丈夫なの?」

入間が小声で声をかけた。


「うん。今紫苑君に見てもらってる」


「な!!」

そういいながら急に入間が立ち上がったので

全員が入間に注目する。


「どうした入間」

顧問だ。


「あ…いえ…

おい、射川…まずいぞ。二人きりにしちゃだめだ!!

早く行け!!」


「え?」


「とにかく急げ!!早く行けって!!早く!!」


「あ…う…うん…じゃあ…」


入間にせかされ僕は音楽室を出ると

小走りで下駄箱まで走った。


二人きりにすると何がまずいんだろうか?


明人は紫苑君の幸せを願っていると言っていた。

それに紫苑君は…特に明人に危害を加えるような

感じには見えないし…。


そういえば…イネ=ノの日記の事を思いだす。


イネ=ノが元の世界に帰る日の事。


紫苑君に取り付いていたスコーピオンを紫苑君が

取り込んでしまったというのだ…。


紫苑君とスコーピオンの和解…という形にみえたのだが…。


それとも…またスコーピオンが紫苑君から抜け出す…

なんて事があるのだろうか?

だとしたらリィーン…、つまり明人に危害を加えかねない?


いや…でも

さっきも見たとおり穏やかににこにこと微笑んでいて

とてもそんな風には見えなかったし。


では、入間は何故あんなに焦っていたのだろうか?


よくは分らないが

とりあえず僕は二人が待つ神社の裏手へと急いだ。



-4-

「話しって何かな?」

そういいながら観月紫苑はにこりと微笑んで見せた。


四方を林に囲まれ

僕ら二人を静寂が包み込んでいる。


「あの…あなたが観月先輩で間違いないんですよね?」


そういいながらも声が少し震えているのが分った。


「そうだよ。君が射川君の弟なんだね。

はじめまして。それにしても本当僕らそっくりだよね!!

びっくりだよ!!」


そう言いながらも観月紫苑は笑顔を絶やさない。

その笑顔が逆に不気味に写った。


だまされちゃだめだ…。

だってこの人の中身はスコーピオンなんだから…!!


恐怖心から足まで小刻みに震えだした。


ちらりと観月紫苑の左手小指を見るとそこには紅色の小石がついた指輪がある。


「蠍座守護神…なんですよね?」


「え?ああ…うん。みたいだね。なんか良く分らないけどね。

えーと…

明人君は蛇座…守護神…だったけ?」


「は?」

思わず聞き返す。


「え?あれ…違った?あれ…たしか君のお兄さんから明人君も

何かの星座の関係者って聞いたような気がしたんだけど…」


ちょっと困った顔をしながら小首をかしげた。


「あ…いえ…蛇座じゃなくて、蛇使い座です…」

「ああ!!そうそう!!それそれ!!

ごめんね、僕あまり星座とか詳しくなくって」


そういいながらも常ににこにこと微笑んでいる。


なんとなく気持ち悪くなってきた。


鏡のようで、鏡じゃない…。


僕はいつもこんなににこにこ笑わない…。

だけど、僕そっくりの人間が今目の前にいる…。

不思議な錯覚と違和感が織り交ざる。


「あの…僕の事、なんとも思わないんですか?」

軽く睨みつけて見せた。


「え?明人君の事?

どう思うかって?

うーん…と…そう言われても今さっきはじめてあったばかりだしね…。

ただ本当に僕ら双子みたいにそっくりでこうして向かい合わせに

立ってると不思議な気分になるよね」


「そうじゃなくて!!」

思わず声を上げる。

すると観月紫苑は目を丸くして驚いて見せた。


「あ…あの…そうじゃなく…

観月先輩が蠍座守護神なんでしょ?

だったら、蛇使い座の僕が目の前にいてなんとも思わないんですか?」


「え?……あ…なんて言ったらいいのか…。

ごめん。

僕あまりそっち関係の話しよく分らなくて。

君のお兄さんがイネ=ノって名前の射手座守護神だって事は知ってるんだけど…」



なんだか話しが上手くかみ合わない。


「蛇使い座守護神のリィーンです!!

リィーン!!

この名前はご存知では?」


「ああ…それ君のお兄さんにも言われたんだけど…

ごめん、分らないや…。」


「………」


なんだこれ…。

嘘だ…。

折角会えたって言うのに…僕の事を知らない?!

そんなわけ…


「あの!!しらばっくれるのはやめてください!!

僕はリィーンの事を知ってから蠍座守護神の事を忘れた事は

一日もないです!!

なんであんな酷い事をしたんですか!!」


「…え?…酷いこと…?」

依然観月紫苑は目をぱちくりさせたままだ。


「たくさんの子供を殺したじゃないですか!!」


すると一瞬彼の目が鋭くなったような気がしたのは

錯覚だったのだろうか…。


「え…?ごめん…どういう事?」


「本当に何も覚えていないんですか?」


「う…ん……」


「酷い!!

僕は忘れない!!


何で…、

何で僕を殺したんですかっ!!」


思わず怒鳴らずにはいられなかった。


興奮して息が荒くなる。


思い切り観月紫苑を睨み付けた。


しかしそれでも観月紫苑は何が何だか分からないような表情のままだ。



「え……君を…殺した?


誰が…?」


「あなたがです!!」


「………」


すると観月紫苑は顔を俯かせて見せた。


何か言葉を発するのを待ったがその気配は見られない。


待ちきれずに僕から声をかける。


「あの…!何か答えてください!!」


すると、

観月紫苑の白い両手がこちらににゅっと伸びたかと思うと

次の瞬間、首を思い切りつかまれる。


「!?!?」


俯き加減の観月紫苑が僕を鋭く睨み上げた。


え?!



