1/38
序・闇の中にて
長い長い暗闇を抜けると、そこには、やはり濃密な闇が広がっていた。
ほんの微かな光さえ差し込まぬ洞窟の奥で、血に塗れたその男は、視界など利くはずもない深淵に目を凝らす。
すると、巨大ななにかがゆっくりと身を起こすのが、たしかに視えた。
長かった、と男は思う。
ここへ辿り着くまでに、いったいどれほどの時間と、手間と、犠牲を払ったことか。
だがそれも、今、ようやく報われる。
逸る気持ちを抑えて、男は闇に向かって声を張る。
「竜の王の御子よ、おまえに逢いに来た!」
その言葉に呼応したかのように、闇の中に浮かぶ巨大な目が赤い光を放った。