表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
英雄になれなかった騎士と名を忘れた少女〜片腕の勇者と黄昏の歌姫〜  作者: 大天使ミコエル


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

10/10

✠騎士編 5✠ 魔術覚醒

 カイの目の前でルーナが杖を握る。

 杖を握るだけでも杖に魔力が流れ、魔力のコントロールに効果的だと、カイは魔術道具屋の爺さんに聞いていた。


 二人は、毎日のように空き地に来ていた。

 そして、カイは毎日のように、ルーナに杖を握らせた。


 これでルーナをどうしたいというものもなかった。

 小さなルーナを見捨てていけず、こうしてまだこの街に留まっているけれど。

 だからといって、連れて行く決心が出来るわけでも、杖を与えて旅立てるわけでもない。


 もう、自己満足と言ってもよかった。


 少しでも、力の使い方を覚えてもらい、少しでも、自由に生きられるように。


 カイは、小さな空き地に座り込む。

 ツンツンとした枯れ草がカイの脚に触れた。


 魔術の杖を持つルーナを眺める。

 この小さな陽もささない空き地で、ガリガリの身体をした小さな少女が、魔術の練習をしている。


 真逆だ。


 そんな風に思う。


 昔、見せてもらった魔術は、もっと光が溢れていた。

 明るい太陽の下。

 真っ白に光る錫杖。

 しなやかなローブ。

 笑顔。

 未来の希望。


 こんなんじゃなかった。


 目の前のルーナは、ボサボサになった汚れた髪で、むっと真剣な顔を崩すこともなく、じっと杖に集中していた。

 食事処で働いているとじゃ思えない、洗っても白くはなりそうにない服。

 奴隷の証である足と足を繋ぐ鎖。


 こんなんじゃ……。




 ルーナには、集中すればするほど、魔力が巡るのがわかった。

 意識が研ぎ澄まされる。

 すると、ルーナは、頭の中に何かが浮かぶのがわかった。


 思いついたというのだろうか。それとも、誰かに教えられたのだろうか。


 それは、言葉だった。


 魔術とは、神から預かった不思議な力のことだ。

 魔力を持たされて生まれたものだけが使える、不思議な力。


 それは、加護を与えた神ごとに、魔力の属性が決まる。


 ルーナは、頭に浮かんだ言葉を、捕まえるように言葉にする。


「女神イニシエ」


 その名を聞いた時、カイがハッとした。

 目を大きく開け、驚きの表情が隠せない。


 女神イニシエ。


 それは王都に巨大な聖堂を構える女神の名だった。


 そして。

 それはかつて、カイに魔術を見せたあの人が、加護を受けていた女神の名だった。


「嘘……だろう?同じだっていうのか…………」


 カイの見開いた目が、苦痛に歪む。

 自然と、涙が溢れた。


 ルーナは、杖からの煌めきを逃さないよう集中する。


 頭に浮かんだ言葉を、静かに口にした。


「寄る辺なき魂よ」


 カイの心に、かつて見た、あの人の姿が思い浮かぶ。


 同じ言葉を、言わないでくれ。


「呼びかけに応じ、光に帰りなさい」


 俺の思い出を呼び起こさないでくれ。


「女神イニシエの」


 俺の思い出を、汚さないでくれ。


「名の下に」


 その瞬間、ほんの一瞬、世界から光が消えたようだった。

 いや、消えたのではない。

 ルーナが吸収したのだ。正確に言えば、ルーナの持つ宝玉が。


 そしてその次の瞬間、ルーナが力を放出するように、世界を包み込む力がルーナから溢れ出た。


 カイは息を呑んだ。


 もう、ただそれを眺めることしか、この瞬間、カイが世界と繋がる方法は、残されていなかったのだ。

魔力を持っているのが発覚するのは50〜100人に1人ほど。魔力があれば勝手に発動することはありますが、使いこなすには自分で制御する必要があります。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