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勇者と魔法とエッチな防具  作者: 姫宮 雅美
レベル09「戦慄の エッチな防具 大激闘」
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(クロエの正体)


(え? 親子の感動の再会の場面じゃないの)

 カイトは不思議そうにして、アンドレとクロエをかわるがわる見つめる。


「あ…………のう…………」

 クロエは何かを言い出そうとしていたが、上げた右手を意味なく上下しているだけで、思考の方は停止していた。


「どうしたの? まぶたの父との再会なのよ。積もる話は沢山あるでしょうけど、まあ、先に抱きしめ合ったりしないの?」

 アンナも、何してるのよ――そんな感じで腕を組み上級生を見下していた。


「アンナさま、コチラのご学友は?」

 困り果てているのか、両の眉毛を下げてアンドレが聞いてくる。

「いくら、十年間合ってなかったからって、娘の顔を忘れちゃう? 信じられない! クロエも、こんな朴念仁をグーパンチでブン殴っても良いからね。アタシが許可するわ」

 クロエの替わりに、腹を立てるアンナだった。


「確かに彼女は、ワタシの兄、アランにそっくりの風貌です。背が高くて、長い髪の毛を後ろで束ね、鍛え上げられた筋肉――それに、割れたアゴなどは兄にそっくりだ。兄の娘さんは、まだ十五歳だし――サラちゃんは、小さくて可愛らしい女の子の姿だったし」

 そう言って、アンドレは頭を掻く。彼も長い赤い髪の毛を後ろで束ねている。

 アンドレの姪はサラといい、学園の中等部に通い、中等部の女子寮に入っているのだ。


((((イヤイヤ、アンタにそっくりだよ))))

 ここにいるクロエ以外の四人は、同様の感想を持つ。


 クロエとアンドレの風貌は、本当にそっくりだ。背格好から顔の形まで。違いはオッパイの有無程度だった。

 いくら父娘でも、こうまで似るモノなのか――二人を見比べていた、ミーシャは思い、小さな手をアゴに当てて考えていた。


「ごごご、ゴメン! 父ちゃん、みんな! 実は、オレ……いや、ワタシはステイタスカードのパラメータをいじっていたんだ」

 頭を下げるクロエ。そうして重大な告白。

「パラメータをですか? 確かに、高等部の一年でお会いした時には、小さくて可愛らしい女の子でしたわ。初等部、中等部と同じ学年でしたが、魔法クラスと格闘クラスではあまり交流がありませんの。わたくしが生徒会の仕事をするようになってから、お目に掛かるようになりましたが、身長がメキメキと伸びると同時に、格闘技の成績もメキメキと伸長したのでしたわ。ねーピーちゃんさん」

「ピピ」

 ゼリー・モンスターを胸に抱くマリーは、そういえば――と、クロエの異常なる成長を指摘する。

 事情を良くも知らないピーちゃんは、適当に相槌を打っていた。


「そやな。いくら成長期でも、身長と筋肉の伸び具合は異様やったな。ウチが学園の三年生になったときには、押しも押されもせぬ大戦士さまになっておったけど、当時からドーピングが噂されておったな」

 ミーシャは、三白眼でクロエの巨体を下から見上げていた。


「すまない。ミーシャの曾おばあさんに頼み込んで、身体データのパラメータ数値をいじって貰ったんだ。当時は金は無かったから、知り合いの店が作っているレアなデザートを献上したんだ。リンゴの蜜煮を中に入れ、バームクーヘンの生地で包み、ホワイトチョコをコーティングしたアップルクーヘンを差し上げたら、喜んで数値を変更してくれたぞ。パラメータ・モードでは、身長・体重・筋肉量の他に、顔付きまでも微妙な操作で変えることが出来るんだ。それを一ヶ月ごとに行い、バレ無いように心がけた」

 カイトの家の地下書庫。冷たい床に頭を付けて、土下座をするクロエだった。


「ま、まさか、き、キミがクロちゃんなのかい?」

 驚愕し、ヨヨヨ――と、足を踏み出すアンドレだった。

「あのチンチククリンのオバアなら、あり得る話や。あの強欲婆さんは、甘い物には目がないからな。いつかは糖尿病になるかと思ったけど、二百歳を越える長生きや――ニハハ」


(クロちゃん……って、クロエさんの事? アンドレさんは娘さんをそう呼んでいるんだ)

 カイトは、土下座している娘を抱き起こそうとしているアンドレを見る。


「父ちゃん、みんな。見ててくれ、ステイタスカード起動! すまない、ミーシャ。パラメータ・モードに入って、指定した項目を、オ……いやワタシの言う数値に、戻して欲しいんだ。お願いする。お金なら払おう」

 クロエは涙目になり、ミーシャを見つめ懇願する。


「いや、お金はエエねん。何や、オモロそうやから、そのネタだけでエエで。あ、オバアに献上したアップルクーヘンなる物を一度は食べてみたいな。そうや、それで手を打とう!」

 ミーシャは歯を見せて、ニシシと笑う。

「アノお菓子は、予約をこなすだけで二ヶ月待ちになっている貴重品なのだが」

「うんニャ、今すぐ食べたいニャ……」

 クロエを脅迫するネタを仕入れて、満足げなミーシャなのだった。

 彼女も、実のところは大の甘党なのであった。


「分かった。何とか頼み込もう。じゃあこの数値に変更して欲しい……ゴニョゴニョゴニョ…………」

 クロエは、ミーシャにカードを渡し、耳打ちする。


「えええ! そんな数値にしたら……エエのんか?」

「か、構わん!」

 覚悟を決めたクロエは、床にアグラを掻いて座る。

 カイトにはその姿が、首をはねられるのを待つ、囚われの女戦士に見えていた。


(クロエさん……)

 カイトは同情する。まあ、彼もステイタスカードの項目を触ってしまい、どエライ目に遭ってしまっていたからだ。

 性別変更などは、二度としないと心に決めていた。

 今後は、サーシャなどの大占い師に任せようと思うカイトであった。

「ピピピ」

 ピーちゃんはマリーの胸は飽きたのか、今度はカイトの元に飛んできて、彼の頭の上に止まる。

 実にお気楽で、良い身分であった。


「よっしゃ、いじり倒すデ!」

 嬉々とした表情のミーシャ。今の彼女だと、余計な項目までも操作してしまいそうだった。

(身長や体重が、マイナス方向に振られてしまったらどうなるんだろ。……っていうか、数値がゼロになったら、人は消えてしまうのかな?)

