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白銀の王。  作者: 春乃來壱
20/31

20.方向音痴。





「これが部屋の鍵だよ。部屋は階段を上がってすぐ左にあるからね!あ、大事なものはちゃんと自分で保管してね」


「わかった。ありがと、マリー」


お礼を言いながら碧は目の前に立つ少女から鍵を受け取る。






ーーギルドを出たあと碧達は道に迷っていた。


フィーの話ではギルドから碧達が探してる宿はそう遠くないはずなのだが、立っている建物は似たような造りのものばかりだし門の前ほどではないが人も多くてなかなか見つからない。


魔法を使って悪目立ちするのを避ける為に“ 導 ”も使えない。

ルーティアには地図などがまだあまり普及してないらしく、道などは魔法や魔道具を使って調べるか、人づてに聞いていくしかないそうだ。


本が置いてある図書館に頼る方法もあるが、まず図書館に行くまでの道すらわからないので今回は使えない。


「…誰かに聞いてみる?」


「そうっすね。そうした方が早いかもしれないっす」


「聞くんならお店の人とかの方がこの辺りのことに詳しそうだよね?」


道を尋ねるため近くにあった露店のおじさんの所に行くことにした。

5人で行くと邪魔になってしまうのでフィーとむいだけ話を聞きにおじさんの方へ向かう。


碧たち3人は道に沢山並ぶ露店と露店の隙間に入り邪魔にならない場所でフィー達が戻ってくるのを待つ。


すると碧の足元にコロコロと何かが転がってきた。


しゃがんでそれを拾うと落ちていたのは碧の記憶にあるものよりも大きかったがじゃがいものようだった。


「なんでこんな所に転がって…あ、あっちにも」


「…碧?急にしゃがんでどうしたの?」


「これが転がってきたんだ」


「それ、じゃがいもですか?あ、でも私たちが知ってるのとは大きさが違いますね?」


「…あの子が、落としたのかな」


雪と一緒にまだ地面に落ちている数個を拾い集めていると、キョロキョロと周りを見回していた輝璃が人通りの少ない裏路地の方に指をさしたので碧もそちらを見る。女の子が落ちている野菜を慌てた様子で拾っていた。


女の子は拾った野菜を急いで脇に抱えていた木箱にいれていく。

碧が拾ったものも少女のいる方から転がってきたし、少女の膝に擦り傷がある事から木箱を抱えたまま転んでしまったのだと予想ができた。


「ちょっと俺あの子に渡してくる」


「…俺らも行く」


「すぐそこだし大丈夫だよ。フィー達とすれ違っちゃっても困るし」


「だめです。みーくんは1人にするとすぐ迷子になるんですから。フィーさん達がかえってくる前に戻れば問題ないです」


「うっ…」


「…碧の方向音痴は筋金入りだから」


「うぅ…お願いします」


双子(ふたり)は碧が極度の方向音痴なのをよく知っていた。



いつも通ってる通学路なら迷わず家から学校まで辿り着けるのだが、通ったことの無い道やショッピングモールなどの建物はほとんどの確率で迷子になってしまうのだ。


通学路も入学する前に双子(ふたり)や龍斗が何度か説明しながら通ってくれたから覚えられたようなもので、1度でも違う方に曲がってしまうと何故か元の位置に戻れなくなってしまう。


