029 ふじみ人間ギャーシヌス
激戦のあと、オツヤの腹の傷は、なんと跡も残さずに消えていた。
ハイドラ毒の後遺症もない様子で、いつもの元気だけど元気に見えない陰気青年オツヤであった。
首をかしげる元裏ギルドの毒係は、キュウビの遺体の懐からハイドラ毒の解毒剤を探し出して、ボブに飲ませたあと、念のためにとオツヤにも飲ませた。
ボブは傷こそ残っているが、筋肉が阻み深い傷ではなく、負傷後即解毒剤を飲んだのと熊獣人持ち前の体力で、すぐに動けるようになった。
「ボブ 19歳 熊獣人 職業 無職
LEVEL:27 HP:235 MP:8 STR:607
愛称 ボブたん
二つ名 暗黒神の守護者 所有スキル 怪力 投擲 」
「アニキみて! レベルめっちゃ上がってる!
あ、でも無職って? ギルド登録消されたんべか。
あああ、二つ名ついてる! かっこいいな。わーい」
どうやら圧倒的レベル差のキュウビを一度倒したことで、かなりの経験値を得たらしい。
「アニキはどうなっただ??」(無邪気の暴力)
「聞かないで!」
「オツヤ様、この度の戦いお疲れさまでした。
敵をだますには味方からといいますが、わたくしもオツヤ様の名演技には完全にはまってしまいましたわ。
流石のオツヤ様の深謀遠慮。
でも巫女とはいえ、女の涙は高くつきますわよ」
(えーーーーカタリアさんいつも泣いてるじゃないか。僕も泣いてるけど)
「あああ、あれは演技じゃないんです。死んでましたよ。お腹にグサッと」
その後、コミュ障の男と暴走狂信巫女はすれ違いながらも、現象について情報を共有整理して分析をすすめた。
その結果。
「不死身なの?」
「おそらくは」
「オツヤ様、検証してみましょう!」
「はい。嫌です」(キッパリ!)
「オツヤ様ったら、大丈夫ですよ。痛くしませんから」(ニコリ)
「それ嘘つくときの顔じゃないですか? カタリアさん」
「ソンナーコトハアリマセンワ」と目線をそらして言う。
「僕は帰ります」
(どこにも帰れないのにいきおいで言ってるだけ)
「分かりました。オツヤ様、大丈夫です。
まずはただ、一瞬だけ救世の暗黒神様ご降臨をお願いします。
これは痛くないですよね。その時のHPを確認してください」
(巫女の慈愛の表情発動?)
「カーちゃん。にっこりしてるけど目が笑ってないべ」
「ちょっとだけ開くぐらいなら、やりますよ。
ステータスオープン」
それはステータスパネルと呼ぶにはあまりにも禍――。
「ステータスクローズ」
一瞬だけ世界が暗黒に変容したが、すぐに元に戻った。
周りの信者たちがぎょっとしてキョロキョロしている。
「読めましたね HP5/5」
「はい」
「では、ボブ。オツヤ様が肩が凝ってらっしゃいますよ」
「え、僕なで肩だけどそんなに凝らないみたい」
「アニキ! ここか! こんなかんじか!」
――ビキボギギギギギギブチバチ。
「ぎゃー! やめてー」
「いたいいたいいたい」「ここ? このへん?」
「ギャーーーーシヌーーッスーー」
「はいボブ、ストップ。ではオツヤ様15分ほど休憩です」
(15分経過)
オツヤは肩だけでなく顔も手も足も、見える肌すべてが尋常でなく暗褐色に染まっていた。
「では先ほどのように、ちょっとだけ救世の暗黒神様ご降臨をお願いします。そしてHPの確認を」
「ぐへーー……ステータスオープン。
ステータスクローズ」
ちょっとだけの瞬間、世界が変容した。
信者たちはビクンとはねた。
「HPは、1/5でしたね」
「は、はい。死ぬかと思った。ボブさんケガ人なのにすごい力」
「オツヤ様、お肩の具合はいかがですか?」
「あ、さっきは死ぬほど痛かったのに、すごいすっかり快調。ボブさん実はプロマッサージ?」
「では再度、ちょっとだけ救世の暗黒神様にご降臨いただきHPの確認をお願いします」
「あ、はい。ステータスオープン。
ステータスクローズ」
世界の変容に信者たち、ぎょっとするが一瞬で戻る。
「お分かりになりまして?」
「 HP5/5 全快してる! 何かの魔術? カタリアさんヒールした?」
「今のボブの筋力は607。A級魔獣タイラントゴリラ並み、さらにレベルアップ直後でコントロールができていません。
ですので最初の肩もみで、オツヤ様の鎖骨、肩甲骨は完全に粉砕され、鎖骨下動脈もブチブチと引きちぎれました。
これはすなわち致命傷です。
外傷がなくても、内部の動脈が破裂した状態で15分たつと普通は死にます」
「は?」
「つまりは、通常時、オツヤ様はダメージは受けますが、HPが1の状態から0になることはなく、死なない。
通常は不死身。不死身ですがダメージは受ける身体であると推測できます。
そして、救世の暗黒神様ご本尊が現出いたしますと、それまでのダメージはすべて消失します」
いつの間にか周囲を囲んで聴き入っていた信者(約200人)たちに、ドッとどよめきが走る。
「「「「「「おお、不死身のオツヤ様! 救世の暗黒神様の依り代!
救世の暗黒神様万歳! 不死身のオツヤ様万歳!」」」」」」」




