074 恵皇の大儀
最重要儀式『恵皇の大儀 』は二部構成の式事となっている。
以前までは単純に強い魔獣を贄とし、ここまで複雑なことはなかったのだ。
しかし八年前、深刻な魔獣不足時に、人間を贄としたことがきっかけで大きく変容した。
前半は従来と同様『狂奔の贄』S級以上の魔物を生贄としてステータスアップを図る。
後半、『理知の贄 』として、人間、魔族、言葉を解し知性ある生命を生贄とする。
八年前、最初の人間の生贄はあるA級冒険者であった。
彼は勇者パーティと冒険者との合同対魔獣ミッションの際、最前線で果敢に戦った。
そして事件が起こった。
魔獣に剣戟を加える彼を、魔獣ごと勇者の光剣が切り裂いたのだ。
彼のスキルが気に入らなかったと勇者イヤミキザは言った。
拿捕したかった魔獣は死に、ミキザに切り裂かれた瀕死の冒険者が残った。
「ちょうどいいじゃねえか。じじい。生贄はこいつで」
ミッションに参加した外部の冒険者はギルドマスターとその者だけであったので隠蔽は容易だった。
家族にも多額の見舞金を渡し、大きな問題にはならなかった。
教皇は、「かまわぬ。むしろ人間を殺したほうが度胸がつくので良いではないか」と半ば無関心に許可した。
どちらにしろ主に地下闘技場で大人数に頻繁に行う『恵みの儀』と違い、『恵皇の大儀 』はS級以上の魔獣を扱うことと、王族と大臣直系の子供たち5名とその近親者つまり教皇、妃、大臣のみ参加のため、絶対秘密に安全にシェルター内で行ってきたのだ。
殺人が起きようと情報が外に出ることはない。
さらに、人間を生贄としたことで新たな発見があった。
1つは、上昇率である。
A級の実力のある人間を殺したときのほうが、S級の魔獣を殺すよりもステータス値の上昇が明らかに高かったのだ。
そして2つめ、これはおそらく5%程度の低い確率のようではあるが、生贄のスキルが殺した者に移る現象が確認された。
「次からもっと人間をふやすのだ」
教皇は指示してきた。
第一王子のステータスにスキルが追加されたのがよほど嬉しかったのであろう。
よかろう、喜ぶがよい。そして儀式に依存するのだ。
そうすれば、この国は私なしでは立ち行かなくなる。




