1/24
プロローグ
魔王が討たれ、世界は平和になった――はずだった。
英雄でも、救世主でもない。
世界を救うつもりのない男が、
今日を生きるためだけに歩いている。
それでも。
たった一度の選択が、
世界を“正しく”書き換えてしまうことがある。
これは、
誰かの手を離さなかった男と、
まだ自分の名前の重さを知らない少年の物語だ。
少年は意識が光に溶けていくのを感じている。
もう自身の存在を維持することも出来ない。
ただ薄い雲に隠れていた月が再び現れるのを感じている
彼の選択により、この世界はリライトされる。
彼は、そんなことを知らない。
生きるために狩をし、酒場に通う、どこにでもいる中年の狩人だ。
特別な力も、世界を救う意思もない。
そんな彼だからこそ、少年はその選択に身を委ねても良いと思える。
最後まで僕の手を握ってくれていた彼の大きな手の温もり、この感触を、僕はきっと忘れない




