忍び寄る影
「こんな所でティータイムなんて、暢気なものね」
少女は、少しガッカリしたような様子でつまらなそうに呟いた。
彼女は喫茶店の前に立つビルの影に忍び、ガラス越しに見える蘭子の姿をじっと見つめていた。
しかし、店の中にいる2人の会話まではわからない。
「護衛も付けず無防備なこと……。わたくしなら、これを利用し……ッ!?」
言いかけたその瞬間、全身の毛が逆立つほどの強い気配が走り抜けた。
少女は咄嗟に舌打ちし、影の奥へ身を滑り込ませる。
「今の気配……。蘭子様の隣にいたあの女……」
胸の鼓動を押さえながら、彼女は悔しげに唇を噛んだ。
「……どういうことかしら?あんなに濃い気配に気が付かなかったなんて、わたくしとしたことが……」
だが、その動揺はすぐに冷静な分析へと変わる。
「違う。あれは、気配をコントロールしている。普段は周りに合わせて気配を抑え、わたくしたちのような者には気配で警告する……にひひ。あの犬と違って面白い護衛じゃない」
そう言うと、彼女の目が愉快そうに細められる。
「……そういえば、先程あいつも似たような気配察知をやっていましたわね。あれはあの女から教わったのかしら?……これは作戦を変える必要がありそうね」
少女はわざとらしく溜息をつき、肩を落とす。
「せっかく蘭子様にお会いできると思ったのに、しばらくお預けですわ」
そう呟きながら、彼女は路地裏の影へと溶けるように姿を消した。
くぎゅううううう