「ごちゃごちゃさっきからうるせぇな…

そんなに殺されたければもう一度殺してやる…。

今度こそ確実にな!!」


「なっ?!」


次の瞬間、僕の首を絞める観月紫苑の手に思い切り力が加えられた。


う…!!


観月先輩の手をつかむと爪を思い切り立てて抵抗したが

力は緩まない。


と、足が浮くような感覚を覚えた。


とても僕と同じ身長の観月先輩の力とは思えないその手で

僕を持ち上げていく。


くっ…

意識が…


本当に…ころされ…る…



思い切り足を振り上げると

観月紫苑のみぞおち向かって思い切り蹴り飛ばした。


その反動で

僕は砂利の地面に重力任せに勢い良く落ちた。


暫く咳が止まらず苦しむも

何とかして顔を上げると観月紫苑は僕に蹴られたみぞおちを手で押さえながら

倒れこんでいた。


やっぱりこいつ!!


観月紫苑はゆっくりと体を起こすとこちらを振り向いた。


やばい…この状況じゃ僕の方が断然不利だ…。

お兄ちゃん、早く来て…!!

心の中でそう強く祈る。


しかし、観月紫苑は攻撃を仕掛けてくるどころか

ぽかーんと口を開けたままこちらを見つめているだけだった。



「え…僕…今…」

紫苑の様子がおかしい。



「僕…今…明人君に…何した?」


目を丸くさせながら声を震わせている。


どういう事?


僕にも何が起ったか良く分らなかった。


二重人格?


あ…そうだ…


そうだよ…

蠍座守護神の中には二つの人格があるんだ!!

そうだ…


ああ…

じゃあ…どうしたらいい?!


ゆっくりと目を閉じると紫苑の意識に集中した。


僕はリィーンじゃないけど

でも、もしかしたら今目の前にいる

この人の意識に潜り込めるじゃないか…。


意識の中でなら

僕はリィーン、

彼は蠍座守護神だ。


もう少しまともな会話ができるかもしれない…。


すると僕の目の前に蠍座守護神の姿が

ふわりと浮かぶようにして現れた。


やった!!

成功した?!


からし色の着物に小豆色の袴…


蠍座守護神だ…。


しかし…

手には大きな鎌を持っていた。


え…

どういう事?


思わず本能的に

後ずさったときには時すでに遅く

その鎌が僕に向かって振り下ろされた後だった。


-5-


全力疾走で林の中を走りぬけ

その光景が目に飛び込んできたとき射川竹人は思わず息を飲んだ。


砂利の上に倒れ込んでいる明人、

その傍らで明人の名前を必死に呼び続けている紫苑君…。


「ちょ!!どうしたの!?」


二人の傍に駆け寄る。



「あ、射川!!

どうしよう!!

いきなり明人君が倒れて…

僕…その…」


「ちょっと待って!」


明人を仰向けに寝かせると

明人の口に手を当てる。


…呼吸…はしてるようだ。


胸に耳を当てるが心臓を動いている。


ただ気絶しているだけだろうか…。


「一体何があったの?」

軽く紫苑君を睨む。


「あ…それが…その…

僕、明人君の首を絞めちゃったみたいなんだ…」


「はぁ!?なんで?!」

思わず声を上げる。


「分らない…分らないんだ!!

僕も…なんでそんな事をしたのか…。

ただ気が付いたら明人君の首に手が掛かってて…。

それで…

いったん離れたんだけど、

少ししたら急に明人君が倒れて…その…」


紫苑君もかなり混乱しているようだ。


「…う…」

微かに明人が声を漏らす。


「明人!!…大丈夫?」


すると軽く頭が動き明人がゆっくりと目を開けた。


「ああ…良かった!!大丈夫?!」


「…あ…お兄ちゃん…」

明人の瞳がキラキラと輝きだす。


次の瞬間には僕に抱きついてわんわんと泣き出していた。


「怖かったよぉっ!!!!

怖かったよぉ…!!

お兄ちゃん!!」


「ちょ…まって…落ち着いて…。

大丈夫だよ、お兄ちゃんが来たから、もう大丈夫…。」

そっと背中をさすってあげる。


暫くの間その体制で泣き続けていた明人だったが

次第に落ち着きを取り戻し僕から体を離して見せた。


「明人…。何があったの?」


「あの…あのね…スコーピオンの意識に潜り込んだら

また意識の中で殺されそうになって…」


「え?」


明人の言っている意味が分らなかった。


意識を失っている間に怖い夢でも見たのだろうか…。


一つため息をつく。


「紫苑君…とりあえず今日の所は…

明人も大丈夫そうだし連れて帰るよ。」


「え?あ…う、…うん…」


少し戸惑いながら紫苑君はゆっくりと立ち上がった。

罪悪感があるのだろう…。

その話しは明人がいないところで後日ゆっくり聞きたいところだ。


「さ、明人も立てるかい?」

ゆっくりと肩を押さえながら二人同時に立ち上がる。


「じゃあ紫苑君、僕らこっちから帰るから」


先ほど僕が飛び込んできたのとは逆方向の小道を指差した。


「あ…うん…じゃあ僕はこっちだから…」


「また明日。」


「うん…また明日…」


一体何があったのか明人サイドからも後でゆっくり話しを聞きたい。


「さ、行こう明人。お母さんが待ってるよ。」

「…うん…」


ゆっくりと小道を歩き出した射川兄弟を見届けると

紫苑は彼らに背を向け歩き出す。


そして口の端で

にやりと笑って見せた。



―蛇使い座終わりー


オリオン座編に続く



2013/01/30





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