綾埼空/きゃのんたむ『ラグナ録。』
副題:『これは、私達が遠い日に忘れてしまった純粋な物語。』
この物語の作者──きゃのんたむさんは、迫る大火を予期させる静けさから爆発的に伸び上がる最高の伏線回収を得意とされている方だ。その技量は、小説家になろうというサイト内で頭一つ抜けている。
一片の無駄なく約二十二万字でまとめ上げられた広大なお話である『ラグナ録。』もその系譜を受け継いだ、きゃのんたむという才能が一つの終わりとして書き上げたファンタジー小説である。
タイトルにある『ラグナロク』。北欧神話における最終戦争。全ての謎が、その言葉に集約される。
──神々の戦い。しかしこの物語においてそれは、神すら恐れさせる生きた人間の意地がぶつかり、作用し合って各々の結末へ向かっていく最期の戦いである。
だがこの物語の主役である伽藍洞と呼ばれる男と、ヨルムンガンドと呼ばれる女にとっては、もっと単純な理由の戦いでしかない。
「こいつは結局、不器用な男と女の、切ない恋の物語ってことさ」。道化師と呼ばれる男の台詞を引用した簡素なあらすじが、全てを表している。
男が女の傍にいるには、彼女の立つ頂まで上り詰めなければならない。しかし、守るためには奈落の底まで落ちるしかない。男はそれを何度も繰り返す。愚直だから、愛する女のため、傷つくことを厭わず。
女は、呪いの如く絡みつく運命と復讐、そして償いのために孤高の頂に立つ。罪過に汚れたその身にて、愚かで、どこまでも真っ直ぐな男の思い答えるわけにはいかないと。だから女は、愛する男の思いに気付かぬふりをし、傷つき続け、そして…………
これは、神を殺すための物語でもなければ、世界を救うための物語でもない。
臆病な二人にとっては、汚れ、傷つきながら、本当の意味で出逢うためのものでしかなく。
どこまでも純粋な、不器用な男と女の、切ない恋の物語。
だからこそ、最後は底抜けの──、
『ラグナ録。』
作者:きゃのんたむ
URL:
【オリジナル版】http://ncode.syosetu.com/n8564be
【改稿版】http://ncode.syosetu.com/n4828cj/




