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111 エピローグ 



 かつてスラムと呼ばれていた場所は、今は整備され、『コンポー谷』と呼ばれるようになり地図にもその名で記されている。


 頻繁に起こっていた崖崩れはなくなり、建造物は補強された。

山間の急斜面にそってレンガ造り、ログハウス、石造りの建物がならぶ独特の風景が保たれながらの改修である。

 

 今では観光地として、川沿いの町や首都からの訪問者が増えている。

娯楽としてあやとりと唄を組み合わせた出し物が好評である。


 収入は児童施設に使われている。

近隣の身寄りのない子供たちを保護する事業を、長ペトロンは積極的にすすめている。



 今日は、ユナイテッドステータス教国を襲った異世界人虐殺事件の悲劇から一年。

午前には、首都で大規模な慰霊祭が執り行われた。


 国民の支持により、暫定政権だった王妃は正式に女王に就任した。

ステータス制度は現存するが、ステータスカーストという言葉は死語になりつつある。


 ゆるやかに皆が努力した結果としてのステータスは尊重する。

他者との比較ではないという運用方針で新政権はステータス制度を残した。



 今、『コンポー谷』の高台に多くの人が集まり、手を合わせている。


 里の呼称は変わっても、この高台を共同墓地とする慣わしは変わらない。

墓石代わりの大きな岩もそのままである。


 今日は緩やかな風が吹いている。

夕暮れ前の空が清んだ色で高台を照らす。


 どの神にも祈らず、ただ死者の静かな眠りを一心に願う。



 長のペトロン、養子ケンボー、里の民。

オツヤ、カタリア、ボブ、ネグセ、13使徒。


 女王、カイン第一王子、近衛隊長、ガリクソン。

川沿い町長、スマイルフルの二人と親御様。


 リリスヴィーナ、イフリー、エバンゼス、ベルゼブ、ロメーロ、フロストフ、アンドレザ。




 誰も名乗ることもなく祈る。

ここにいる者は身分もステータスも種族も関係なかった。



 一年前の事件では、里の半数以上が犠牲となった。


 プラウダと、プラウディオもここに埋葬されている。


 プラウディオは枢機卿としてではなく、里で保護されていた一人の身元不明の老人として扱われた。


 国家犯罪者としての枢機卿は、公式にはいまだ行方不明のままとなっている。


 女王が、プラウディオとプラウダとメロディアを一緒に眠らせてやりたいと判断したのだ。







 帰りの道すがら、ボブとカタリアとオツヤの三人になった。


 カタリアは言った。


「私は今でも枢機卿を許すことができないの・・・。


 でも、なんでこんなに・・・悲しいんだろう。


 ほんのちょっと何かが違ってたら・・・。きっと、彼とも・・わらいあえたかもって」


「僕もそう思う」

「うん!」




「おーーーい!オツヤン!ボブリン!アーちゃん!」


 リズが上空から声をかけてきた。



 三人で夕焼け空におもいっきり手を振った。









 木材置き場御殿。



「オツヤさん!なんかいい感じ」


「そ、そう?」



 カイン王子とオツヤはここのところ、一緒に剣の練習をしてる。

本人の希望で、こちらに通っているのだ。


 木材置き場御殿は、「安国心御殿」とよばれ、イベント会場、結婚式、町内会集会、夜市屋台などとして活用されている。

スマイルフルの定期公演が一番の目玉だ。


「暗黒神」と呼ぶものはごく身内だけになった。

宗教としては失敗といえる。


 しかし、「はじまりの1」の考え方は、もはや全土であたりまえのものになった。



 剣の指導をしているのは使徒ワンチャンである。


 ボブとカタリアはドーナツを食べながら、座って見守っている。

ボブの肩からフライヤも見守っている。



「オツヤ様、たしかにちょっと体幹ができてきたような。いいかんじですわ」


「ほ、ほんとう?」



「ちょろっとステータス見てみたらどうです?」


「えと、じゃあちょっとだけ。1年ぶり。ス、ステータスオープン!」



 空が不吉な黒に覆われ、宙に巨大な板が浮かんだ。

重厚感のある金属質の板からドス黒い気が放たれる。


 漆黒面に爪で何度も引掻き切刻んだような怨念を思わす、深紅の血文字で、



「オツヤ 人族 29歳 LEVEL2 HP 7/7 MP 1 STR2


特記: 【世界最強のステータスパネル保持】 」



「ステータスクローズ」



 みながぎょっとしたが、1秒で消えたため、パニックにはならなかった。



「アニキ!やったね」「レベルアップです!」「ピ!」



 カタリアとボブがオツヤに抱き着いた!

頭にフライヤ!



「ありがとう!」



 オツヤはボブのハグでHPを1に削られながらも、心から笑った。







 神様は僕に何をやらせたかったんだろう。


 それはいまだに分からない。



 分からないけど、今を一生懸命、みんなといきていこう。





完

 



これで完結です。ご完読ありがとうございました。思いつきの出オチ系アイディアでしたが、このような作品になりました。初執筆で至らないところも多いと思いますが自分では満足しています。楽しんでいただければ幸いです。


オツヤのステータスパネルの「漆黒面に爪で何度も引掻き切刻んだような怨念を思わす、深紅の血文字」は「怨霊フォント」です。この小説と怨霊フォントは同じ作者です。


                       2026.8 暗黒工房 darcraft

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