 カイトは不遜なこと考える。試してみたいとの欲求があるが、これは人としての領域を踏み外してしまう禁忌なのだと、直感的に悟っていた。

 そうして、頭の上のゼリー・モンスターを見る。

 このピーちゃんも、不可思議な事が起こりまくるのだった。カイトが神話の中のモンスターだと聞かされていた『ヤマタノオロチ』の変化した姿だった。


「ああ、クロエさんの体が!」

 マリーは驚いて目を見開く。ズズズと体を引く。

 クロエの体が青白く発光し、見る見ると縮んでいってしまった。


「わお! ビックリ!」

 アンナがおかしな声を出す。両手を上げ、口を大きく開いた。

「と、父ちゃん!」


「あへ、ヘ!」

 振り返り、アンドレの方を向いたクロエの姿を見て、カイトは変な声を出してしまっていた。


(び、美少女!)

 それが第一印象であった。

 ゆっくりと立ち上がる赤髪の少女。後ろで結んでいた紐が解けて、ハラリと両肩に掛かっていた。

 クロエが着ていた、学園高等部の女子制服は大きすぎたのか、両手の部分がダランと下がり、少女の両方の鎖骨が見えていた。

 筋肉が盛り上がっていた今までと違い、実に華奢な肩だった。

 それまでのクロエの肌は、多少荒れ気味に見えていたが、今度の少女は、きめ細やかな子供の肌のように、地下室のランプの光を受けキラキラと乱反射をしている。

 立ち上がった身長も、カイトよりも首一つ小さくて、ミーシャよりもほんの少し高い程度であった。


 カイトは、少女の顔に注目する。

 細く小さなアゴ。以前はパックリと割れて精悍な顔つきだったのが、全体的に小作りに変化していた。頭自体も小さくなり、目の大きさは変わってないのでパッチリとして大きく見える。

 小さくてツンと上を向いた可愛い鼻。以前の鷲鼻のクロエとは、全く違っているのだ。

 そして小さな頭に、アンバランスな少し大きめの口。唇は化粧をしていないのに、情熱的な赤色であった。

 そうして、カイトの視線は自然と下がる。少女は垂れ下がる制服を気にしてか、ブレザーを脱ぐ。そうすると、細くて小さな体とはバランスの取れない、大きな胸が谷間をのぞかせていた。

 筋肉量は減って、体のボリュームは半減してしまったが、胸だけは大きさを保っている。これは、彼女自身の成長分なのだろうか。


(ウン、ウン)

 カイトは、腕を組みうなずく。

(これが、噂のロリ巨乳なのか……良いモノを見せて貰った)

 納得をする。

「ピ、ピィー!」

「アイテ!」

 カイトのよからぬ思考を読み取ったのか、ピーちゃんは小さな翼で、カイトの側頭部を叩いていた。



「母さんのロザリーそっくりに育ったね。我が愛しの娘、クロエよ」

 アンドレは、優しく少女を抱きしめる。

 ロザリーとはアンドレの妻の名前。彼女は、アンドレと同い年の幼なじみであった。お互いが小さな頃から、良く知る間柄。小柄なロザリーの方が、体のデカイアンドレを尻に敷いていたのであった。


「アンドレ、気を付けな。カイトのヤツがアンタの娘さんをエロい目で見て、狙っているよ。コイツはね、自分が勝てそうもない強くてたくましい女性よりも、自由に操れる弱い幼女が好みなのよ。とんでもないロリコン・ペド野郎なのよ!」

 アンナはカイトの特殊性癖を糾弾する。まあ、アンナも幼女時代に、お風呂や着替えを散々のぞかれてしまっていた過去があったのだ。

 散々心配を掛けさせられた、カイトへの仕返しでもある。

「な! ヤッパリ、兄ちゃんは、ウチの体を狙っていたんやな」

 ミーシャは、黒タンクトップの胸の部分を両手で隠す。コチラは完璧にロリロリの幼女姿であるのだ。


「ち、違いますよ!」

 カイトは顔を赤くし、ツバを飛ばして抗議する。


「まあまあ、カイト君落ち着いて、落ち着いて。皆さんも、冒険の旅で汗を掻かれたでしょう。丁度、私は庭先でお風呂を沸かしていた所でした。皆さんは、体を綺麗にすると良い。その間に、ワタシが腕によりを掛けて夕飯を作るとしましょう。あ、そうそうカイト君。娘のクロエの入浴姿をのぞこうとしたら、承知しないからね」

「え!」

 カイトの背後に瞬時に立つアンドレ。彼は、腰に差していたナイフをカイトの首筋に押しつける。


(ああ、こんな事が、前にもあったよなあー。あーあ)

 カイトは目をつぶり、ミーシャに始めて出会った時を、シミジミと思い出す。ホンの昨日の出来事であったが、遠い昔のように思える。

 ロイドの酒場で、踊り子の衣装を着させられた夕べ。

(二度とゴメンだ)


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