観月/モロクっち『毎日がメリー・バッド・エンド』
「おまえをしあわせにはしてやれないが、
おまえのてきはみなごろし。」
人は、生まれ落ちた瞬間から壊れていくものだと思う。癒せる傷もあるかもしれない。でも、癒すことのできない傷を抱えながら、人は死ぬその時まで体も心も少しずつ少しずつ、傷つき壊れながら、この世界を生きていく。
青山灯子。
生まれながらに左の目の周りに醜い青い痣がある。
一七年間両親に虐待されてきた彼女の体は、殴られ、蹴られ、腕には根性焼の跡。ついには、父親がこしらえた借金のかたに、ヤクザに差し出される。
市松祠門。門倉興業第四支部支部長代理であり、関東門倉会舎弟頭補佐であり、月島組若頭。今どき珍しくなった、武闘派のヤクザ。
彼自身も、三味線奏者である父親の虐待から逃れ、ヤクザに身を落としていた。そぎ落とされた乳首、切り刻まれた刺青。右目はつぶれ、顔の右半分は焼かれたように溶けただれた男。
女子高生とはいえ、ガリガリで、傷だらけの灯子では、八百万もの借金の穴埋めにはならない。
「お前の父親は近いうちいなくなる。金なんかねエだろ。親戚とかアテがあんならいいけどよ、勉強続けてエならここに来い。俺の相手をするなら、面倒見てやる」
そう言いながら灯子に渡した代紋入の名刺。
帰らない父親。
底を突く生活費。
ついに灯子は、男のもとを訪ねる。
そうして始まる、奇妙な共同生活。
殺伐としたこの物語に安らぎを添えるのは、いつの間にか芽生える絆のようなもの。祠門の不器用な優しさと、灯子の彼に対する絶対的な信頼。
そして、夢を共有するという、ほのかなファンタジーの香り。
灯子のみる夢の中で、祠門は、隻眼のドーベルマンとしてその姿を現す。
「死んじゃえ……」
「殺して」
灯子が乞えば、祠門は躊躇なく殺す。
「間違えるな、俺は道具だ。殺したのはお前自身だ」
癒えない傷をなめ合いながら……。
つぶされた眼は二度と開くことはない。
切り落とされ、転がった四肢は、二度と動くことはない。
それでも、生きていく。
死ぬその時まで。
いつか誰かに殺されて、自分のそばからいなくなってしまうなら……一緒に死のう。
おまえ、俺を殺すなよ。
そんな夢も見るけれど……。
註:R18作品です。
『毎日がメリー・バッド・エンド』
作者:モロクっち
編集者註:気になった方はムーンライトノベルの方で検索してみてください。




