本宮愁/こっこ『ルーフェイア・シリーズ』
副題:『幻想に紡がれるリアリティ』
少女は泣きながら、戦い続ける──。殺したくない、殺さなければならない。悲鳴をあげる心に反して身体は動き、屍の山を築いていく。
傭兵の家系に生まれ、戦場で育った美少女ルーフェイア。心優しく繊細な彼女の背には、深い業がつきまとう。抗えぬ血に操られるまま、少女は虚ろに剣を振るう。生きるために、生かすために、数多の命を屠り──されども、大切に想うすべてを護りきることは。
『反王道・安易なご都合主義ゼロ』で展開する、息もつかせない怒涛の戦闘。包囲された学院を襲う凶刃。積み重なる犠牲。立ち込める絶望。大義名分すら遠ざかる混沌の中、立ち止まることは許されず──少年少女は走り続ける。
血濡れた激闘の、その果てに。
ほのぼのとした日常と、強烈なコントラストを成す狂気は、まさに圧巻。
この作品に出会わなければ、私の『小説家になろう』歴は始まらなかった。『ルーフェイア・シリーズ』こそが、私にウェブ小説の可能性を伝え、このサイトに導いた直接的な要因に他ならない。
かれこれ五年以上応援してます。『家路 ルーフェイア・シリーズ16』の最終更新から一年半が経ちますが、何年でも更新待ってますよ。
──と、まあ固い話はここまでにしましょう。私もあなたも疲れるでしょう? そんなの誰も得しないじゃあないですか。
誰も得しない。誰も救われない。誰が悪いわけでもなくて、誰が正しいわけでもなくて。陰鬱としているわけではないけれど、しんみり染み入るような、そういう悲壮感がですね、たまらず私は好きでして。
嗚呼、すみません。これはレビューであってレビューでない、私の独白ですから、好き放題に語らせていただきますよ。あしからず。
ご都合主義を嫌うわけじゃない。そういう作品も山と読んできたし、王道とはすなわち寵児だ。万人受けの結晶だ。ありふれた題材も使いよう、うまくやれば永く広く愛される『名作』になる。
けれども、ときおり、まさに一期一会というべき頻度で私を襲う、幻想のなかで強烈に現実を突きつけてくるような……ああいった体験は、なかなかできない。
夢のなかで死ぬような心地。
目覚めるのではなく、意識は深く沈んだまま、えも言われぬ衝撃に貫かれ打ち震える。
──読書体験の真髄というものは、そういう一瞬にあると私は信じている。
優しく暖かな、都合の良い事実ばかりで織り上げられた、耳触りの良い寝物語ではなく、一撃でガツンと沈められて、そのまま再起不能に陥るほどの衝撃を、現実に還った後も、暫し呆然と固まり立ち尽くすほどの強烈な情動体験を、いつでも渇望している。
そして、それを与えてくれる作品をこそ、私は『傑作』と評したい。理屈ではなく心で。
すべてを攫われるような衝撃は、誰もが共通に体験できるものではないのだろうが。
話長ぇしよくわからないって? まあまあ、ようするに、リアルよりもリアルな痛みを生じさせる作品ってヤベェよ、って話ですよ。
私にとって『ルーフェイア・シリーズ』は、その一つであり、まず出版された書籍にはありえないウェブ小説独特の『エゲツなさ』には中毒的な魅力があるってこと。
ただ無闇に残酷なのではなく、抗えぬ摂理に基づいた無情さ、容赦のなさが、グッサリと突き刺さってくるのです。ええ、私は無常スキーです。無常観漂う切なさ大好物です。
なろうの主流とは背反してますが、私にとってたまらないツボはこっちなんです。反王道こそ我が王道です。チートでも最強でも人は全能じゃない。英雄一人がすべてを守りきれるほど甘くない。正義と悪に二分できるほど単純じゃない。もがき苦しみ、のたうち回りながら選択を重ねて、各々が未来を形作っていく。そういう世界にこそ、惹かれてやまない。
スッキリ爽快・単純明快なテンプレに食痛起こした方は、ぜひぜひ、こっちの脇道へ足を踏み入れてくださいな。あまりの底の深さに、きっと足を取られて抜け出せなくなることでしょう。
──深層に沈むも、表層を漂うも、あなた次第です。
じつは私、この企画に寄稿するにあたって、五作フルに紹介するつもりだったんです。許される限りの枠で、許される限りの愛を叫ぼうと思っていた。そのつもりで作品も選定したし、内容も考えていた。
けれど、この告白書き上げたら、もうこれ以上なにを語ればいいのか分からなくなってしまいました。
それは、私にとって『ルーフェイア・シリーズ』が特別すぎたからではなくて、私にとって『ルーフェイア・シリーズ』から受けた衝撃が、あまりにも鮮烈すぎたからです。五年経っても色褪せず残っているほどに。
ですから、この文は、『ルーフェイア・シリーズ』に宛てたレビューであって、そうでない、ただの告白です。私の体験記。私とおなじ体験を、衝撃を、きっとあなたは味わえない。その代わり、いつか私の知らない体験を、衝撃を、別のどこかで味わうことでしょう。
あなたにとっての『ルーフェイア・シリーズ』に出会える日が訪れますように。
──そのとき初めて、あなたは言葉が宿す力の真価を思い知るだろう。あるいは既に出会ったことのある方ならば、いまさら語るまでもなく、私の心は届いているはずだ。
『ルーフェイア・シリーズ』
作者:こっこ
URL:http://ncode.syosetu.com/s0520a/
紹介者補足:冒頭のあらすじは、第一作「戦いの果てに ルーフェイア・シリーズ」に寄せたものです。初めに書き上げられた作品ですが、実際にはシリーズの十八番目くらいに入るそうです。




