ヤコブの塔
天馬とフローネはヘブラエウムに戻ってきた。
「ヨセフ市長!」
「おお、天馬殿!」
「いったい何があったのですか!?」
天馬はヨセフ市長に詰め寄った。
ヨセフ市長は悔しそうに。
「ヘロディオン要塞からフリッガ派の軍が攻めてきたんです。私たちは町を守るので精一杯だった」
「あの、ツェツィーリアさんたちは?」
恐る恐るフローネが尋ねた。
「すまない。彼女たちは地球人ということでさらわれてしまった。おそらくヘロディオン要塞にいると思う」
「ヘロディオン要塞……彼女たちを助け出すためにはどうすればいいのですか?」
天馬がヨセフ市長に聞いた。
「ヘブラエイは反撃に出るつもりだ。シメオン将軍が軍を率いてヘロディオン要塞に向かう。彼女たち以外にも、私たちの仲間が連れ去られてしまった」
ヨセフ市長は希望を失っていなかった。
天馬はヘロディオン要塞攻撃に参加することにした。
ヘロディオン要塞を守るのはヘロデス将軍だった。
ヘロデス将軍にはサディスティックな性癖があった。
「クックック! 最近あまり活躍の機会がなかったが、地球人を捕らえたのは褒美だ。そう思わんか、ユダよ?」
ヘロデス将軍が陰気な顔で言った。
ユダは将軍の後ろで見えないように、軽蔑の笑みを浮かべた。
ヘロディオン要塞の司令室にユダはいた。
この男は二重スパイとしてフリッガ派とヘブラエイに派遣されている。
「あと二人地球人がいるよ。どうやら襲撃の場にはいなかったようだね。別の町に行っていたらしいよ。合計六人、全員捕らえれば、フリッガ様もお喜びくださるさ」
「ククク、これで手柄を立てれば元帥になることも夢ではない! ヘロデス元帥の誕生だ! あのミリアムをあごで使ってくれるわ!」
ヘロデスは夢想に酔いしれた。
「ヘブラエイはこの要塞を落とさない限り、ヤコブの塔にには行けないからね。ヘブラエイは総力を結集してくるんじゃないかな」
「フッ、無駄なことだ」
ヘロデスは要塞の防衛に自信があった。
この要塞は死海に北にある。
死海にはヤコブの塔と言ってフリッガの住まいがあり、デルモンテ(Delmonte)帝国の中枢だった。
フリッガはデルモンテ帝国の女帝であった。
ヘロデスはミリアムと比べるとフリッガから寵愛を受けているわけではない。
フリッガはミリアムを好んで登用していた。
ヘロデスはそれに対して嫉妬していたのだ。
そのため、フリッガの寵愛を受けようとてがらに焦っていた。
「クククク……ヘブラエイどもめ……来るなら来るがいい。すべてはね返してくれるわ!」
ヘロデスは実のところユダの陰謀に踊らされているにすぎなかった。
それをヘロデスは知らない。
ヘブラエイは部隊をヘロディオン要塞に向けた。
要塞攻略戦が始まった。
ヘブラエイの要塞攻撃軍司令官はシメオン将軍であった。
この要塞を攻略しなければ、ヤコブの塔への道は開かれない。
逆のことを言えば、この要塞を落とせば、フリッガへの道が開かれることを意味した。
このヘロディオン要塞は三方が水によって囲まれていた。
しかし、西側の面は潟になっていて、時間と共に浅くなるのだった。
そして天馬とフローネはそこをついた。
西側から侵入した天馬とフローネはシスターズの救出に向かった。
あらかじめユダから地下一階に囚われている情報をえていた。
しかし、ここまで正確な情報をなぜユダは知っているのか。
天馬は逆に不安になった。
要塞地下は牢になっていた。
そこで天馬とフローネはツェツィーリアたちと再会した。
「ツェツィーリア、ソフィーヤ、アンジェリーナ、ハルカ!」
「「「「隊長!」」」」
天馬は心から彼女たちの無事に安堵した。
「隊長なら助けに来てくれると信じていましたわ!」
「隊長、さびしかったよう!」
「よし、フローネ、みんなを助けるぞ!」
天馬は牢を鍵で開けた。
「よし、脱出しよう!」
一方ヘロデスは……
「敵の攻撃が激しく、もってあと30分ほどかと……」
部下が正確に報告する。
「何い!? おい、船を用意しておけ!」
「は?」
部下がヘロデスの意図に理解が及ばない。
ヘロデスは激高した。
大声が司令室に響き渡る。
「聞いていないのか! 船を用意しろと言っている!」
「し、しかし……」
「しかしではない! この私の命はほかの兵士たちの何倍も価値があるものなのだ! わかったなら、船を用意せよ!」
ヘロデス将軍は逃亡の準備を部下に命じた。
今、必死で兵士たちが戦っている。
ヘロデスはそれに水を差そうとしていた。
兵士たちを無視するかのようにヘロデスは逃亡を画策した。
ヘロデスにとって人の命は価値が違う。
高貴な者の命は価値が高い。
それゆえ何をしてでも救わねばならぬ。
それがヘロデスの考えだった。
結局、ヘロディオン要塞はヘブラエイの猛攻の前に陥落し、ヘロデスは逃亡しようとしていたところを捕まえられ、捕虜になった。
そしてついに、フリッガの居城、ヤコブの塔への道が開かれた。
反乱軍ヘブラエイは遠くからそびえたつ塔を見ていた。
これは『ヤコブの塔』といって、デルモンテ帝国女帝フリッガの居城である。
シスターズも塔を見ていた。
「あれがこれから攻略する塔なんだね」
とソフィーヤが言った。
「高いな。いったいどれくらいの高さ何だろう?」
ハルカが塔を見わたす。
「ついにこの時が来ましたわね」
「あの塔にいる女帝フリッガを倒せば、戦争は終わるんだよね」
アンジェリーナがつぶやく。
四人は互いにうなずき合った。
ヘブラエイはヤコブの塔への攻撃を開始した。
その際、住民たちが蜂起した。
ヤコブの塔はエレベーター状になっており、天馬たち六人にフリッガ討伐が託された。
エレベーターは途中の階で止まった。
するとそのフロアには白い髪をツインテールにした、妙齢の美女。
「フッフッフ、ついにここまでやって来たな。御使 天馬、そしてその仲間たちよ」
「俺を知っているのか?」
「ふっ、もちろん知っているとも。さあ、ここからは私が相手をしてやろう。だが……」
ミリアムは指を鳴らした。
エレベーターのスイッチが入る。
「二人だけ、フリッガ様のところに通してやろう。フリッガ様もご自分の手でおまえたちを討ちたいとお望みだ」
「隊長、行ってくださいませ!」
ツェツィーリアが天馬を指名した。
「誰か一人選んでいっしょにフリッガを倒してください! それでこの戦争も終わりますわ!」
天馬は熟考した後、すぐに判断を下した。
「……わかった。フローネ、来てくれ」
「はい!」
「決まったな」
再びミリアムが指を鳴らした。
エレベーターが再び動き出す。
「隊長たち! 行ってください!」
ソフィーヤがエールを送る。
天馬とフローネを乗せてエレベーターは上に行った。
「フハハハハ! 出は残った四人をこの私が始末するか!」
ミリアムは獰猛な猛獣のような顔をしていた。
それは戦士の顔だった。
四人とミリアムが戦闘に入った。




