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82話:砕いてしまえ!

お待たせしました!!!!

魔石屋二巻発売に伴い、連載を少しだけ再開いたします!

*何度かアナウンスしていますが、マテリアという名称は書籍版に準拠し、魔石という名称に変更しております

マテリアという名称=魔石となっております!


~もう前回の話忘れたよって人の為のプチあらすじ~


バガンティ商会から、氷点下で保存しないとすぐに腐ってしまう氷精ワインの保存及び輸送の問題を、魔石で解決できないかと依頼されたアレク。しかしそれは魔石を以てしても解決できないほどの難題だった!

悩むアレクだったが、夕食用に岩塩を砕き始めたベルを見て、ある閃きを得る。

それは――


「ああ……僕は常識に囚われすぎていた! そうか、砕けばいいんだ! あとは容器と保存場所、それに冷気魔術があれば……いける!」


 アレクは立ち上がると、早速とばかりに箱の蓋についていた【低温】の魔石を取り外し、カウンターの裏にある作業台の上へと載せた。


「僕は、魔石の形に囚われすぎていたんだ――よっと!」


 アレクが工具の一つであるハンマーを手に取ると――魔石へと振り下ろした。


「ああ!」


 サンドラが思わず声を上げてしまう。それと同時に、魔石はあっけなく砕けてしまう。


「どうしたのアレク⁉ なんか変なもの食べた⁉」

「あはは、僕は正気だよ。ふむ……やはりか」


 アレクが粉々に砕けた魔石の欠片を拾って、検分していく。当然だが、砕けた時点でその魔石は既にただの石になっていた。


「魔石は砕けば――効果がなくなる」

「当たり前じゃない! だから散々メンテナンスしろって言ってるんでしょ⁉」


 サンドラが責めるように言葉を発するが、アレクは全く聞いていない。彼は次に、魔石の材料となるミスリルの小さな欠片を取り出すと、再びハンマーを振り上げた。澄んだ音と共に、ミスリルの欠片が粉々に砕ける。


「何をやってるの……アレク」

「まあ、見ててよ。もし僕の思い通りなら……」


 アレクが確信めいた何かを感じながら、粉々に砕けミスリル砂とでも呼ぶべきものになったそれを手に持つと、それに丁寧に魔力を込めていった。すると、無色透明だったミスリル砂が徐々に黄色に染まっていく。


「嘘……それってまさか」

「やっぱりだ。魔石を砕くと効果はなくなるが、先に砕いて魔石にしてしまえば、砂状の魔石が造れる!」

 

 アレクが声を弾ませた。今造ったのは【低温】の効果を持つ魔石であり、砂状になったそれを今度は先ほどの箱の中へとまぶしていく。そして再び魔力を込め、魔石を嵌め込むのと同じ要領で砂状のそれを箱の中へと浸透させていく。それは嵌め込まれたというより、コーティングされたと呼ぶに相応しい見た目になった。

 

 薄らと内部が黄色にコーティングされた箱を持ち、アレクが魔力を込めた。すると、一気に箱の中が冷えていく。


「なるほど……砂状の魔石ならば、容器の形状に合わせてコーティングできると。更に全体にまんべんなく効果が届くので、原料の大きさが一緒でも、ただの魔石よりも効果的になります。これならば、魔石の量も最低限で済みますね」

 

 ベルが感心したように説明していく。


「その通り。そしてこれならば、これまで魔石にするのにも小さすぎて使えなかったミスリルの欠片も使える。僕はずっと、魔石はあの形じゃないと駄目だと思っていたんだ。だけどそうじゃない。魔石にする前はどんな形状でも良かったんだ」

「凄いよアレク! これなら、色々他にも応用できそうだよ!」

「うん。でも欠点がある。それぞれの形状が小さい分、使える効果が限られてくるってとこかな。おそらくスキル付与系の魔石でやっても、意味はないだろうね。ステータスアップ系も同様だろうさ。でも、【低温】とかこういう周囲の環境に効果が及ぶタイプの魔石は問題ない。むしろ広範囲に効果が広がってより有効だ」

「お見事ですマスター。ですが、まだ肝心なことが解決できていません。そもそも【低温】の魔石をいくら使ったところで、氷点下を維持するのは不可能です。更に、砂状になった魔石――魔石砂とでも呼びましょうか、それの耐久性も気になります、メンテナンスがかなりの頻度で必要そうに感じられますが」

 

 ベルの指摘はアレクも想定内だ。


「そうだね。だから、【低温】のを造ったのはあくまで実験だよ。さっきベルが言ったことがヒントになったんだ。氷点下にするのではなく――維持する為に魔石を使う。あとは密閉した保存容器させ造ることができれば……魔術を一回掛けるだけで済むようになる。メンテナンスについても、考えがあるんだ。エルフの里から帰ってきてから、ずっと考えていた」


 その言葉に、サンドラが首を傾げた。だが、ベルだけは納得とばかりに頷く。


「なるほど……霊樹のシステムを応用するのですね」

「その通り! 流石ベルだね。よし、ちょっとルベウスさんのところに行ってくる! あとは容器の問題だけだ!」


 アレクがそう言って、店舗を飛び出した。


「……あんなアレクを見たの、初めてかも。よっぽど嬉しかったのかな」

「でしょうね。多分、遅くまで帰ってこないでしょうし、先に食事を済ませておきましょうか」


 そのベルの言葉通り――アレクは深夜になるまで帰ってこなかったのだった。


魔石の新たな活用法を生みだしたアレク、ついに難題を解決?

次話は来週月曜日(4/4)に更新予定となっております!


*作者からのお知らせ*

魔石屋第二巻、4/15(金)に発売します!

WEB版の一部エピソードを収録しつつ、なんと9万字以上の書き下ろしとなっております!

新たなヒロイン、新たな謎、謎の魔石など、WEB版とは全く違う展開になっておりますので、是非とも予約・お買い求めいただければと思います!


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新作! 隠居したい元Sランク冒険者のおっさんとドラゴン娘が繰り広げる規格外なスローライフ!

「先日救っていただいたドラゴンです」と押しかけ女房してきた美少女と、それに困っている、隠居した元Sランクオッサン冒険者による辺境スローライフ



興味ある方は是非読んでみてください!
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