31.新事実
「……成る程、伝説のドラゴンの秘密を暴こうとして資金を集め、それから他の国へと行ってみるつもりだったのか」
「危ない所でした。このドラゴンの事は王族と一部の貴族以外他言無用の事項でしたからね。もしこのドラゴンの事が他国に漏れでもしたら大変な事になる所でした。やっと手掛かりを掴んだ所だったのに……」
ジャレティのあのメモに書かれていた計画が阻止され、ホッと胸を撫で下ろすシェリスとロナ。
あのメモに何が書かれていたのかと言うと、かつてこの世界に存在していたとされている伝説の7匹のドラゴンの内、国内でその遺跡の1つが発見されたと言う内容だった。
伝説の7匹のドラゴンは世界中でその力を欲している対象になっており、バーレン皇国も例外では無かった。
なのでそのドラゴンの遺跡に関しては、バーレンでも皇族と一部の貴族以外機密事項だった。
だが、その貴族の1人としてそれを知っていたジェイルザートは、あろう事かその情報を他国に売り渡して大金を手に入れようとも画策していたらしい。
「まさに金に振り回された奴の末路って訳か、哀れだな」
「何だか後味の悪い事件でしたね。結局屋敷も自分の手で燃やしてしまったんですから」
こうして事件は解決し、ドラゴンの事が他国に漏れ出さなくて良かったと思うと同時に、シェリスとロナから再び休暇を取る事を許可されたカリフォンとロオン。
その2人は、今度こそ何事も無く休暇が過ごせます様に……と願いながら今度は国内中の1ヶ月の旅行へと出かける準備を始めた。
しかし、その途中で彼等は気になる話をシェリスから聞く事になった。
「おお、カリフォンにロオン。これから休暇だな?」
「そうです。行って参ります」
普段は余り敬語を使わないタイプのカリフォンも、主君であるシェリスや宰相のロナには勿論丁寧な口調で話す様に心掛けている。
そのカリフォンに対してシェリスが何か言いたげな表情をしたのを、カリフォンの隣に居るロオンは見逃さなかった。
「陛下……何か私達に御用ですか?」
「ん、いや……その……」
「シェリス様」
ロオンに詰め寄られる形で先を促されたバーレン皇国の若き皇帝は、かなり言いにくそうではあるものの、結局観念してこんな事を話し出した。
「それがだな……御前達が追い掛けていた連中とはまた別の話で、城下町で大捕り物の騒ぎがあったんだが知っているか?」
「ああ、そう言えば巡回に出ている団員からの報告で耳にしております。確か水色のコートの集団と、何処かの冒険者が揉めたと言う話でしたね」
ネルディアの街中を駆け回って、追いかけっこをしていた集団の目撃情報と器物損壊の被害の報告が皇都の住民から色々と上がって来ているが、それは自分達の副官にそれぞれ処理を任せている2人。
そもそも、その大捕り物があった時は自分達はあの波止場に逃げて行った連中をまだ街中で尾行する前で、腹ごしらえをしていたのもあって気付くのが遅れていたのだ。
何故今になって、シェリスがその話を自分達にするのだろうと首を傾げるカリフォンとロオンだが、それには追いかけっこをしていた張本人達からある質問をされていたのが原因だった。
「実はだな、そのコートの集団といざこざを起こした冒険者達が俺達にこんな事を聞いて来たんだ。その連中はバーレン皇国で何かを企んでいませんか、とな」
「企んでいるですって?」
「どう言う意味ですか、それは?」
質問の意図が掴めず、ロオンもカリフォンも困惑している。
すると、シェリスは隣国イディリークで起こった事を2人に話し始めた。
「その水色のコートの連中と同じ様に、黒いコートで統一した集団がイディリークで目撃されているんだ。それから白いコートの集団も目撃されているとイディリーク側からこちらに共有事項でもたらされている。後は……ああそうだ、ピンクのコートの集団がこのバーレンの西側で目撃されているのは知っているか?」
「あー、それなら俺も聞いていますよ」
休暇を取って西の方に向かっていた時、立ち寄った町でチラリと耳にしたそのピンクのコートの集団の話は、カリフォンもロオンも知っていた。
それなら話は早い、とシェリスは冒険者達からの次なる話を伝える。
「その冒険者の話によれば、イディリークで出会った黒いコートの集団はどうやらイディリークのリュシュター皇帝を誘拐しようとしたらしいんだ」
「えっ?」
「誘拐されそうにって……それは穏やかではありませんね」
驚きを隠せないリアクションの2人に、シェリスも神妙な顔つきになった。
「ああ。白いコートの集団の話はその冒険者達は知らないみたいだったが、同じ様な集団がこのバーレンの中でまた目撃されているとなれば、それなりに警戒は必要だろうな」
もしかしたらまだ事件は終わっていないのかも知れない。
それか、自分達の事件が解決したすぐ後だと言うのに、冒険者達が新たな事件の火種をこのバーレンに持ち込んで来たのかも知れない。
いずれにせよ警戒はし続けなければいけないだろう、と考えるロオンの横でカリフォンがとんでもない事を口に出した。




