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橙の帷と消えた国  作者: T.M
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第2章 アルヴァ塔 終

アルヴァ 18


出塔日の朝、いつもと変わらなかった。

点呼

掃除

朝食

談話室にはいつもの声が響いてる。

でも、ユラの足元にだけ小さな鞄があった。

入塔時に預けた荷物。

そして塔で働いて貯めた僅かなお金。


ノアが眠そうに

「もう行く?」

「…うん」

それで終わりだった。

アルヴァらしい別れ方だった。


教官室でレイスと最後の書類を確認していた。

「後見先への移送書類。生活保護申請。出塔後規約」

ユラは気が重くなる。

レイスは淡々と説明を続けた。

「禁止区域への接近は禁止、地下街関係者との接触も原則禁止です。」

返事をしなかった。

レイスも答えを求めてない。

ただ静かに書類を揃える。

「…全部うまくやろうとしなくていい」

珍しく真っ直ぐユラを見た。

「困ったら連絡しなさい」

静かな声だった。 

「アルヴァは出たら終わりではありません」

ユラは胸の奥が少しだけ苦しくなる。

レイスは何時もの顔に戻ると書類を閉じた。

「行きましょう」


アルヴァの門は相変わらず、灰色だった。

門の向こうには、後見人の夫婦の馬車が停まっている。

ユラは小さく息を吐いた。

その時門に寄りかかる人影が見えた。

ログだった。

煙草をくわえたままこちらを見ている。

「…主任」

「おー」

声が掠れていた。

レイスが露骨に嫌な顔をする。

「主任、何してるんですか」

「見りゃわかるだろ」

ログは指で煙草を揺らす。

「サボり」

「最低ですね」

「知ってる」

ユラは笑った。

ログは壁から離れてユラを見た。

「まあ、無理そうなら逃げろ」

「……塔の教官が言う?」

「死ぬよりまし」

ログは手をヒラヒラさせた。

「ほら行け」


何故かログから目が離せなかった。


門の外には知らない世界が待っていた。不安だった。


でも、もう戻れない。

ユラは足を止め振り返った。


灰色の塔


談話室


薄暗い廊下


煙草の臭い


全部確かにここにあった。


そしてユラは門の外に歩きだした。

ユラを書いてると、THE ALFEEの『ラジカル・ティーンエイジャー』が頭に浮かんできました。

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