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勇者と魔法とエッチな防具  作者: 姫宮 雅美
レベル06「盗賊の 鼻を明かして 宝取れ」
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(タミアラの宿屋)

 ――午後九時二十三分。

 タミアラの街、宿屋の部屋。


「ふー。ちょっと食べ過ぎたかもな。でも、満足満足。わらわは満足じゃ」

 宿屋の浴衣を羽織るアンナは、ベッドに腰掛けてお腹をポンポンと叩く。下腹部がポッコリと突きだしていた。自己管理に怠りない彼女には、珍しい光景だった。

 ミーシャの紹介で、タミアラの街の旅館内に入っている料理屋で食事をした。

 近くのミヨイ湖でとれた魚料理や、近くの山でとれるイノシシや鹿の野趣溢れる料理に、舌鼓を打った勇者さまご一行。

 菜食主義者のマリーは、もちろん魚や獣の肉は食べられない。

 だが、野草やキノコを天ぷらにして、塩を掛けた料理には、大満足のマリーだった。感動に打ち震え、大きな胸を揺らしていた。



 食事の様子を思い出すアンナ。

 彼女が着るのは、紺色で宿屋の名前が白抜きで入る地味な浴衣。「湖畔の宿」と達筆で書かれている。

「姉ちゃん。ボクと一緒の部屋でいいの?」

 カイトは隣のベッドに正座して、アンナに尋ねていた。カイトも同じく宿屋の浴衣を着る。完璧に着こなしているアンナに比べ、糊が利いてパリパリの浴衣を、折り目も鮮やかに着させられていた。

 そのカイトは正座するベッドに、指で「の」の字を書いている。


「いいジャン、姉弟だもん。恥ずかしがるなよぉーカイト。アンタが恥ずかしがると、アタシまで何だか居心地が悪くなってくるよ」

 珍しく顔を赤らめるアンナ。モジモジと体をよじる。その顔と仕草に、ドキリとなるカイトだった。

 アンナは浴衣の下にはパンツしか着ていない。湯上がりの本人がそう語っていたから、そうなのだ。

 ベッドから投げ出された、スラリと伸びるアンナの白い足。思わず目が行ってしまうカイトだったが、十五歳の少年では無理は無い。


「あー気持ちいい風」

 開け放たれていた窓から吹く、そよ風。

 食事後、この宿名物の温泉に浸かっていたアンナ。食事の手配も、宿の手配も大盗賊のミーシャ・フリードルに任せていた。

 決して全面的に信頼しているわけではないが、ミーシャの粋な計らいからも、信用に値する人物であるとアンナは考える。


「おう、カイト。外を見てごらん。良い景色だよ」

 部屋の外はバルコニーになっていた。木製のバルコニー床に、備え付けのサンダルを履いて出るアンナ。

 カイトも外に出て、眺望を楽しむ。


 空に登る下弦の月が、ミヨイ湖に写っていた。漆黒の湖面上でゆらゆらと揺れている。

 周囲を覆う、うっそうとした森林が月の光で黒くシルエットを作る。

 カイトは故郷のガリラヤ村の景色を思い出す。

 まあガリラヤ村は、大概ド田舎なのだが、こういった自然タップリの風景には癒されるカイトだった。人工の大都市ティマイオスには、どうしてもなじめない彼なのだった。


「そうだね。静かでイイ場所だね。姉ちゃんと、こんな風に旅行したのは始めてだよね」

 カイトはアンナの直ぐ隣に寄り添う。

「これは、ハネムーンと言っていいかしら。今晩は、お姉ちゃんがカイトを寝かせないよぅー」

 アンナはそう言って、自分の浴衣の肩口をめくってみせる。綺麗な白い肌が見えていた。湯上がりで、ほんのりと桜色だ。

 カイトは慌てて目を逸らす。



「聞き捨てなりませんわね! アンナさん!」

 マリーの声。

「そうだ、姉弟であっても、問題の多い発言だぞ」

 背後からのクロエの声。


「アレレ~」

 ガックリと肩を落とすアンナ。

「わたくしたちの部屋は隣ですし、この大型バルコニーは共用になってますの」

 ふり返るカイト。隣の部屋の明かりで、マリーとクロエはシルエットとなっていた。


「この部屋分けには、納得がいかないな」

 クロエはツカツカと歩み、カイトの手を取ってアンナから引き剥がす。


「どうして、公平なる部屋分けよ。ツインの部屋が二部屋あてがわれたのだから、当然、こうなるべきでしょ。生徒会長という狼の元に、勇者のウサギちゃんが放り込まれる。そんなことをされたら大事な大事な弟が、傷物にされてしまうわ。おー怖い怖い」

 アンナは自分の肩を抱き、あっけらかんと言う。


「それよりも、カイト君はどうして温泉に来ませんでしたの? せっかくの露天風呂で混浴でしたのに……」

 マリーは悔しそうに言う。

「ああ、カイトは部屋のお風呂に入ったのだよ。怖い乳牛さんに、裸をガン見されては、おちおちと入浴も出来ないからな」

 アンナの言葉に、ブンブンとうなずくカイト。


「そうでしたの? それは、残念。でも、明日の朝は一緒にどうですか? 早朝から入れるようですし、朝モヤに煙る湖の景色も幻想的だ――と、宿のご主人もおっしゃっていましたわ」

 諦めの悪いマリーだった。


「明日の朝は、早くから出掛けねばならぬ。旅館の朝食をすませたら、直ぐに出発だ!」

 大きく伸びをしてクロエが言った。

「あーあふ。何か眠くなったわね。明日も早いから、今日は早く寝ましょ」

 カイトの手を取って部屋へと戻るアンナ。カランコロンと、木製のサンダルの歩く音がする。


(何か、ほのぼのでいいな)

 カイトは微笑む。


「もー。悔しいですわ」

 カイトの後ろで、胸の前に握り拳を作って悔しがるマリーだった。



   ◆◇◆


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