迷った末に適当に歩き回って普通の何倍もの時間をかけて奇跡的に同じところに戻れることもあるが、自分の記憶を辿って戻れた試しはほとんどない。




┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈





中学の時に、碧が今通っている高校を選んだ理由は“家から1番近かったから”というのが大きい。遠くなればなるほど道を覚えなきゃいけなくなるから。


それでも1度、高校からの帰り道で迷ったことがあった。


学校から家に帰る道のりは、学校から出て数分程歩くと駅がある。そこから4駅分電車に乗り、最寄り駅で降りた後15分ほど歩けば家に着く。


双子(ふたり)は最寄り駅のすぐ近くのマンションに住んでいるのでいつも駅まで一緒に帰っていた。


その日は駅で双子と別れた後に道を歩いていたら、よく見かける猫が裏路地に入っていくのが見えてつい追いかけてしまった。


人懐っこい猫なのでひとしきり撫でた後、カバンの中に入れてある猫用の玩具で遊ぶ。

碧の住む街には野良猫が多く、割と人に慣れてる猫が多いのでいつ会っても遊べるように小さい猫じゃらしのような鈴の着いた玩具を持ち運んでいるのだ。


15分ほど遊ぶと猫は碧に頭を摺り寄せてから何処かに行ってしまったので碧も帰ろうと立ち上がると、帰り道がわからなくなってしまった。


猫にふらふらと着いてきてしまったので道を覚えていなかった。

誰かに連絡をしようとスクールバッグを漁ると今日に限って携帯を学校に忘れてきたことに気づく。これでは輝璃達の助けも期待できない。


「うーん…どこだろうここ」


辺りを見回しても見覚えがない。


「まぁ、適当に歩いてたらどうにかなる、よね?」


覚えてないものは仕方ないし、と開き直りとりあえず歩き回ることにした。

5分くらい歩いた時になんだか同じところをくるくるしてる気がしてくる。


「あれ、ここさっき通ったっけ?大通り、どこだろ」


学校を出たのは4時半頃でもうそろそろ暗くなる時間帯になる。

裏路地には街灯も少なく、既に薄暗くなり始めていて碧は少し不安になってくる。


「…暗くなる前に帰りたいんだけどな」


その後もグルグルと同じところを歩いたが何とか大通りに辿り着いた。

辿り着いたは良いがいつもとは違う道に出てきているのでどちらにせよ家までの道がわからない。

裏路地よりも街灯が多く、少しは暗くなっているのを誤魔化せたが根本的な解決にはなってない。


「どうしよう…」


暗くなるにつれて不安が募っていきカバンをギュッと両手で握る。

どこに向かって歩いていけばいいかわからずグルグルと考えていると後ろから肩を掴まれた。


びっくりしすぎて肩が跳ねる。恐る恐る振り返ると息を切らした輝璃が少し不機嫌そうに立っていた。


「…なんで、携帯忘れてんの碧」


「輝璃、帰ったんじゃ」


「…担任から碧が携帯忘れてったって、龍斗に電話あったらしくて。碧が全然帰ってこないから俺の方に連絡が来たんだよ」


「そっか…ごめんね、輝璃」


「…何も無かったんなら、いい。でも龍斗達かなり心配してたから覚悟した方がいいよ」


「うあー…奈那さん怒ると怖いんだよな」


「…ちなみに、雪も怒ってたから」


“雪も奈那さん達と家で待ってる”と輝璃に伝えられて碧は頬がひきつるのを感じる。


龍斗と輝璃は碧に甘いので余程のことがない限り碧に対して怒ったりはしないが、奈那さんと雪は普段怒らない分怒った時がそれはもう怖いのだ。


これから怒られることを考えると気が重くなるが、輝璃に見つけてもらえたことで不思議と、もう暗さは気にならなくなっていた。






┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈






「…碧?どうかしたの?」


碧が急に黙ったことを不思議に思った輝璃が顔を覗き込んでくる。


「んー、前に俺が学校帰りに迷子になった時の事思い出してたんだ」


「…あぁ、あの後の雪と奈那さん凄かったね。あの龍斗が宥めてたくらいだからね」


「あれは本当に怖かった。トラウマになるかと思った」


「だってあれはみーくんがいけないんですよ?それに猫ちゃんと遊ぶのなら私も誘って欲しかったです」


そんなことを話している内に女の子の前に着く。


「これ、君が落としたんだよね?」


碧はしゃがんで女の子と目線を合わせながら、拾ったじゃがいもを手渡すとその子は驚いたように目を見開いた。


「は、はい。あの、ありがとうございます」


「どういたしまして」


「あの、なにかお礼をさせてください」


「え?いやいいよ。ただ拾っただけだし」


「いえ、何かしてもらったらお礼はきっちりしろって、お父さんから教えられてるので」


「…じゃあ、ここら辺に宿屋がある所、わかる?」


碧が返答に困っていると、輝璃が機転を利かせて助け舟を出してくれる。


「お兄ちゃん達、宿屋を探してるの?」


「そうなんだ。俺ら今日この国に来たばかりで泊まれる場所を探してるんだ」


「じゃあこっち!あたしの家、宿屋だよ!」


「あれ、本当?じゃあフィーが探してた宿ってこの子の家の事かな?」


「この辺で1番近い宿はあたしの家だよ!」


「…この子の家っぽい、ね」


「そうですね、とりあえずむいちゃん達呼びに行きますか?」


「ん、そうだね。ごめんね、ちょっと俺たちの友達呼んできてもいいかな?」


少女にそう尋ねると笑顔で了承してくれたのでフィーとむいを迎えに行く為歩き出した。




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