6/10
爪に
わすれている
たましいのありかを
よどんだ空気の
雪解けみたく在る街で
清くなってしまった
冷たい皮膚の
不透明さについて
わすれている
わすれていると思い
思い出そうとして
アスファルトを踏む
菜種梅雨の温度に
わたしは揺り動かされようとして
たましいを宿すなら
爪がよいと思う
すこし伸びたら
ぱちん
と落とし
そこにわたしの残りがあれば
ふっとわらえそうで
えぐいぬめりの
生活の擬音として
雨に濡れた
爪に
倦怠は渦を巻いて
かつての季節をもうわすれようとしている?
わたしは春を知っているが
この温度をわすれている