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とあるイベントNPCの見る世界  作者: 鷹野メツ
第一章【始まりの町レクサスとポーション騒動】
10/27

去る者と残る者

次の日



「ナツちゃん!薬草が無くなったって、どういうことなんだ?!」

「ポーションはまだある?!」


朝起きると、道具屋の前に異邦人さん達がかなりの人数詰めかけていた。

ちなみに上のはかなーりマイルドに、異邦人さんが行っていることを訳した感じで、ぶっちゃけ言葉づかいの荒い怒鳴り声が、そこかしこに広がっていた。


やっぱり、ギルドに依頼したのは不味かったかな……。でも、どうせ直ぐにバレちゃうんだから、早いうちに知らせておいた方がいいよね。


予想はしてたけど……いざ来られると、迫力が物凄い。正直怖いです。




とりあえず説明しようと、店の奥から出て異邦人さん達と対峙する。

私が出てきたからか、異邦人さん達の声が一層大きくなった。


「おいNPC!ポーションはどうなったんだよ!まだあるならありったけよこせ!」

「おい待てよてめえ!独占する気か?!」


こんな掛け合いがそこかしこで行われていて、私は恐怖で呆然としてしまった。たしかにポーションが無いのは、冒険者にとって不安だろう。でも、こんな怒鳴りあいの元になるなんて、思ってもいなかった。


特に声が大きかった二人の異邦人さん達は、その場でにらみ合いをしていた。今にも相手に掴み掛かりそうな迫力で、思わず後ずさった。


トン


私の肩に何かが当たった。

驚いて振り返ってみると、



「てめえらちょっとは黙りやがれ!ナツちゃんが怯えてるじゃねえか!」



般若のような形相をした、一人の異邦人さんが、私の肩を手で支えながら、店の前にいる異邦人さん達に向かって怒鳴っていた。金髪に青の目、初めて見る人だ。


何か大声の出る才能でも持っているのだろうか。キーンと耳鳴りがする。さっきまでの一人一人の声とは比べ物にならないくらいの大声だった。


辺りがしーんと静まり返る。



その彼が此方に顔を向けた時には、もうさっきまでの表情は消えていて、顔には微笑みが浮かんでいた。


「それで、ナツちゃん。薬草が無くなったって、どういうことなのかな。ちょっと、話を聞かせてもらえる?」


こんなに穏やかに尋ねてくれたんだ、話すなら今。


私は彼に促されるまま、異邦人さん達の前に進み出た。








私が前に出ると、また話し声が聞こえてくる。

さっきとは違って、ひそひそとかぼそぼそとか、そんな感じに近い。


よく周りを見てみると、町の人と一緒に採集に行ってくれた人もいるのだろう、何処からか、「ナツちゃん体調は大丈夫?!」「おい!ポーションよりまずはナツリムちゃんの心配しろよ!」なんて声が聞こえてきて、思わずクスリと笑ってしまった。


そう。不安なのは皆一緒のはずだ。私もしっかりしなきゃ。



「皆様、聞きたいことも沢山あるでしょうが、それらを抑えて今、私の話を聞いてくれていること、感謝します」


まずはお礼。話の切り口にして、


「皆さんも知っているとおり、ポーションは薬草なしに作ることは出来ません。ではまず薬草がどうなってるのか、現状をお話します」


現状。今どうなっているのかというと、


「今、ここレクサスで唯一薬草を育てている畑が、荒らされていました。いくつか薬草が減っていて、残ったものも全て枯れています」


畑が荒らされていた。この言葉を聞いて、私のことを心配してくれた人の殆どは、顔をくしゃりと歪めている。多分、お父さん達から聞いたのだろう。


その他の人は、まだよくわかってないのか、眉を顰めたり首を傾げたりしている。


「薬草が得られるのは、この町では今のところ、その荒らされていた畑だけです。よって私たちは、王都に行って、商人を護衛しながらこの町に連れてくる必要があります。お願いします、私たちに協力してください!」


バッと頭をさげる。それに、何人が残ってくれるのか。不安だが、私は異邦人さんの優しさを信じたい。




そんな思いとは裏腹に、異邦人さん達は、次々と背を向け去っていく。


大方、ただの野次馬か、文句を言いに来ただけだったのだろう。


装備がしっかりしているので、もしかしたら、ポーションが残っているうちに、別の町に行こうと思っているのかもしれない。


確かにそれは、冒険者としてあるべき姿なのかもしれない。

でも、問題を町の人と共に、解決していくのも、冒険者なんだと私は思う。


どちらを選んでもいいのだけど……ちらほらといなくなる異邦人さん達を見て、分かってたけど、手伝ってくれないことに、悲しいと思った。






その中に混ざって、動かない人たちがいた。


きっと、樹木などの採集をやってくれた人なのだろう。

なんとなくだけど、わかるんだ。


「あーあ、帰ってやんの。あの自己中どもが。……それで、ナツちゃん。僕たちは、何をすれば良いのかな?」


さっき私を後ろで支えてくれた人が、笑顔で尋ねてくる。


周りを見てみると、半分くらいの人が残ってくれていた。


ああ。



「皆さん……ありがとうございます……!」




嬉しいなあ。

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